第10話 希望

 お姉ちゃんはあれからずっと変だ。

 私が話しかけても何も返事しないし、雄二に殴られても無反応。ご飯も無言で食べさせてもらっている。


 もしかしたら心が壊れてしまったのかもしれない。



 そんなお姉ちゃんを見てると私も辛くなってしまう。

 思えば私はいつもお姉ちゃんに甘えてしまっていた。

 お姉ちゃんに辛いよなんて何回言ったか分からない。

 もしかしたらこれは私のせいかもしれない、そう考えるとやらせない気持ちを抱いてしまう。


 もう限界だよう。もう、こんなの辛いよ。お姉ちゃんがいなかったら私……私は……。


 

 いや、お姉ちゃんに頼りっぱなしでいたのだから、今こうなっているんだ。私もここから脱出する方法を考えなきゃ!


 そして、私は考えた。


 結果一つのアイデアが浮かび上がった。それは、落とし物をするというものだ。もちろん落とす先は倉庫の外だ。私の目の前にあるこのソーセージ。これを倉庫の窓から投げ捨てる。私みたいな頭がよくない人にはこういう方法しか思いつかない。


 そして作戦決行したいところだが、投げ捨てるにも、私の身長、ちからじゃあ、窓には届かない。お姉ちゃんの力を借りたいところなんだけど、お姉ちゃん自体に精気が戻っていない状況だ。

 どうしよう……。とりあえず。


「お姉ちゃん! お姉ちゃん! 一つ頼みがあるんだけど、良いかな?」

「……」

「お願い、お姉ちゃんにしか無理なことなの!」

「……」

「お願いだって、もし、この計画があの人にばれたら、困るから」

「……何をすればいいの」


 創世記のない声が聞こえる。良かった、ちゃんと意識はあった。


「このソーセージをとにかくたくさん外に投げればいいの。お願い」

「……」

「お願いします」

「……分かった」


 そう言ってお姉ちゃんは不思議そうな顔をしながら、ソーセージをとにかく外に投げまくる。


「これでいいの……?」

「ありがとう」


 これで不審に思った人が通報してくれるかもしれない。その一縷の望みにかけるしかない。

 窓が開いていて、窓まで近づけるような鎖の長さになっていた幸運に感謝するしかない。

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