第15話 テスト
今日はテストの日だ。正直緊張する。
定期テストで高得点を取ること。これはお母さんに対しての機嫌取りの一環だ。だけど、私にとってもそれ以外の意味も持つようになった。勉強を茂君と一緒にしてきた私にとって、これはその集大成を示すものとなっているのだ。
そのため緊張の他に別の感情も持っている。
楽しみ……という言葉では言い表せないが、まあ、それに似た感覚を持っている。
「そろそろだな」
そんなことを考えながら茂君と歩いていると、そう言われた。茂の顔を見ると真剣な顔だった。茂君も緊張しているんだろう。私だけではなく、茂もテストを受けるのだ。
「うん」
「自信あるか? 愛香」
「前回駄目駄目だったし。どうせ茂は成績いいんでしょ?」
前のテストでも学年でトップレベルの成績だったし。
「まあ、そうだが。まあでも、とりあえず今回の目的は愛香の家での立場を大きくするためだから。俺はあまり関係ないけど」
「自分自身にも興味持ってよ」
せっかく頭いいんだし。
「まあ、とりあえず。頑張ろうな」
「うん!」
そして、私達は席に座る。今日はテストの関係で茂とは離れた席になるのが少し嫌だ。
そして、テストが始まった。あれからも週三は茂と一緒に勉強した。嫌々だったけど。
そして今、結構解けている。前回のテストではボロボロだった数学もかなり解けている。もう九〇点台狙えるレベルだ。そんなことを考えていると本当茂に感謝を伝えたくなってくる。
もちろん今までも感謝はしてきているが、本当こんなに解けるようになっているとは。
世界史、生物、地学などの暗記科目にいたっては本当にもうテスト時間が三十分程度余るような余裕さだ。テストってこんなにしんどくない物なんだな、と今は思う。
そしてテスト最終日のテストが終わった後、
「お疲れ愛香」
「お疲れ茂」
と乾杯した。今私たちがいるところはファミレスだ。茂が勉強お疲れ会を開いてくれたのだ。
「おい、二人の世界に入るなよ」
と、雅人君が言った。それに呼応して「そうよ」と鳩さんも言った。
「ごめん」
と、とりあえず謝っておく。
「本当、二人とも仲いいよな」
「……そうかな」
「無自覚な方がおかしいくらいだろ」
と、雅人君がカフェラテを飲む。
「本当、茂も罪な男よね。こんなかわいい子を彼女にしたんだから」
「おい、鳩」
「いいじゃない。ね! 愛香」
「うん」
そして四人でパスタを食べた。
「おいしいよね」
そのさなか、鳩さんがそう言ってきた。
「うん。こんなの食べたことない。外食自体ほぼ初めてだし」
「あ、そうだったわ。なんかごめん」
「いえ、いいんです。と言うか、気を使わないでください!!」
そんな気を使われるほうが困る。私のせいで楽しくなくなるかもしれない。それが私が一番恐れることだ。元から他人と話すのがたいして上手くない私が、今この空間で一緒にいられる、その空間を私のせいで汚したくない。
「そう、なら気を使わないわ」
良かった。気を使われなさそうだ。
「しかし、前まで三人だったけど、愛香が加わってくれていますぅごく楽しい」
「鳩さんにまでそう言われるとは。嬉しいです」
「もう、ね。私結構愛香のこと好きよ」
そう言った鳩さんは私に抱き着いてきた。
「おい、鳩」
「違うわよ。そう言う趣味はないわ。友達としてよ」
「それは分かってりわ!!」
「だからさ、これからもよろしくね」
「はい!」
茂の家(SIDE茂)
俺は、楽しんだ後、家に帰った。愛香と鳩の楽しそうな様子を見てると、俺まで嬉しくなってしまう。
「ねえ、茂」
家に帰ると、母さんからそう言われた。
「なに? 母さん」
「愛香ちゃん元気?」
「元気だよ。それがどうしたの?」
「良かった」
「……」
「私ね、愛香ちゃんがかわいくなってきちゃって」
「おい、母さん」
俺はそう言ってツッコむ。
「でもね、私、本当はあの子をもらってあげたいと思っているの。それは法律上できないかもしれない。でも、私にできることがあったら」
「ああ、分かっている」
母さんが言うまでもなく、俺もできる手段すべてを用いて助けたいと思っている。でも、俺にそれができるかどうかは別の話だ。どうすれば、あいつを助けられるか。確かにもう愛香は点数を取れている。そう考えたら十分なのかもしれない。だが、俺には……。
「しーげる!!」
そう言って母さんは俺の背後に立ち、抱きしめてきた。
「何をするんだ」
「大丈夫だよ。お母さんは茂の味方だから」
「お、おう」
「あ、それと、愛香の味方でもあるからね。ガンガン言ってきてね」
「おう」
(SIDE愛香)
そして数日後テスト結果が帰ってきた。その点数は数学b七十四、数学Ⅱ 八十四、国語八十六、古文七十九、地学九二、生物九〇、世界史九七、政治経済八九、英語八十六と八十二と八十一点と結構高めだった。
どうやら茂が前に言っていたことだが、私には覚える才能と言うものがあるらしい。本当才能には感謝しないといけないかもしれない。私には何もないと思っていたのに。
そして、その結果をお母さんに伝えたところ。
「流石私の娘だわ」と、珍しく上機嫌となっていた。いつも私に不機嫌を、ストレスを押し付けているのに。
ただ、悪い気はしなかった。私はお父さんはもちろんお母さんも嫌いだったのに。こう考えると私の心なんて単純明快そのものだ。嫌いな人から褒められてうれしいなんて。
だが、勉強の目的の半分程度はお母さんの機嫌を良くしようというものだったからこれでよかったのかもしれない。
そして、お父さんは案の定。「そうか……良かったな」と一言しか言わなかった。
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