第9話

時は、4月23日の午前11時頃であった。


ところ変わって、今治市中寺しないなかでらの国道196号線バイパス沿いにあるさいさいきて屋(産直市場)にて…


あらたは、身元引受人のご夫婦の紹介でここに再就職した。


あらたは、ここで働いているパート従業員さんが運転する車に乗って通勤することになった。


佐永さえ浩暉こうき浩介こうすけも同じ方向へ行くので乗せてもらうことになった。


さいさいきて屋で働き始めたあらたは、空いている陳列棚に青果食品を並べる作業をしていた。


佐永さえもマックスバリュでがんばって働いている…


浩暉こうきは、もう一度2年生に戻ってがんばっている…


だからがんばって行くしかない…


…とあらたは思った。


時は、夕方6時頃であった。


智大ともひろの実家の前に黒のトヨタラウムが到着した。


家の前に紗希子さきこが待っていた。


あらた佐永さえ浩暉こうきは、車から降りたあと家の中に入った。


紗希子さきこは、穏やかな表情で送り迎えをしてくださったパートさんにお礼を言うた。


「きょうはありがとうございました…また明日もよろしくお願いします〜」


パートさんは『それではまた明日…』と言うたあと帰宅した。


ところ変わって、家の大広間にて…


テーブルの上には、汐夏しおかが作った晩ごはんが並んでいた。


テーブルには、紗希子さきこ浩介こうすけあらた佐永さえ浩暉こうきがいた。


汐夏しおかは、夕食の準備をしていた。


智大ともひろは、食卓にいなかった。


紗希子さきこは、やさしい声であらたに言うた。


あらた、ちゃんとお仕事できたの?」

「ああ。」

「どんなお仕事をしたの?」

「陳列棚に商品を並べる仕事…」

「お弁当は残さずに食べれたの?」

「なんだよ〜」

「おかあさんは、心配だから聞いてるのよ…あらたが気持ちよく働けているかどうか…」

「聞かなくても分かるよ〜」

「さいさいきて屋のみなさまはみんなやさしい人たちが多いからやって行けるよね…」

「分かってるよ~」


このあと、みんなは『いただきます〜』と言うて晩ごはんを食べようとした。


(ジリリリリリリン…)


この時、うぐいす色のプッシュホンのベルがけたたましく鳴っていた。


浩暉こうきは、いらついた声で言うた。


「なんだよ!!また電話かよ!!」


汐夏しおかは、やさしい声で言うた。


「すぐ終わるから待ってね。」


浩暉こうきは、いらついた声で『出るなよ!!』と言うた。


汐夏しおかは、やんわり声で言うた。


「電話をかけた人が早く出てと言うてるのよ…すぐ終わるから待ってね…」


汐夏しおかは、受話器をあげたあと話をした。


「もしもし尾儀原おぎわらでございます…どちら様でしょうか?」


受話器のスピーカーから不気味な声で『オレだ!!』と聞こえた。


声のぬしは竹宮たけみやだ…


汐夏しおかはやんわりとした声で言うた。


「あの…どちらへお電話なされていますか?」


受話器のスピーカーから竹宮たけみやの怒った声が響いた。


「大西町宮脇の尾儀原おぎわらの家へ電話かけとんや!!」


汐夏しおかは、やんわり声で言うた。


尾儀原おぎわらは、うちでございますが…どちら様でしょうか?」


またところ変わって、大西町山之内の広域農道のうどうの付近にある公民館の前にある電話ボックスにて…


この時間、公民館の近辺に人はいなかった。


また、この付近の農道を走っている車は1台も通っていなかった。


電話ボックスにいる竹宮たけみやは、ちびたえんぴつでメモ書きをしながら受話器ごしにいる汐夏しおかをイカクした。


「おいコラ!!尾儀原新クソガキを出せ!!尾儀原新クソガキを出せと言うてるのが聞こえんのか!?…おいコラ!!出すのか出さんのかどっちだ!?…おいコラ待て!!…電話切ったらオドレはコーカイするぞ!!…それでもいいのか!?…あのクソガキは…さいさいきて屋に再就職したねぇ…おちいまの幹部はなに考えているのだ…貸金業マチキンやへ転職したクズをおちいまへフクショクさせた幹部はどこのどこまでクソアホンダラや…それを容認した上(愛媛県信連)の幹部もアホンダラや…組織がアホンダラなら政治家もアホンダラ…くびにしなきゃいかんクズをくびにせえへん人事はなおアホンダラだ!!…やかましい!!アホンダラをアホンダラと言うたらいかんのか!?」


(チャリンチャリンチャリンチャリン…)


竹宮たけみやは、みどりのカード式電話機の上に積まれている10円玉を1枚ずつ投入口に入れながら受話器ごしにいる汐夏しおかをイカクした。


「おいコラ!!つべこべ言わずにクソガキを出せ!!出せと言うたら出せ!!…まてコラ!!…電話切ったらどないなるんか分かっとんか!?…尾儀原新あのクソガキは、4月12日の夜にオレをナイフでりつけた…その後、オレが出入りしている事務所くみ組長おやぶんとかわいいシャテイたちを殺した!!…その後、上納金くみのカネを盗んで逃げた!!…それから何日か後に警察署サツへ逃げ込んだ…ほんで…警官サツのれんちゅうにセートーボーエーを主張した…そして、ヌケヌケと釈放でた…だからこらえへん!!…おいコラ!!出すのか出さんのかはっきりしろ!!…なにィ…出さんだと…そうか…オドレふざけるな!!…尾儀原オドレらふきそまをかくまうのであればこっちにも考えがあるぞ!!」


(チャリンチャリンチャリンチャリン…)


竹宮たけみやは、10円玉10枚を投入口に入れながら汐夏しおかをイカクした。


「あんた、岡山理大りだいに通っていたみたいだな…その時、宮下町で暮らしている河中かわなか叔父クソジジイのところで暮らしていたよね…あんたその時、叔父クソジジイ息子セガレとカンケー持っていたみたいだな…あんたが岡山理大りだいに入学してから2日目だった…その時…叔父クソジジイどもは急用で出かけた…その時…あんたは息子セガレを誘惑した…あんたが息子セガレとはだかになってあられもないことをしていたところを写した写真がこっちにあるんだぞ!!」


受話器のスピーカーから汐夏しおかの叫び声が響いた。


「やめてください!!」


竹宮たけみやは、不気味な声で言うた。


「なにがやめてくださいだ…あんたは他にもあられもないことをしていたのだぞ!!…あんたがマッチングアプリを使って男をあさりまくっていたのを知ってるのだぞ!!」

「やめて!!」


竹宮たけみやは、不気味な声で汐夏しおかをイカクした。


「まあええわ…きょうはこのくらいにしとくわ…けど、オレはクソガキがコーストを全部払うまではなんべんでも電話をかけるからな…覚悟しとけよ!!」


(ガチャーン!!ジャラジャラジャラジャラ…)


竹宮たけみやが受話器を置いた時、返却口に10円玉が大量に出た。


竹宮たけみやは、ちびたえんぴつでメモがきをしながら『ヒヒヒヒヒ…』とわらった。

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