『明晰夢』プロトコル [2016/11/27]

●コントロールの障害の分類


1. 内的なもの[1]

 1.1. 能力[2]

  1.1.1. 感受能力         直観[3]、感覚・知覚

  1.1.2. 合理的意志決定能力    悟性(知性・思考力)

  1.1.3. 行動遂行能力       実践

  1.1.4. 状況制御能力[4]      神的悟性

  1.1.5. 記憶能力[5]        ---(メタ能力)

 1.2. 運命

  1.2.1. 宿命[6]           

  1.2.2. たんなる幸運と悲運 [7]  


2. 外的なもの(障害)

----------------------【意志の障害として、主観の内にあるもの[8]】

 2.1. 衝動

 2.2. 規制(法・モラル[9])

 2.3. バイアス(目的設定、手段の選択における)

  2.3.1. 正常なもの

  2.3.2. 異常(病的)なもの(夢に現れたる不合理な思い込み)

-------------------------【行動の障害として、主観の外にあるもの】

 2.4. 状況(行動条件[10])

  2.4.1. 拘束されている(移動の制限等を含む)、邪魔をする者がある

  2.4.2. 自分の思うとおりに手足が動かない(不健康)

  2.4.3. 目的に適った状況にいない、手段にアクセスできない

-------------------------------------------【世界の外からの障害[11]】

 2.5. 覚醒(起床)[12]



総注:なお、手段・目的の観点からの分類は、上記と違ったものになる。ただし、目的設定は、ほとんどの場合、手段の側から制限を被るであろう。


―――――――――――――――――

1 まったく障害がない状況で、企図を不成功に終わらせるような要因は、精神にとって内在的な要因である。

2 各々に、通常の能力と、超越的能力が区別される。

3 超越的能力としては、インスピレーション。

4 現在の状況を部分的、または全体的に作り変えることによって、任意の状況を作り出す能力を言う。改変後の状況が、(周囲の者には)最初からそうであったものとみなされる場合には、理想的な世界の布置に接続する能力と言い換えてもよい。また、その場合、改変後の世界をもとの世界と同じ世界とみなすか、まったく別の世界(パラレルワールド)とみなすかは、趣味の問題である。

5 セーブされたデータを読み込む能力であると定義される。行動遂行と状況制御の条件をなす(が、必ずしも不可欠な前提であるというわけではない)。データは、自分を含む人物の特性、また世界の布置である。あらゆる能力の開発は、結局のところ、保存されたデータの改変を意味しているが、この事実に拘泥する意味はほとんどないように思われる。中断された状況から始める能力(リロード)は、状況制御能力に含めてもよい。

[メモ:世界の布置が、記憶能力に依存するという現実ではありえない事態が、重要な鍵となるかもしれない。現段階では、世界の布置は、さまざまに変化するとはいえ、世界を構成する存在論的単位自体は比較的安定した状態にあると考えられている]

6 個別に生起した出来事が、物語の重要なプロットの一部とみなされる場合、その出来事を含む全系列が、必然的な対象、コンステラツィオンである。それは、抗うことのできない力と必然性でもって、行為者の宿命を、したがって物語の進行を規定するように見える。行為者の意志とは無関係にではあるが、しかし行為者の行為を通じて、物語の歴史の進行を目的論的に規定するものが、物語には要請されなければならない。したがって、あらゆる物語のプロットは、本質的にコンステラツィオンであり、それこそが物語の魂であり、核である。

7 それらがたんなる偶然と区別されるのは、あらかじめ夢魔によって生起が予告されるかぎりでのことである。そうした出来事は、確かに行為者の運命の一部ではあるが、物語の進行にとって必然的でないかぎり、宿命とは呼ばれない。どんなに際立った出来事でも、それ単独では、どうでもよい小話にすぎないのである。

8 主観の内における障害は、a. 内なる自然(本能的なもの)、b. 第二の自然(社会的なもの)、c. 人工的なもの(操作)に区分される。どうして法とモラルがここに分類されるのかというと、それらは欲望の障壁として、第一義的には意志の規定に関与するものであり、破ろうと思えば破れるものだからである。また、夢の世界の法律は、現実とは異なる(異常な)ものでありうることも考慮しなければならない。

9 モラルが、法と並んで、外的規制と考えられていることに留意せよ。モラルは本来、内的規制として(道徳の内面化)、行動制御能力に属しているべきである。ここではアメリカナイズされた図式に従っている(第一部ではドイツ的な自由概念にまで進むべきではない)

10 日常的な意味で、「不自由である」、「不自由をする」と言われる状況。ここでは主に身体面・物質面のみを言う。なお、以下のバーリンの分類は、この局面だけを指すものではなく、本稿における「外的なもの」と「内的なもの」に対応する。

・消極的自由(~からの自由):障害、妨害、強制がないこと

・積極的自由(~への自由):権限、権能、資格(能力)があること

11 睡眠中の現実世界での刺激、例えば尿意は、夢の状況や思考に重大な影響を及ぼすが、本稿では、そうした(余計な)ノイズのない、理想的な生理的状況を仮定している。それゆえここでは、不可避の現象としての離脱だけを取り扱う。

12 覚醒に導く特殊要因としては、a. 過度の興奮や不安による心拍数の増加、b. 過度の集中(凝視等)

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