花は、きっといつか笑う。
上城 莉々羽
第1章
「俺のこと好きじゃなくていいし、俺のこと信じる必要なんてないから、俺達結婚しよう」
高校の卒業式が終わり、私は一人の男子生徒に屋上へと呼び出されていた。そしてしばらく沈黙が続いたのだったが、開口一番で彼は私の目を真っ直ぐ見てそう言ったのだった。
彼のその言葉を聞きながら、風が私の髪を静かになびかせていることに対して、私は鬱陶しさを感じていた。
彼のことは三年間見てきたのだが、彼は俺様タイプの人間というわけでも、チャラい男性というわけでもない。
彼は、私に優しい口調でそう言った。そして、ふざけているわけでもなさそうな目はしているが、内心は分からない。私には、彼がなぜそのようなことを言うのか、全く意味が分からなかった。
しかし、彼が「俺のこと信じる必要なんてないから」と、そう言った理由ははっきりと分かる。
私は人のことを信じることができない人間だ。人を信じることができず、私は生きづらさを昔から感じている。
だからと言って、無愛想に生きているわけでは決してない。愛想笑いは、昔から得意だった。
そして彼の話に戻すと、彼とは高校に入学してからの友達というより、高校に入学してからのクラスメイト、ただそれだけだった。
彼は友達でもなんでもないし、私には本当の友達だっていない。そもそも人を信じられない私に、友達を作る資格なんてないかもしれないのだが。
しかし、学校で一人で過ごしていたというわけでもなかった。一緒に昼食をとったり、移動教室を共にするクラスメイトはいるにはいた。
クラスメイトと過ごすのは、学校で一人にならないための手段であり、クラスメイトの中から行動を共にする人を選ぶ。選び方は人によって違うだろうが、私の場合は出席番号が近い子と自然にそういう関係になっていった。一人になりたくないのは、相手も同じなのだろう。
本来であれば、一緒に過ごすうちに自然と仲良くなり、本当の友達になっていく。しかし、私達は違っていた。
休みの日に学校の外で会うこともなければ、学校が終わった後に、一緒に遊びに出かけたことすらもない。私達は、クラスで一人にならないために一緒にいただけだった。
彼女の本当の友達は、部活動と、中学校の同級生なのだもいうことを私は知っている。話しを聞いたわけではないのだが、彼女の友達といる時の雰囲気や、態度を見て心の中でそう思っていたのだった。
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