05_八方塞がり

 最近の話題と言えば、未来予測。嘘偽りなく、質問に対して返答してくれる。ただ定義の曖昧なものには答えてくれない。例えば「いつ幸せになれるか」など、個人によって定義が曖昧なものへの返答はない。定義がはっきりしており、時期が特定できる質問にのみ彼(彼女かもしれないが)は答えてくれる。

 最初は楽しみだった。占いにちかい。自分の中の魔を打ち払うための魔法。些細な事柄の幸せ、不幸。身構えるだけでもとても安心感をもち1日を過ごせた。が、身構える安心は後々、私、いや私達にとって大きな不幸をまねいた。

 そうなるという絶対性。安心感と共に変わらぬ社会、己。占いに真剣な政治家どもはより一層、彼(彼女)を重宝していた。だからこそ社会問題に発展した。

 未来不足。未来を知ることによる無気力、創造性の欠如。やってみよう?線路の上の電車は線路以外を走れるのかと。否、脱線するだろう。だが脱線しても暴走と共に動力は動く。

 未来年表まで発売され、即完売、重版。もうすでに私達は楽を求め、成長を諦めていた。ただ心臓だけが動き続け線路の上で踊っているのだった。

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る