第6話:お母さん:チバミユキ視点
20XX年4月1日:伏見神社ダンジョン99階:千葉深雪20歳視点
ダンジョンの外では力が限られてしまいますが、それでも全力をだしました。
お母さんが殺されるかもしれないと言われたら、休んでなどいられません。
殺されなくても、嘘の証言をさせようと人質にされるかもしれません。
「お母さん、助かるから、必ず助かるから、私を信じて」
分かっています、本当は分かっているのです。
リョウ達がお母さんを殺す事も人質にする事もありません。
お母さんは……もう長くない……そんなお母さんを利用したりしない。
私は、ショウヘイおじさんの言う通りにする事で、おじさんが絶対に裏切れないようにしているのです、ずるい方法をとっているのです!
どんな身勝手な方法を使ってでも、お母さんを助けたい!
佐那ちゃんを助けてくれたショウヘイおじさんなら、助けてくれるかもしれない。
ダンジョン病の権威と言われている先生から、もう長くないと言われてしまったお母さんを、助けてくれるかもしれない!
「がんばったな、こんなに早く帰って来るとは思わなかった」
佐那ちゃんの時と同じ場所、病院近くの人目の少ない公園に入ったとたん、目の前の風景がダンジョンに変わりました。
それに気がつく前に、ショウヘイおじさんが声をかけてくれました。
「ここはどこですか?」
「延命用の部屋だ」
「延命用の部屋、あ、佐那ちゃん」
「お姉ちゃん、お帰りなさい」
お帰りなさいって、ここは私達の家じゃないのよ。
「佐那ちゃん、そちらの方は?」
立ち上がって私に声をかけてくれた佐那ちゃんの後ろにはベッドがあり、誰かが寝ているのですが、もしかして……
「ショウヘイおじさんのお母さんだよ」
「申し訳ありません、お母様の病室を使わせてくださって」
「気にするな、寝たきりだから誰が一緒でも分からない。
深雪と佐那がお母さん側にいるだけで、俺の母親に何かあっても分かる。
その分だけ俺が自由に動けるから、臨床実験に使うドロップを集められる」
「お姉ちゃん、ショウヘイおじさんの快復魔術は凄いんだよ!
ショウヘイおじさんのお母さんを25年も延命しているの!
それも、身体が弱らないの、若々しいままなの!」
「それは大げさだ、多少は老化を止めているが、完全に止めている訳じゃない。
深雪、お母さんをそのベッドに寝かせてあげろ。
俺の手造りベッドだから見た目は悪いが、寝心地は良いぞ」
「あ、はい、ありがとうございます、毛布なのですか?」
「ああ、シーツはドロップしないからな」
「ドロップの毛皮を毛布にされたのですか?」
「ああ、キングホワイトウルフの毛皮を手縫いした」
「え、キングホワイトウルフ、ウルフのキングクラスなんて何階に出るのですか?!
世界中のどのダンジョンでもキングクラスなんて出てきていません!
ダンジョンモンスター学会も認定していませんよ?!」
「ダンジョンモンスター学会なんて知らないが、鑑定魔術を使えばわかるだろう?」
「鑑定魔術、そんな魔術、世界中の誰も会得していません!」
「10年ダンジョンで暮らせば、命懸けで挑めば、自然と身に付く」
「ダンジョンが世界に現れて30年、その時から挑み続けている人でも、誰1人会得していません!」
「それは通いでダンジョンに挑んでいるからだ。
全てを賭けてダンジョンで暮らせば、10年で会得できる。
俺が会得できたんだから間違いない」
「それは、ダンジョンで10年暮らしたら、私でも鑑定魔術を会得できるという事ですか?」
「当然だ、鑑定だけでなく、エクセレントヒールも会得できる。
おしゃべりはここまでだ、お母さんに延命魔術をかけるぞ」
「あ、はい、お願いします」
「発病2年までのダンジョン病は、グリーンドラゴンの血とエクセレントヒールだけで治せるが、発病2年以上のダンジョン病だと延命しかできない」
説明しながらショウヘイおじさんがお母さんに血を飲ませてくれます。
外に持ち出したら1億や2億の値段は軽くつきます。
いえ、名声と莫大な富を得たダンジョンアタッカーの多くがダンジョン病です。
彼らなら、グリーンドラゴンの血とエクセレントヒールの治療を組み合わせたら、100億でも200億でも払うでしょう。
「人間での臨床実験は俺の母親だけだが、ダンジョンモンスターを使った臨床実験は5000体以上やっているから間違いない」
お母さんの身体が緑色に光り輝きました!
佐那ちゃんの時には光っていなかったのですが?
え、え、え、いつまで光り続けるのですか?!
「心配しなくていい、ダンジョン病を発症してから長い年月が立った者を延命するには、身体をむしばんだダンジョン病の影響を消さなければならない。
消すまでに時間がかかるのだが、その間光っているんだ」
★★★★★★
646:名無しW
25年のダンジョン病を延命できるなんて、本当だと思うか!
647:名無しX
わからん、分からんが、できれば良いと思っている。
648:なんちゃって賢者
ドローンの配信が義務付けられた20年前から見ているが、ショウヘイが嘘を言った事は1度もないぞ。
649:名無しD
俺もにわかだが、ショウヘイは嘘をつかない気がする。
650:シッタカ
ショウヘイのダンジョンスキルは賢者なんじゃないのか?
651:銀仮面
何度聞いても答えてくれなかったが、そうかもしれないな。
652:お天道様
職業なんて何でもいい、行いが賢者なのだから。
653:内部告発者A(うら若き乙女)
え、あ、うそ、鑑定魔術なんてあるの?!
654:シッタカ
賢者のショウヘイなら持っていて当然だろう?
655:なんちゃって賢者
いや、本当に賢者かどうかは分からないから。
656:内部告発者A(うら若き乙女)
本者の賢者がいたら嫌なの?
657:なんちゃって賢者
……ちょっとだけ嫌だ。
648:名無しW
だったら、なんちゃって賢者も10年間ダンジョンに籠ったら?
659:なんちゃって賢者
初日に死ぬわ!
660:シッタカ
治療費に100億だと、本当にそれだけ払う奴がいるのかよ?
661:名無しA
最初期からダンジョンの潜り続けている最古参なら、簡単に払えるさ。
662:名無しB
そうだな、年間所得が公表される国だと、100億くらいは普通だよな。
663:名無しW
治療がはじまるぞ、集中しろ。
664:名無しX
いや、俺達が集中しても意味ないから。
665:お天道様
……深雪ちゃんのお母さん、緑に光っている。
666:シッタカ
ショウヘイも言っているじゃないか、治療の効果だよ。
667:なんちゃって賢者
いや、治療の効果だろうと、人間は自分で光らないぞ!
668:銀仮面
ダンジョンの中の事を外の常識ではかるのはやめろ、無意味だ。
669:ザマア好き
そんな事より復讐はどうなっているの、みんなで復讐するのよ!
リョウや元事務次官の父親、マスゴミを潰さないと深雪が外に出られないのよ!
670:シッタカ
ダンジョンの中に籠っていた方が幸せな気がしてきたのだが……
671:ホワイトナイト
It's okay, don't worry, not only the Foreign Correspondents' Association of Japan but also the US government has decided to lodge a formal protest with the Japanese government.
(だいじょうぶだ、安心しろ、日本外国特派員協会だけでなく、アメリカ政府も日本政府に正式な抗議をする事になった)
672:名無しのドイツ人A
What's the big deal? Are you going to let Shohei immigrate to America? !
Let Shohei immigrate to Germany!
(何がだいじょうぶだ、ショウヘイをアメリカに移民させる気だろう?!
ショウヘイはドイツに移民させるんだ!)
673:名無しの中国人A
笨蛋,让翔平以中共贵族的身份移民吧。
我不会让你来惹我的!
(愚かな、ショウヘイは中国共産党の貴族として移民してもらう。
お前達には手出しさせない!)
674:名無しのフランス人A(パリジェンヌ)
Non, la France accueillera Shohei !
En tant que successeur légitime de l’Empire romain, la France est le pays parfait pour Shohei !
(いえ、ショウヘイを迎えるのはフランスよ!
ローマ帝国の正統なる後継国、フランスこそショウヘイに相応しい国よ!)
675:なんちゃって賢者
こいつら、どうやってショウヘイをダンジョンから引っ張り出す気だ?
★★★★★★
もしよければフォローと☆☆☆をお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます