第7話:弟子:アラキヤストモ視点
20XX年4月2日:伏見神社ダンジョン99階:荒木保知55歳視点
「ショウヘイおじさん、本当に10年でエクセレントヒールと鑑定魔術が会得できるのですか?」
「できるぞ、俺ができたのだから、深雪もできるだろう」
「私もできますか?」
「佐那もできる、死ぬくらい頑張らなければならないが、できる」
「やるわ、私も、いえ、僕も10年修行して魔術を覚えるわ」
母親想いの良い姉妹だな。
遊びたい年ごろとは言わないが、親の介護をする歳でないだろうに。
金力レベルアップとか権力レベルアップとか言うらしいが、助っ人に死ぬ寸前まで生命力を削ってもらったモンスターを殺して、経験値を稼ぐ手法。
リョウとか言うダンジョン配信アイドルがやっていた方法。
それを深雪と佐那にもやらせよう。
「母親を治すためなら、ズルだと言われても早く魔術を覚えるべきだ。
たくさん増えた登録者が全員いなくなっても良いな?」
「はい、いいです」
「うん、いいよ」
「効率を考えると、自分よりもはるかに強いモンスターを殺すのが良い。
一撃で斃せるギリギリまで生命力は削ってやる。
だが深雪と佐那が放つとどめの一撃は、できるだけ威力が高い方が良い。
深雪はこれを使え」
「これは聖女用の杖ですか?」
「そうだ、99階でドロップしたドラゴンロッドだ」
「ドラゴンロッドですか?!」
「そうだ、ドラゴンを斃すためのロッドだ、邪悪を払う魔術は使えるよな?」
「破邪の魔術ですか、弱いモンスターにしか効果ありませんが、使えます」
「ドラゴンロッドはドラゴンに対する攻撃力を増加させてくれる」
「どれくらい増加させてくれるのですか?」
「100倍だ」
「100倍ですか?!」
「ああ、その代わり他のモンスターには全く補正がない、ドラゴン特化だ」
「私の攻撃力が弱くても、それなりの生命力を削れるのですね!」
「ああ、削れる、しかも聖女が得意なドラゴン種を限定で狩る」
「ドラゴン相手に、聖女が得意になるような種がいるのですか?」
「いるぞ、アンデットドラゴンとデビルドラゴンだ。
この2種が相手だと、聖女の魔術は5倍の補正が入る
つまり通常よりも500倍の効果があると言う事だ」
「そんな話初めて聞きました、鑑定で調べられるのですか?」
「ああ、ただ鑑定もレベルによって調べられる事と調べられない事がある。
鑑定魔術を会得して直ぐに何もかもできる訳じゃない」
「そうですよね、鑑定スキルにもレベルがありますよね」
「おじさん、僕もレベルを上げて鑑定とエクセレントヒールを覚えたい」
「分かっている、佐那はどんな戦い方をしたいんだ?」
「僕が元気なころは、武闘家のスキルだったんだ。
接近戦でモンスターを殴り倒していたよ。
だから、武器がもらえるなら、メルケンサックか手甲が欲しいな」
「佐那は勘違いしているが、武闘家でも短い武器は使えるぞ」
「えええええ、うそ、知らなかった、誰も教えてくれなかったよ!」
「ダンジョンは物凄く身勝手で、ダンジョン独特のルールがある。
武闘家もダンジョンでは短い武器なら使える事になっている、
短剣、脇差、棒、サイ、トンファー、鎌、鉄甲、ティンベー、スルジン、暗器だ」
「すごい、そんなに武器が使えるんだ!」
「攻撃の武器はできるだけ射程の長い物が良い。
九尺棒を使いこなせるようになれば1番だが、今直ぐは無理だろう?」
「うん、これまで武器を全く使った事がないから無理だと思う。
今聞いた中で使えそうなのは鉄甲、ガントレットだけだと思う」
「だったらこれが良いだろう、ドラゴンガントレットだ」
「さっきも思ったんだけど、もしかしてアイテムボックスを持っているの?」
「ああ、持っているぞ」
「……うわさでしか聞いた事なかったけど、本当にあるんだ」
「噂は知らないが、隠しているだけで、トップレベルのダンジョンアタッカーならほとんど全員が持っているのじゃないか?」
「もしかして、ダンジョンで手に入れたドロップを全部保管しているの?」
「そんな無駄な事はしない。
人間が誰も来た事のない階層に、モンスターは入れない拠点があるんだ、腐らない物は倉庫に置いてある」
「そうなんだ、だったらお姉ちゃんのドラゴンロッドと私のドラゴンガントレットを、アイテムボックスから出したのはなぜなの?」
「ドラゴン属性に特化した武器で、非常時に使うかもしれない優秀な武器だから、いつでも使えるようにアイテムボックスに入れている」
「……もしかして、聖女用の杖や武闘家用のガントレットが使えるの?」
「モンスターによっては、特定の武器を使わないと欲しいドッロップを落とさない事があるから、使えるように頑張っただけだ。
特定のモンスターが、特定の条件でだけ落とす、特定のアイテムしか、ダンジョン病を治せないかもしれないからな」
「そうか、だったら僕もおじさんのように全部覚えるよ!」
「私もショウヘイおじさんのように全部覚えます」
この子たちなら頑張って全部覚えるだろう。
★★★★★★
715:名無しV
金や権力に物を言わしたレベルアップは卑怯だが……
716:名無しP
こういう事情ならしかたがないよな。
717:名無しW
おい、おい、おい、ドラゴンロッドなんて聞いた事がないぞ!
718:名無しX
何も説明していないが、あの防具や服もとんでもない品物じゃないのか?
719:なんちゃって賢者
99階層のドロップなんだから当然だろう
720:名無しD
最古参のあんたらは、あの武器や防具を知っているのか?。
721:シッタカ
ああ、知っているぞ、とんでもない武器だぞ!
722:銀仮面
知ったかぶりは止めておけ、ショウヘイの動きが速すぎて何も観ていないだろう。
723:お天道様
そうだぞ、お天道様が見ているから、嘘をついても損をするだけだぞ。
724:内部告発者A(うら若き乙女)
今と同じで血の噴水を観るだけになるの?
725:シッタカ
少しくらい大げさに言ってもいいじゃないか。
726:なんちゃって賢者
悪い奴じゃないんだ、ちょっと大げさなだけなんだ。
727:内部告発者A(うら若き乙女)
そんな事はいいから、血の噴水ばかり観るのは嫌なの、事前に教えて。
728:なんちゃって賢者
血の噴水になるのかは武器による、ロッドとガントレットならだいじょうぶだ。
729:名無しW
いや、でも、生命力をギリギリまで削るのはショウヘイだよな?
730:なんちゃって賢者
ギリギリ殺さないようにするから、首からの血の噴水はない。
ただ、手足を全部斬り落として無害にしてしまうかもしれない。
731:内部告発者A(うら若き乙女)
観るのやめようかな……
732:ホワイトナイト
If you don't like grotesque content, just watch the children's version we edited.
I contacted the management and formed a partnership where Shohei would receive compensation.
(グロテスクな内容が嫌なら、俺達が編集した子供用を観ればいい。
運営に連絡を取って、ショウヘイに報酬が入るパートナーシップを結んだ)
733:名無しA
それは助かる、俺もあの血の噴水は嫌だったんだ
734:名無しB
俺もグロテスクなのは嫌だったんだ。
735:名無しW
私もよ、子供用の編集版があるならそちらを観たいわ。
ライブでみんなとやり取りできないのは残念だけど……
736:名無しのフランス人D
Que quelqu'un fasse une version doublée en français ou une version sous-titrée en français !
(誰かフランス語の吹替え版かフランス語の字幕版を作ってくれ!)
737:名無しのフランス人A(パリジェンヌ)
Ne vous inquiétez pas, je le ferai pour vous et je postulerai immédiatement auprès de la direction.
(私が作るから安心して、直ぐに運営に申請するわ)
738:名無しのドイツ人A
Ich werde die deutsche Version machen, also keine Sorge.
(ドイツ語版は俺が作るから安心してくれ)
739:名無しの中国人A
我会制作中文版
(中国語版は俺様が造ってやる)
736:名無しX
中国人なら、あれくらいのグロテスクな映像は平気だろう?
737:お天道様
これ、これ、そんな差別発言はいけないぞ。
738:シッタカ
中国人は自分の親以外何でも喰うだよな?
739:なんちゃって賢者
本当にもうやめとけ、アカウントを削除されるぞ。
740:銀仮面
差別する気なんてないが、海賊版が中国国内専門サイトに投稿されているぞ。
741:ザマア好き
復讐よ、みんなで中国のサイトを攻撃するのよ!
★★★★★★
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