ネゴシエ〜タ〜のくるみちゃん ―VS占い少女・呪いのわら人形編―
@pusuga
第1話 帰国直後でコックリさん?
「帰ったよ春男」
「おかえりくるみ。久しぶりだな」
「とりあえずウナギ」
「あ、ああ……わかった」
新東京国際空港。
いわゆる成田空港。
ちなみに東京国際空港ではない。そちらはまさしく正真正銘、東京都に存在する羽田空港だ。
『新』が付き、『東京』を冠しているが東京ではない。東京ディズニーランドが千葉にあるのと同等と思って差し支えない。
信じられないかも知れないが、青森くるみは中学生だが正式にはFBI所属、現在は本庁捜査一課特別補佐である。天才的な頭脳を持ち、社会心理学に精通し、様々な事件を口先……いや、その交渉術で解決に導いた優秀なネゴシエーターだ。
以前の銀行立て篭もり事件・信用金庫デマパニック事件でも同様の活躍を見せた。
無論、その存在は国家の最重要機密に値する。
そのくるみが、アメリカから帰国すると言う事で成田空港に迎えに行き、無事にロビーで会えたと言うのが、今の状況だ。
そのまま京成線に乗り、途中駅『市川真間』で下車。『真間』は『まま』と読む。『ぱぱ』ではない。くだらない事を語り済まない。とにかく俺達はくるみがウナギを強く所望した為、空港から直行し、この駅付近で有名なウナギ料理店に入店した。
「3ヶ月ぶりだな、くるみ」
「そだね。春男、少し痩せた? あ、46歳の誕生日おめでとう」
「……お前、良く俺の誕生日覚えてたな」
「うん。一応本庁の人間のパーソナルデータは頭に入ってるよ」
「な、なるほど……相変わらず凄いなくるみは……」
「当たり前だよ。交渉術は相手の情報を把握する事から始めなきゃいけないから」
「…………」
本庁の人間は犯人じゃないぞ?
「おまたせしました。特上うな重です」
この店のうな重は、梅2500円・竹3500円・松5000円の更に上位に特上時価が存在する。そして、迷うことなく俺は特上を注文した。
当たり前だ。本庁では笑う子も泣き、泣く子も黙る鬼警視として、時にはコンプライアンス違反抵触ぎりぎりラインで部下の指導を行っている身だ。たまの休日くらいは贅沢させてくれ。更に独身の俺は、店員のお姉さんに満面の笑みで愛想を振りまくも、心ない笑顔で返されたのだから。
とりあえず、自己紹介的な物はこんな所でいいだろ。
「ところでくるみ」
「なあに春男?」
くるみは相変わらず、不味そうにモソモソとうな重を食べ、一口毎にコーラを飲んでいる。
この食べ方は相変わらずだ。
「こないだ不可解な事件があってな」
「不可解?」
「ああ。こっくりさんをしている最中に半狂乱になり、暴れていると通報があり、連行したんだ」
「あ〜知ってるよ。正しくは狐狗狸さんね。どうなったの?」
「一応、事件性はなかったから、家族に連絡し引き取ってもらった。あれって霊的な何かがあるのか?」
「霊的な何か? 春男……あるわけないじゃんか」
「だ、だよな?」
「でも、類似する事件は日本でも実際に何件か起こってるよ」
「え? そうなのか?」
こっくりさん――
正式名称は漢字で狐狗狸さん。
そのルーツは19世紀に欧米で流行したテーブルターニングと言う占い。こっくりさんと同じく、複数の人間がテーブルに手を置くと霊的な物が乗り移り質問に答えてくれると言う物。
日本では色々な説があるが、明治17年頃に難破した外国帆船の乗組員によって伝えられ、それが日本独自の決め事などを追加され、現代に伝えられたと言う。
狐狗狸さんと言う言葉は――
きつね→狐
いぬ→狗
たぬき→狸
と言う様に、動物霊であるとされている。
1989年、福岡で授業中に狐狗狸さんをしていた中学生三人が集団で放心状態になり、病院に搬送され授業が中止になった。
1985年、静岡では一人で狐狗狸さんをしていた主婦が錯乱状態になり、大暴れをした事件も発生した。
そして、1980年頃に全国の小中学校で大流行し、地域により若干の違いがあるが、最も基本的なやり方は以下の通り。
①ひらがな50音、0〜9までの数字、男、女、はい、いいえ、そして真ん中に鳥居(⛩)を書いた紙を用意する。
②鳥居の上に10円玉を置き、その上に2、3人で人差し指を軽く乗せる。
③そして「こっくりさん、こっくりさん、どうかおいでください」と呼び出す呪文を唱える。
④そして、質問をすると10円玉が勝手に答えの文字に動き出し答えてくれる。
⑤終わった後は、使用した紙を破って埋める、10円玉は24時間以内に使用しないと呪われる――などの約束事がある。
この狐狗狸さんに関して、不思議とされている点は2点。
①勝手に10円玉が動き出す。
②質問に正確に答える。
皆様も好きな人を教えて? などの恋愛占い的な遊びとして、狐狗狸さんに聞いた事がある人がいるのではないでしょうか?
「春男。結論から言うと、狐狗狸さんは霊的な物じゃないよ。てか、帰国してすぐ狐狗狸さんの話題なんて、ご都合主義にも程がない?」
「…………」
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