第11話 移動
「おい! すぐに出る支度をするぞ」
「え?」
急に雄二にそう言われた。
「どういうことです……」
言い終わる前にガムテープで口を縛られ、スーツケーズの中に入れられた。念のためかは分からないけど、足枷に加え、足の膝あたりも縄で縛られて。
でも、私にはわかっている。あの作戦が上手くいったのだと。
そしてお姉ちゃんも無抵抗で縛られていく。
そこから先はもうわからないままだ。ただ一つだけわかるのは車が走っているということだ。これからわかるのは、誰かかあのソーセージで不信感を持った人が警察に通報したという事。
これで助かる可能性が軍ぐんっと上がる。
これでお姉ちゃんも救われるよね?
あれからもう何十分経ったのかな。体感ではもう六時間くらいたっている。雄二の車の運転が荒く、そのたびに私が入ったトランクがガンガンと位置を変える。そのたびに体が安定せずしんどい。
「もkcj」
やはり声を出そうにも口が動かない。もうだいぶ精神に来てしまっている。しんどい。光が見たい、落ち着いた場所にいたい。自由になりたい。
(はあ)
しんどい。あとどれくらいこれが続くんだろうか。
と思った瞬間に、車が止まった。そしてトランクが運ばれて行く。
そしてそのまま止まった。何が起きているのかわからない。そしてそのまま動きが起きない。とりあえずこの狭く、何もできないようなところで眠るしかないようだ。
八時間前。
雄二は外を眺めていた。二人を置いたまま。今の生活には満足している。女の子を拘束したまま放置することは彼の性癖でもあったのだ。もちろん警察に見つかったら逮捕される。だが、彼にとってはそのリスクを冒してまでの価値があった。
だが、異変に気付いた。サイレン音は聞こえない。ただ、窓からパトカーが見えた。あれが自分を追うパトカーかどうかは知らない。ただ、逃げるに越したことはない。彼はすぐさま二人をトランクに詰め、そのまま車を発進させた。運のいいことに燃料はマックスだ。これなら長時間車を走らせられる。
案の定、家の中に残しておいたカメラによると、案の定警察が入ってきたようだ。こうなってはもう逃げ切れる可能性はゼロだ。だが、まだ捕まりたくはない。
車を百二十キロで飛ばす。法定速度はオーバーしているが、まあいいだろう。
そこでホテルに泊まることにした。高級じゃないホテル。所謂ラブホテルだ。高級なホテルだと、当然トランクを触られる。そうなってはおしまいだ。
そして一晩を過ごした。
また車が動いてどれくらいの時間がたったんだろう。やはり、不自由は困る。と言うかそろそろお腹が減ってきた。というか、空腹がひどい。
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