第26話:侯爵?:アラキヤストモ視点

20XX年4月16日:伏見神社ダンジョン98階:荒木保知55歳視点


 俺はアメリカと中国に力を借りて直ぐに梅木篤信を引きずり出すつもりだった。

 俺の目で確認できる場にさえ引きずり出せれば、転移魔術で伏見神社ダンジョンに連行する事ができる。


 ところが、ホワイトナイトの代表に頭を下げて頼まれてしまった。

 アメリカの大統領や中国の党総書記も認めているという。

 大統領と直接話したから、間違いないと思う。


★★★★★★荒木保知とホワイトナイトの特使の会話(伏見神社ダンジョン98階)


「はっきり言うが、基本的に不公平は嫌いだ」


「分かっています、ホワイトナイトとしても苦渋の決断です。

 それにアメリカと中国が認めている以上、拒否するのは得策ではありません」


「軍事力や政治力に屈する気はないぞ」


「分かっています、少なくとも次の入札に悪影響が出ない条件は整えます」


「横入りする連中は、どんな条件で若返りの魔術を受ける気なのだ?」


「現金は1000億円ですが、領地の割譲も条件に入っています」


「領地を割譲なんてされても日本が得するだけで、俺には何の意味もない。

 最初の若返りは1兆2000億円だったのだぞ。

 残りの1兆1000億円で普通に土地を買えばいい。

 そうすれば大嫌いな日本に利益を与える事もない」


「領地を割譲するのは日本人のショウヘイに対してではありません。

 三カ国とも王権がとても強い国です。

 ショウヘイを侯爵にして自治権を与えると言っています」


「バカバカしい、それは俺に家臣に成れと言っているのか?

 家臣に成ってから命令に従わなかったら、不忠罪で罰するのか?

 そんな不利な条件で若返らせる訳がないだろう!

 さっさと断ってくれ、今後二度と三カ国からの依頼は受け付けない」


★★★★★★


 日本、アメリカ、中国と話を付けて若返りを依頼してきたのは、高齢でいつ死んでもおかしくない王様3人だった。


 三カ国とも絶対王政に近い権力を持っているようで、国内の島を割譲して自治権を与えると言ってきたが、誰がそんな不利な条件を受け入れる?


 簡単に土地を割譲できるという事は、その国の中にいる限り、同じ様に簡単に土地を接収できるという事だ。


 R国はシミラン諸島の無人島を割譲して、侯爵位と自治権を与えると言ってきた。

 R国の王家は世界で1番金持ちだそうだが、軍事政権が力を持っている。

 大半の国民に尊崇されているそうだが、本当にやれるかどうか疑わしい。


 S国は紅海の小さな島を割譲して、侯爵位と自治権を与えると言っている。

 R国よりも王権が強く、やろうと思えばやれるだろうが、その後が問題だ。

 直ぐに奪爵併合すると言われては何の意味もない。


 N国もR国とS国に対抗して、ムアラ・ベサール島を割譲して侯爵位と高度な自治権を与えると言っているが、ここも若返らせた後が問題だ。

 俺が入国したとたん、軍を派遣して逮捕幽閉するとしか思えない。


★★★★★★荒木保知とホワイトナイトの特使の会話(伏見神社ダンジョン98階)


「しつこいぞ、もう取りつぐなと言ったはずだぞ!

 これ以上何か言うのなら、ホワイトナイトとの連携を止める!」


「待ってください、ショウヘイが納得する条件を整えました。

 安心して若返らせるだけの条件を整えました。

 王家の家臣にならずにすむ条件にしました。

 だから話を聞いてください、お願いします」


「俺が納得する条件だと、どんな条件を飲ませたんだ?」


「独立を認めるそうです、王家の家臣ではなく、自治権でもなく、完全な独立国として領地を割譲するそうです」


「……それは、俺だけの国という事か?」


「そうです、その気があるのなら、公国を建国して公王に戴冠できます」


「R国は軍部が実権を握っているのだろう、素直に領地の割譲を、いや、分離独立を認めるのか?」


「軍部の連中も死にたくないのですよ。

 ここでショウヘイとのつながりを作っておけば、自分達も若返りの魔術を受けられるかもしれないのです。

 まあ、ショウヘイに頼るだけでなく、自国のダンジョンに大量の将兵を送っていますが、そう簡単に若返りの魔術は会得できないのでしょう?」


「そういう事なら軍部も認めるか?

 そうだな、そう簡単には若返りの魔術は会得できない」


「R国と軍部はいいが、S国とN国は宗教家が認めないだろう?

 俺の乏しい知識が間違っていないなら、両国の国教はグリーンドラゴンの血を飲む事を認めないだろう?」


「ショウヘイ、目の前で永遠に生きられるかもしれない若返りを見せられて、王のような権力を持つ者が、戒律の為に諦めると思いますか?」


「諦められないと思うが、背教徒に指定されたら、退位させられるのではないか?

 N国の宗教家がどれくらいの力を持っているのかは知らないが、S国の宗教指導者は国王に匹敵する力を持っているのではないか?」


「ショウヘイ、それも3人の国王やR国の軍人と同じですよ。

 永遠に生きられる方法が目の前にある権力者が、死の恐怖と権力を失う現実に直面しているのです、その状況で殉教できる人間が何人います?」


「ほとんどいないだろうな、だがそれでも認められないのではないか?

 宗教家の世界でも弱肉強食の権力争いがあるだろう?

 派閥があり、トップの指導者を引きずり降ろそうとしている奴がいるだろう?

 俺を殺そうとしないまでも、無視しないと指導者の座を奪われるだろう?」


「そこはそれでやりようがあるのです。

 宗教指導者と対立している派閥だからといって、寿命通り死にたいと思います?

 ショウヘイと手を結べれば永遠に生きられるかもしれないのですよ!」


「俺が若返りの魔術をある程度の人数にかけると約束すれば、三カ国から領地を割譲され、元首公王になれるのか?!」


「はい、その気になれば、新しい王国を建国し王家を立てらます」


「国連の承認は……若返りの魔術でどうにでもなるのか?」


「はい、100人ほど若返らせてやれば、世界中の国が承認します」


「島をもらっても、嫌になればいつでも放り出せるし、売る事も可能だよな?」


「はい、島が欲しい国はいくらでもあります。

 全財産出してでも王位が欲しいという資産家もいるでしょう。

 嫌気がさしたら売ればいいのです。

 3つ全部売らなくても1つだけ売ってもいいでしょう」


「分かった、3人の王を若返らせよう。

 ただし、若返らせるのは、国連が三カ国の領地割譲と俺の戴冠と建国を認めてからだ、空手形で若返らせる気はない」


「三人ともかなりの歳ですし、アメリカの大統領も中国の四氏族長老も高齢です。

 ショウヘイが思っているよりも早く結果がでるでしょう」


★★★★★★


もしよければフォローや☆☆☆をお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る