第18話 色々ありましたが無事?お茶会は終わりました

その後、クザイは真っ青な顔をして家に帰って行った。


「ミシェル、さっきはありがとう。あなたはクザイ様やガブディオン侯爵の悪事を暴くために、あえてあの時私を止めたのね。私、グレイソン様がガブディオン侯爵やその家族から酷い暴力を受けていたことを知っていたの。もちろんお父様やお母様もよ。でも、私たちはその事を公にしようとはしなかった。ある意味私たちも、犯罪に加担したのと一緒よね」


罪を犯した者は、裁きを受けないといけない。私達はガブディオン侯爵やその家族が、グレイソン様に酷い仕打ちをしていたのに、それを告発しようとはしなかった。彼をあの場から救い出したことで、満足していたのかもしれない。


「ルージュもルージュのご両親も悪くはないわ。あなた達は、あの噂を聞いてグレイソン様をあいつらから引き離したのでしょう?それだけで十分よ。そもそも、私達だってグレイソン様がガブディオン侯爵たちから酷い仕打ちを受けているのでは?という噂を聞いていたのに、動かなかったのだから。ただ、今後の調査で、もしかしたらあなたのご両親やルージュにも、話しを聞くかもしれないから、協力してくれるかしら?」


「もちろんよ。ミシェル、どうかよろしくお願いします」


ミシェルに頭を下げた。


「ルージュったら。ただ、本格的に動くのは、私のお父様やお兄様なんだけれどね。私も出来る限り、協力はするつもりよ。だから安心して。さあ、あの男のせいでせっかくのお茶会がしらけてしまったわね。今から目いっぱい楽しみましょう」


「そうね…あれ?グレイソン様がいないわ。もしかしてまた…」


「グレイソン様なら、アルフレッド様とお父様と話をしているわ。どうやら騎士団に興味があるみたいで」


そう教えてくれたのは、マリーヌだ。グレイソン様が騎士団に?グレイソン様、大丈夫かしら?


しばらくすると、3人で戻ってきた。急いでグレイソン様の元へと駆け寄る。


「グレイソン様、大丈夫でしたか?」


「ああ、大丈夫だよ。僕、騎士団に興味があって。それでアルフレッド殿や騎士団長と少し話をしていたのだよ」


「騎士団に?別に無理して騎士団に入らなくても…」


「僕はもっと強くなりたいんだ。それに騎士団に入れば、もっともっと友達も出来るかもしれないし。僕は次期公爵になる人間だからね。人脈をたくさん作っておいた方がいいと思って。アルフレッド殿や騎士団長もとてもいい人だし。まずは義父上に相談しないといけないけれどね」


そう言って笑っているグレイソン様。騎士団の稽古は非常に厳しいと聞く。もしグレイソン様がまた傷ついたら…そう思うと、心配なのだ。


「ルージュ嬢、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。もし無理だと本人が判断すれば、すぐに辞めたらいいし。何でもチャレンジしてみる事は、大切な事だよ。そうだろう?ルージュ嬢」


「確かにそうですが…正直物凄く心配ですが、私がとやかく言う事ではありません。グレイソン様がやりたいとおっしゃるのなら、私は何も言いませんわ」


本人が初めて何かをやりたいと言い出したのだ。私がとやかく言う訳にはいかない。ただ…非常に心配ではあるが…


「もう、ルージュったら。さあ、お茶の続きをしましょう。まだほとんどお菓子もお料理も頂いていないでしょう?ほら、ルージュの好きなケーキよ。アルフレッド様もグレイソン様も一緒に食べましょう」


私を椅子に座らせるのは、マリーヌだ。さらに他の令息たちも私たちの周りにやって来た。


その後は時間が許す限り、皆でお茶を楽しみ、美味しいお菓子とお料理を頂いた。グレイソン様もアルフレッド様はじめ、他の令息と楽しそうに話しをしていた。


グレイソン様があんなに楽しそうに他の令息と話をしているだなんて。色々とあったけれど、やっぱり今日、お茶会に来てよかったわ。


私も親友たちに久しぶりに会えたし。やっぱり彼女たちは最高ね。


変わらず友人たちの姿に、心の中がほっこりした。


楽しい時間はあっという間。そろそろ帰る時間だ。


「それじゃあ皆、今日は本当にありがとう。またお茶をしましょうね」


「もちろんよ。グレイソン様の件、任せておいて」


「またお茶をしましょうね。グレイソン様も一緒に」


「グレイソン殿、君が騎士団に入団するのを楽しみにしているよ」


「ああ、すぐに義父上に話しをして、手続きを進めるよ。アルフレッド殿、色々とありがとう」


それぞれ挨拶をし、馬車に乗り込んだ。


ふとグレイソン様の顔を見ると、行きとは打って変わって、清々しい顔をしていた。


「グレイソン様、今日は楽しかったですか?」


ふと彼にそんな質問を投げかけた。すると


「ああ、とても楽しかったよ。貴族世界には、あんなに素敵な人たちが沢山いたのだね。僕はいかに狭い世界で物事を判断していたのか、思い知ったよ。ルージュ、今日は連れてきてくれたありがとう」


そう言うと嬉しそうに笑ったのだ。


「グレイソン様のその笑顔、私は大好きですわ。これからもっともっとグレイソン様が笑える様に、少しずつ前に進んでいきましょう。まずはあなたの叔父様や従兄弟を法の下、裁かないとですね。とはいえ、ミシェルの家がほとんど行ってくれるみたいですが…」


私はいつも、皆に助けられてばかりね。ガブディオン侯爵やその家族には非常に腹を立てていたが、私もお父様もお母様も、彼らを訴えるだなんて発想は、微塵もなかった。


家に帰ったらその件も両親に話しをしないと。


今日は色々あったけれど、とても楽しかった。またグレイソン様と一緒に、お茶会に参加できたらいいな…



※次回、グレイソン視点です。

よろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る