第1章

それから一週間後。私と彼は休みが土日祝と同じなのだが、休みの日に彼から話があると言われ、距離を取ってソファーに座った。距離を取ると言っても、二人掛けのソファーなので、あまり意味があることではない。

「左手出して」

私は彼のやろうとしていることが分かったのだったが、私は手を出すことはしなかった。それを見て彼が、私の左手を私に何も言うことなく、自分の手で取ったのだった。

そして彼は私の薬指に、ゆっくりと指輪をはめていく。今日の午前中に、彼だけが指輪を取りに行った。一緒に行かないかと誘われはしたのだが、私はそれを断ったのだった。

彼は満足そうに笑顔を見せていたが、私はそれを無視するかのように、ソファーから立ち上がろうとしていた。

「笑花、俺にもつけてよ」

「…自分でつければいいでしょ」

私はそう言って、ソファーから離れようと歩き始めようとしていた。

「待って、話があるんだ。お願い、もう一回座って」

彼にそう言われたので、私はため息をつき座り直した。

「……笑花、フォトウエディングしよう。笑花にウエディングドレスを着てほしいんだ」

「いいよ、私は興味ないから」

「俺が見たいんだ。両親も、お金を出してくれるって言ってる」

彼がフォトウエディングをしようと提案してきたことに関しては、特に何かを思うこともなかったのだが、その他に一つ疑問な点があった。

彼の両親は、私の両親とは逆に、結婚もすぐに認めてくれた。その上諸々の資金だって貸してくれて、フォトウェディングのお金は、「返さなくていい。その分は出す」と、言ってくれているようだった。

「なんでそこまでしてくれるの?」

「……笑花に、ウエディングドレスを着せてあげたいらしいんだ」

私のためにそう言ってくれているのが本当だとしたら、もし断ってしまった場合、悲しい思いをさせてしまうかもしれない。会った時に心の中では、断られたことへの何かしらの気持ちを抱かれることになるかもしれない。

私がそう考えていると、彼は私の有無を聞かずに勝手に話を進めていた。当日はお互いの家族を呼び、会場のチャペルは彼の姉が働いているところにしようと、一人で決めていたのだった。

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