誘拐監禁された少女達
有原優
第1話 誘拐
目が覚めると手足を縄で縛られた状態で寝かされていた。周りは見えなく、口も猿轡のせいで動かせない。
そんな状況でただ一つだけ分かることは、ここは車内だろうと言うことだけだ。振動を感じるのだ。
車は止まったり進んだりしながら着々と進んでいく。この間に何ができるだろうと思い、せめてもの抵抗をと思い、上に軽く頭をやるが、頭をごつんと打つだけだった。そこから考えられるのは、ここはトランクの中だと言うことだろう。
考えれば自然なことだ。まさか車にただ寝かせられてるとも思わないし。
抵抗したいが手が縛られてるため、トランクを開けることができない。私には何もすることができない。
車のエンジン音が切れ、振動が止まった。
どうやら目的地についたようだ。体が軽く宙に浮く感じがする。どうやらトランクが持ち上げられたようだ。今までに感じたことのない不思議な感覚だ。
そしてそのまま宙に浮かびながら数十秒後再び地面に降ろされた。
「よお!」
トランクが男の手によって開かれた。だが、視界が開けるわけでは無い。まだ視界は黒い布によって妨げられているのだ。
「ああ、目が見えないのか……」
と、目を覆っている目隠しが取られる。
「これでどうだ」
視界が開ける。目の前にいたのは20代と思われる男だった。顔は……どちらかといえば……イケメンだ。
正直意外だった。誘拐なんてするのはおじさんだと思ってたからだ。三〇代後半以降……そのイメージがある。
「思ったよりも落ち着いているようだな」
「……」
落ち着いているわけでは無い。ただ暴れても意味がないというのが分かるからだ。手も縄で後ろ手で縛られているような状態では。
「安心しろ。俺はお前に対してエッチなことはしない。ただの観賞用だ。今はな」
そしてそのままキッチンに向かって行き、料理をし始めたようだ。自分で食べるようなのか、私に食べさせる用なのか。
暇だ。誘拐などされたことがないが、やっぱり暇だ。何もする事がない。というか何もできない。せめて縄を外してくれたらいいのだが。
「出来たぞ」
料理を運んできてくれた。まともな美味しそうな料理だ。少なくとも飯抜きなんてことはされないようだ。
「ああ、口枷があるから食べられないか」
と、私の口にあったガムテープを取り、中からティッシュを取る。
「まああとはだな、お前は手を縛られてるから食べられないだろうから。俺が食べさせてやる」
と、野菜炒めを一口ずつ食べさせられる。美味しい。それは拘束されていても変わらないようだ。
「あの」
「なんだ? お前に発言権を与えたつもりはないが」
「なんで私をさらったんですか?」
「さらう理由か。お前には言わない、言う必要がない」
拒否された。まあ当然か。
「やはり動揺しないか」
「なんで?」
「普通教えてよ! 教えてよ! とか言うものだろ。だが、お前には俺への恨みは感じられない」
「恨みは当然あるわよ。私だって不自由は嫌だもの」
「なら、なぜ落ち着いている。もしかして生きて家に帰れると思っているのか?」
「あら、普通そうでしょ。今の世の中誘拐なんて、バレない方がおかしいもの」
「テレビドラマとかだと大体なかなか見つからないぞ」
「ドラマだからでしょ。ニュースで誘拐されて中々見つかりませんとかいうニュースあんまり見たことないもの。まあ誘拐されたとかいうニュースとかも見たことあんまりないけど。まあ今の時代誘拐が成功するとか考える馬鹿はなかなか居ないからだと思うけど」
監視カメラもあるし、今の時代人目のつかないところもない。警察の捜査力だったらすぐに見つかるだろう。
「俺を怒らせると命の危険があるとか考えたりしないのか?」
「どうして? 私を殺したらただあなたには殺人罪が適用されるだけ、メリットは無いもの」
私を好きにできる権利を自ら捨てる馬鹿なことはしないだろう。
「俺としてはお前の恐怖に歪んだ顔が見たいけれどな」
「あなたの目的少しバラしてない? それって」
「おっと、お前のことが好きとかそう言うわけではないぜ。ただまあお前が女と言う理由はある。それにお前かわいいしな」
「そう」
まあ誘拐理由なんてそんなもんだろう。誘拐金か、好きに女を扱うかの二択くらいしか。
「相変わらず無表情だなあ。まあいいや。俺はあっちに行ってくるから。ゆっくりしていけや」
「ちょっと待ってよ。これ外して?」
「無理だ。我慢しろ」
と言って向こうに行ってしまった。別に拘束されているのが嫌じゃないとか、ドMとかでもないんだけどなあ。
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