皆殺し

@amaiyumedake

第1話

今思えば全ては4月から始まっていたのだと思う。

大学一年生の春、私は医療大学に入学した。高校生の頃摂食障害とうつ病を併発していた私は無理のないよう推薦で入学し、まだそれらが治りきっていないまま彼氏の家に毎日帰っていた。彼氏のことはもう好きではなかったのだが、篭れる場所の確保のためにまだ別れずにいた。3年以上付き合った9歳も年上の彼は私がそんな状況でも支えようとしてくれていて世間からみたら「やばい人」というイメージなのだろうが私からしたら別れた今でもとてもいい人だったと思う。大学に入学し友達が1人できた。とても控えてな可愛らしいいい子で学籍番号が一つ前の子だった。席が近いからなんとなく話すようになっただけの彼女は結局本当の意味では仲良くなれず、心の距離を取られているのを感じていた。そんなある日、通学途中の電車で声をかけられた。

「みくちゃん、、、だよね?」

びっくりして反射的に振り向くと同じ専攻の男の人が立っていた。

「そう、だけど、、」

と答えると、嬉しそうに自己紹介を始め、LINEやインスタを聞かれたので交換することになった。彼氏の束縛が激しかった私はなんとしても彼氏にバレないようにしなければと思い、同時に浮気願望は全くなかったので少し距離を取ろうと決意した。

学校について唯一の友達にそのことを話すと、

「実はみくに彼氏がいるか聞かれているって答えちゃった。勝手にごめんね」と謝られた。どうやら私のことを狙っていたらしい。そんなことだろうとは思っていたが驚いたように反応をした。その後も私はひっそりと、でも確実にモテていた。今数えてみると5人くらいに言い寄られていたと思う。昔からちょうどいい顔と明るい性格を持っていた。完璧主義者でそこそこ運動も勉強もでき、愛嬌が取り柄の人間だった。昔から色々巻き込まれることが多かったせいでうつ病を発症したり、性格や考え方が捻くれたりしてしまったものの、ちょうどいい顔はとてつもない美人よりも相手にされる。だがこの時の私はまだ私は可愛いからモテているのだとしか考えられていなかった。調子に乗った私は言い寄ってきた男たちみんなに思わせぶりな発言をし続けていた。人と関わることで自己肯定感も高くなり、うつ病や摂食障害は人にはわからないほどになっていた。表面上は明るい時の私。でも芯はまだ鬱。そんな生活を送っている最中、私は好きな人ができた。その人は言い寄ってきたわけではなく私の一目惚れだった。かわいらしい男の人で背が小さく優しそうな見た目の少し大人しい人だった。初めて話したのは授業でグループワークの時に同じグループになった時。私は授業の話をするという口実でLINEをたくさん送っていた。彼はもともと返信の早い人ですぐに返ってくるのでたくさん会話できて嬉しかったのを覚えている。この人と付き合いたいと思った私はついに3年以上付き合った彼に別れを告げ、好きな彼に本格的にアプローチを始めた。押して引く作戦によって彼をゲットした私はそこから1年間彼と付き合うことになる。だが、問題はここからだった。私は友達と私と彼の3人で行動することが増え、見かねた専攻の子たち5人組が友達を引き抜いた。私は「あ、ハブられた」と感じる。

私はもともとうるさくて目立つタイプだった上にモテて調子に乗って彼氏もゲットしたちょうどいい顔の女。

とても目障りだっただろう。そこから女の子たちに避けられ、悪口を言われる日々が始まったのだ。大して話したこともない人たちが話したこともない私の悪口を言う日々。彼氏だけが味方をしてくれた。先生にも勇気を出して打ち明けるがなにもしてくれず、私はどんどん自信がなくなり暗くなり、閉鎖的になっていった。人は不思議なことに何もしていないのに悪口を言われると自分が何かしたのではないかと自分に原因を探し始める。私も泣きながら色々と考える日々だった。そして彼以外と一切話すことなく一年が経とうとしていたある日。私の妊娠が発覚した。21週と3日。摂食障害の影響でずっと生理のきていなかった私は妊娠に気づくことができなかった。あともう1週間もせずに堕ろせなくなってしまう。そして、私と彼の意見は見事に割れた。

「人でも産む」という私と

「現実的ではないから堕してほしい」という彼。

下した決断は堕すことだった。号泣しながら入院をし、全身麻酔を毎日して毎日何も食べれずに毎日吐いて5日間ほど入院をし、堕ろした。

その後産後うつの状態になった私を捨てて別れた元彼。

夏休みが終わり学校に行くとそこに私の居場所はなかった。全て1人だ。お昼も学校にいたくなくて近くの公園まで行って食べた。話し合いの時間も1人でぼーっとしてやり過ごした。ペアワークの時もひたすらに下を向いてやり過ごした。話したことないのに。何もしてないのに。存在がむかつくんじゃない?と親に言われた。

納得できなかった。何もしてないのに男には好かれて女には嫌われる。私は昔からその傾向が強かった。何かそういったオカルト的なものを持っているのかもしれない。何はともあれそこから専攻全員による私へのいじめが始まったのだ。

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