友霊白書
迷熊違出射
武道の神様
第1話 勤行
高士は眠そうな足取りで窓に向かってお経を読み出した。
まだ外は暗い。
朝と夕方に勤行をするのが習慣なのだが供養もしていた。
亡くなった芸能人や武道家、映画監督、歴史上の人物など自分が心から気の毒だと思える人とある下心によって供養をすることもあった。
居合を9年、合気道を13年やりキックボクシングは4年続けている。
これらの武道と格闘技をひとつにするべく護身術のインストラクターの資格を取った。
護身術と言っても傷つけずに最終的に必要なら抑えるというもので、それも法規を重視し過剰防衛を防ぐためだ。
故に打撃は懐刀として練習し、それ以上に崩し技が重要になってくる。
高士が護身術の東京本部で神奈川のインストラクターから聞いた話があった。
極正空手四段、養心会合気道三段という猛者でその猛者が「養心会って聞いたことはあったけどどんなもんかと思ってて、初めて竹中先生に会ったとき手をパンと叩かれて腰から砕けたんですよ」といっていた。
「これだけですよ」
と、己の手を軽く叩いておよそ不可能としか思えないその技の凄さを形容した。
高士は本部で護身術のグラップリングなど経験してよりシンプルな崩し技が必要だと考えていた。
合気道や柔術も見落としてるような技とは言えないほどのカジュアルな崩し技。
竹中先生は高士の地元で合気道を長年教えていた。
モールで一度見かけたことがあったがそれきりだ。
そして一昨年お亡くなりになった。
その軽く叩いて崩す合気技を知りたい…そんな下心から勤行で供養することにしてみた。
しかしそうなると竹中先生だけでなくその師匠である塩辺剛山先生も供養しないと失礼ではないかと思った。
朝の勤行で名前を上げるとうっすらとお二人の顔が浮かんでくるイメージがきた。
こっちを睨んでいる。
案の定だと思った。
同じ合気道でも流派も違えば見知らぬ他人である。
睨まれるのは当然だろう。
高士は勤行のたびに遠慮気味に恐る恐る名前を上げた。
すると三日ほど経ったある日変化が見られるようになった。
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