自信と自分

小狸

短編

 とても卑屈で自傷的な自分がいる。


 その自分は、私の体調の良い時でも悪い時でも、私のメンタルが良い時でも悪い時でも、不意にひょっこりと顔を出し、いつも皮肉に嗤っている。


 そして、嘲笑うかのように、こう言うのだ。


 ――お前の小説なんて。


 ――誰が読むものか。


 それはかつて、中学時代のクラスメイトから言われた台詞であった。


 それはきっと多分彼にとっては、とても他愛のない、何でもない、今になったら忘れてしまうような、些細で端的な言葉なのだろう。


 当時の私は、いじめというほどではないけれど、省かれていた。


 学級という囲いの中にグループがあり、序列がある。その中に入ることすらできていない、不思議な立ち位置の人間だった。自分もそれを自覚していたし、皆もそれを分かっていた。


 担任の先生も多分、私の扱いに苦労しただろうと思おう。


 そんな中で私は、小説を書いていた。


 書き始めた契機きっかけだとか、そういう物語っぽいものはない。


 ただ、クラスで省かれていて、お勉強も運動も大して出来ない、字も上手くない、器量も良くない、そんな私にできることが、続けられることが、小説を書くことだったというだけの話だ。


 そしてここまで続いた。


 もうすぐ200作を迎えることになるけれど、未だ私の奥底の私が、時折顔を覗かせて来る。


 そして私を傷付け去っていく。


 私には、小説を書く才能はないと思う。


 そして、私がたとえ明日死に、小説を発表することができなくなったとしても、さして困る人はいないだろうと思う。


 いや、勿論仕事は別でしている。小説とは全く関係のない、事務系の仕事である。


 それを度外視した上での話である。


 私に、理由なんてない。


 私に、意味なんてない。


 私に、価値なんてない。


 創作の上での私は、いなくなっても、世は何も変わらない。


 そう思ってさえいれば。


 もうどんな言葉にも、傷付かずに済むから。




(「自信と自分」――了)

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自信と自分 小狸 @segen_gen

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