習作

@Yoyodyne

第1挿

ここは俺の席だぞと続けざまに3度電車内で雄叫びを上げた後、気を失って倒れた。始発から終電まで見慣れた光景であるため他の乗客は気にしない。まぁこの電車には始発も終電もないが。電車は煉獄のゴミ捨て場に等速直線運動でまっしぐらに進んでいる。天国も地獄も満員で来世などないのだから。終わりのない余生をこの8両編成の部屋で過ごさなければならないのだろう。窓の外は暗いが深夜の暗さ(と言っても生まれて死ぬまで住んでいた都市には完全な暗闇はなかったが…)の質感のない暗闇ではなく原形質のような粘度の高い液体が充満し対流しているかのようなカーボンブラック。


行間に閉じ込められたことある。辞書を読んでいる時循環する定義の不文律の間を行き来することしかできなくなった。


目を見開いたまま、カタレプシーにかかったかのように微動だにしない。


自身に都合の悪いことはすぐ忘れてしまうからこそ健全に生きられるのだとその時もそう考えていた。そして、日をまたぐとそのことすらすっかり忘れてしまっていた。


検閲済み


自分の手に入れたものを更に手に入れるには手放さなければならないとようやく理解した。そうやって当たりを引くまでカルマを回し続けるのだと。


離婚手続きは首尾よく事が運んだ。コルトの引き金を引き自身のこめかみに銃口を当てる。ペンを持ち自分の名前を署名するのとなんら変わらない。引き金を引くと弾丸は雷管を叩かれて火を吹いた。神経伝達の約1/2の速さで脳が引き裂かれる。衝撃だけで痛みはない。


強烈な異臭に鼻が鈍る。寄せ付けないための逆行するフェロモンを発して彼は身を守っていた。彼を構成する細胞一つ一つが腐臭を固めたような、匂いとして圧倒的な存在感を持ちながらその物質的存在は不確かだった。蠅すら彼を避け細菌やカビも逃げ出すほど強烈なため彼の身体は干からびるばかりで腐らない。


退屈を紛らわすため気まぐれに人工地震を起こしてると、大地にヒビが入り、それが亀裂となり、地割れになり、メリメリと音を立て地球を一周し、分裂してしまった。2つの分裂が4つになりそれが8つへとまた分かれ、指数関数的に増加し最後には大きな女の顔を形成した。その顔は戦争だった。


そんなことは望んでいないのに、ただストーリーを面白いものにするためだけに特異で不幸な人生を送らなければならなかった。初めから不幸が決定されていた。産まれる前から。


彼が更に抗弁すればするだけ立場が悪化してしまうのだった。人は印象的側面しか見ない、特にそうするのが都合のいい時には。彼は声を張り上げ如何に人の興味が注目された人間を疎外するかを語った。興味は常に危害を加えるものだと彼は語った。岡田有希子の飛び降り、ダイアナ妃の事故写真を━彼はこれをいつも懐に入れ機会があれば見せれるように持ち歩いていた━ワンカップ片手に見せた。


約物乱用

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