第2話

(ウーッ…)


時は、正午過ぎであった。


またところ変わって、今治市東鳥生町しないひがしとりうまちにある日本食研ショッケンの製造工場にて…


工場構内こうないに昼休みを知らせるサイレンが鳴り響いた。


工場の休憩室にて…


休憩室に従業員さんたちが入ったあと青いキャリーに入っているお弁当箱を取っていた。


工場で働いている尾儀原智大おぎわらともひろ(23歳)が休憩室に入った。


智大ともひろは、青いキャリーの中からお弁当箱を取ったあと空いている席に座った。


イスに座った智大ともひろは、ふたをあけてお弁当を食べようとした。


しかし、智大ともひろはお弁当を食べるのをやめた。


思い切りブチ切れた智大ともひろは、お弁当の中身をゴミ箱にすてたあと休憩室から飛び出た。


ところ変わって、工場内にある自販機コーナーにて…


ベンチに座っている智大ともひろは、作業着のポケットに入っていたメビウス(たばこ)と電子ライターを取り出した。


(バチッ…)


その後、口にくわえているたばこに火をつけた。


智大ともひろは、たばこをいっぷくくゆらせたあとぼんやりとした表情で青空そらを見つめながらつぶやいた。


なんで弁当を食べろと言うのだ…


ひやめし同然でもごちそうと思えだと…


ふざけるな!!


汐夏ヨソモンのせいだ…


汐夏ヨソモンが家に来たせいで…


オレの人生がズタズタに壊れた!!


智大ともひろは、全身をぶるぶると震わせながら怒り狂った。


智大ともひろは、この最近イライラするようになった…


同時に、給与引きで注文したお弁当を残すようになった…


原因は、ふたつあった。


ひとつは、工場セーゾーの従業員さんたちは社内恋愛を推進していない…による待遇面が激悪であること…


そしてもうひとつは、家族たちがもめ事を抱えていた…


…であった。


家族たちが抱えているもめ事…とくに男のきょうだいたちが抱えているもめ事がより深刻であった。


もめ事を抱えている家族たちは、他にもいた。


それが原因で、智大ともひろの性格がより攻撃的になった。


一体、何が原因なのだ…


智大ともひろが言うた汐夏よそものとは、だれなんだ?


智大ともひろは、大西町宮脇にある大型和風建築の家で親きょうだいたちと暮らしていた。


家族は…


母・沙希子さきこ


長兄・浩介(46歳・宅間の漬け物製造工場勤務)…


次兄・あらた(36歳)


次嫂あによめ佐永さえ(48歳・パート)


佐永さえの連れ子・浩暉こうき(17歳・高校休学中)


…ともう一人、大井野汐夏おおいのしおか(24歳)と合わせて7人が暮らしていた。


智大ともひろの父親は、3年前に発生した通り魔事件で不審者の男にナイフで刺されて殺されたので、この家にはいなかった。


浩介こうすけは、佐永さえと結婚生活を送っていたが、佐永さえに対して暴力をふるったことが原因で別居した。


裁判所から佐永さえに接近禁止命令をくだされたのに、命令を破って佐永さえに会いに行った…


その末に、佐永さえに大ケガを負わせた容疑でケーサツに逮捕〜起訴を経て懲役20年の判決を受けた。


その後、佐永さえは新しい夫との間にできた浩暉こうきを出産した。


しかし、その2日後に2番目の夫が知人の男にナイフでられて亡くなった。


それから何年か後に佐永さえは、あらたとサイコンした。


浩介こうすけは、5年前に広島刑務所から仮出所したあと実家に帰宅した。


仮出所後は、宅間にある漬け物製造工場に再就職した。


浩介こうすけは本出所することを目標に更生の日々を過ごしているが、うまくいかないので苦しんでいた。


あらたは、(JA)おちいまの本所に勤務していたが6ヶ月前に新しいことにチャレンジしたいことを理由に休職していた。


あらたがどんなことにチャレンジしたいと言うたのかは知らないが、職場の待遇面により強い不満を抱いていたと思う。


佐永さえの連れ子・浩暉こうきは、高2に進級したがノイローゼを理由に休学した。


推薦入試ひとのコネ私立高校メートクに入学した…


それがイヤだから、浩暉こうきは休学した…


この4月からフクガクすることが決まっていたが、浩暉こうきの気持ちがコーコーに向いていないのでなお苦しんでいた。


そしてもうひとり、汐夏しおかについては大問題を抱えていた。


汐夏しおかは、智大ともひろのイトコで亡父ちちカタの親類の子・久枝温大ひさえだはるとの交際相手であった。


汐夏しおか温大はるとは、マッチングアプリで知り合ったふたりである。


汐夏しおかは、高校を卒業したあと獣医さんになるために岡山理大の獣医学部に進学した。


しかし、入学してからものの数日で行くのをやめた。


この時、汐夏しおかは友人の勧めでマッチングアプリを始めた。


この時に出会った彼が温大はるとであった。


温大はるとが市役所勤務で安定した収入があることを聞いた汐夏しおかは『専業主婦で床の間に飾ってもらえる…』と感じた。


…ので、勝手に大学を休学した。


その後、尾儀原家おぎわらけへ来た。


温大はるとが暮らしているアパートが近いと言うことがあったと思う…


勝手に大学を休学した汐夏しおかは、温大はるとと結婚することしか頭にない…


花嫁修行と言うメイモクで尾儀原家で暮らしているが、家族たち…温大はると伯母おばたち6人は汐夏しおかのことをこころよく思っていなかった。


よろこんでいたのは、温大はると亡伯父おじはだけだった。


亡伯父おじが亡くなったあと、伯母おば沙希子さきこたち6人はしばらくの間ガマンしていた。


だが、そろそろなんらかのけじめをつけなければならない…


汐夏しおかに対してけじめをつけなさい…と切り出したいが切り出すことができない…


それが原因で、家族たちのいらだちが日増しに高まった。


汐夏しおかさん…


気持ちはうれしいけれど…


そろそろ大学へ戻った方がいいわよ…


獣医さんになりたいと言うのであれば…


フクガクしてよ…

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