第4話 帰路(改稿)

星空を観ているうちに夜に自分が溶け込んでいく感覚に陥った。

秋が近づいている。夜は相当冷えた。

祖母の家はやはり自分という存在をもう一度認識することができた。何者でもない僕という存在を一層色濃く映し出してくれた。

少し寂しい気もするが、仕方がない。

血の繋がりなんて気にしたこともなかったのに、今日で人生が変わってしまった。

足だけは家へと向かう。両親は僕がいないことに気づいて、警察へ連絡しているかもしれない。もしかしたら走り回って僕のことを探しているかもしれない。でも、心配すらされていなかったら…と、頭の中で不安がよぎる。

僕を本当の意味で必要としてくれている人なんているのだろうか。そもそも僕は何者なんだ。

さっきまでの落ち着きがなくなる。鼓動が早くなると同時に歩みも早くなってきた。

家の屋根がもうすぐそこまで近づいているというのに。

また、元来た道に引き返そうになった時、視線を感じた。

視線の先には、父さんがいた。父さんがこちらに向かってくる。何を言うわけもなくただただどすん、どすんと前に向かってくる。  「どこに行ってたんだ。父さんお風呂から上がったらお前がどこにもいないことに気がついて大慌てしたよ」

「ばあちゃんち」

「そうか」

そっと背中に手を当てられた。家に着くまでずっとその手は離れなかった。

怒られると思っていたが、『母さんはまだ気づいていないから早く部屋で休みなさい』だけ言い、僕を部屋まで見送ってくれた。

父さんは優しい。でもその優しさにたまにイライラする。いつも母さんに僕のことを任せきりなところも。僕に興味が無いところも。

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