悪役令嬢は怠けたい~乙女ゲーヒロインに転生しましたが、ライバル令嬢が斜め上過ぎて物語がどっかに行ってます。

風間翔

プロローグ・来たら、出来た。

私がその『記憶』に目覚めたのは正しく物心がつく頃、3~4歳くらいの頃だった。

きっかけはある晴れた日。

洗濯したシーツを干していた母の傍で走り回って遊んでいて、何かの拍子でパタンと転び、そして膝を擦り剥いた時だった。

地べたに座り込む私を、あらあらまあまあ、と母が屈み込んで覗き込む。

膝は怪我をして赤く血が滲んでいた。ズキズキした。

痛くて大声で泣きそうになった時、ふと思い付いた。

『なおせばいいじゃん』と。

『こういうときって、なにかあったよね。えっと……』

思い出し、傷に手を当てる。

触っちゃ駄目、お父さん呼んでくるからね……と止めようとした母が固まった。

ほわっとした白い光と春の陽を当てたみたいな暖かさに傷口が包まれて、そして消えた時。

「……リィナ……貴方」

目を見開いて私をそう呼ぶ、その母の声に思った。


わたし『ここ』のこと、しってるや……と。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る