第27話

 俺達は結びのダンジョンに訪れた。

 不人気ダンジョンである理由が分かった。

 まずダンジョンに続く道が無い。

 そしてダンジョンまでが遠い。

 近くに街や村が無い。

 

 7日間学園に通わず4人だけで野営を続けた。

 何度もエムルを投げ飛ばしたくなったが我慢した。

 こいつに反応してはいけない。


 でも、朝起きるとエムルが俺に抱き着いて寝ている。

 エムルの見た目だけは本当にいい。

 そして柔らかかった。


「やっとたどり着いたか」

「僕は今から水着装備に着替えるんだ」

「そうか」


「押し倒してもいいよ」

「遠慮しておこう」

「はあ、はあ、今、少し迷ったね?」


 イラ!


「早く着替えて来てくれ」


 俺達は水着装備に着替えた。

 このダンジョンは沼と水場が多く蒸し暑い。

 そしてぬるぬるしているモンスターしか出てこない。


「ライ、お待たせ、ヒーティアの水着はどうかな?」


 3人が水着に着替えて出てきた。


 ヒーティアは赤いフリルのついたビキニ。


 エムルは紫色で光の反射によって色が変わるビキニ。


 そしてプリズン先生は黒くてシンプルなビキニだった。


 なんだ?

 ビキニ祭りか。

 プリズン先生に目が奪われるとヒーティアが割り込むように前に出た。


「どうかな?」

「似合っている」

「やっぱり!」


「このダンジョンにはテンタクルスクイード(大きなイカ)、テンタクルオクトパス(大きなタコ)、スライムがいます。粘液を受けたまま放置すると皮膚がひりひりして熱くなってきます。戦闘が終わったらすぐに粘液を落としましょう」


 要するにエロ攻撃をしてくる。

 普通の装備だと粘液が服にしみついて大変な事になる。

 だから俺も海パンのような防具しか付けておらず裸足だ。


「それと地面がぬかるんでいる事が多いので滑らないように足元には気を付けましょう。後は木の実には特殊効果があります。食べ過ぎは禁物です」

「配信を始めるね」


「配信を禁止してはいませんが、支障の出ない範囲でお願いします」

「問題無いよ」


 エムルが収納魔法で球体を取り出した。


「ここにスマホをセットするんだ」


 カシャ!


「これで浮いてついてくるよ」

「ヒーティアをメインに追跡して欲しいな」

「出来るよ、ボール、ヒーティアをメイン撮影」


「配信スタート! みんな! ヒーティアだよ、ひさしぶり♡」


 スマホからコメント音声が流れる。


『水着来たああああああああああああ!』

『美人揃いだな』

『1人だけは気を付けろよ、目が光ってるのは西のエムルだ』


『まじだ! 笑顔で手を振ってやがる』

『性格さえよければ美人なんだけどな、残念だ』

『やっぱヒーティアが一番』


「戦闘用の水着だよ♡」


 ヒーティアがくるりと一回転した。


『いい』

『よき!』

『貴重な映像だ』

『後ろにいる黒い水着の先生、良くね?』


『プリズン先生だな』

『立派なものをお持ちで』

『先生! 付き合ってください!』


「今はヒーティアがメインだよ」


『あんま言うな、ヒーティアが傷つくだろ』

『かまってちゃんなヒーティア可愛い』

『先生! 付き合ってください!』


「冗談はこのくらいにして先に進みましょう」

『先生! 付き合ってください!』

「私は恋をしないと決めていますから、すいません」


『即振られてる』

『秒殺だった』

『俺達は水着を見て満足するしかないんだよ』


『いうて結びのダンジョンに行きたいか?』

『俺戦えないから無理だな』

『戦える兵士にとっても不人気だ。ダンジョンに着くまでウザいゴブリンが出て来て途中からは湿地帯だ、で近くに宿も無い、つまり野営必須だ。途中でモンスターに襲われるかもしれない。泥にまみれる覚悟がないなら行かない方がいい』

『泥は被るものじゃない。美女が被っているのを見るものだ』


「ダンジョンに入ります」


 俺は先に進むプリズン先生の尻を見た。


「ちょっと、先生のお尻を見すぎじゃない?」

「見てたぞ、ヒーティアの尻を見てないんだからいいだろう」

「み、見ないでください」

 

 先生が手で尻を隠した。

 反応が可愛い。


 ヒーティアが俺と先生の間に割り込んで歩く。


「はあ、はあ、アクシデントが起きる予感がするよ。はあ、はあ」


『エムルヤバイな』

『エムルが怖い、あの笑顔が怖いわ』

『見た目だけは好みなんだけどなあ、残念だ』


「嫌な予感がする、エムル、変な事をするなよ!」

「はあ、はあ、ふふふふふふふ」

「人に迷惑をかけるなよ!」

「はあ、はあ、先に進もう」


 何も答えない。


 そして口角を釣り上げるエムル。


 嫌な予感がする。 

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