人倚鉄道

波多野古風

運転士

 やっと、やっとだ。今日初めて人を轢いた。鉄道運転士となって6年、初めて死を目の前で見たのだ。同僚からは、「災難だったな。」と言われた。ああ、そうか。君達には私の想いなど到底分かり得ないだろう。私のこの感情が、凡人には理解できないという事など分かりきっている。

 ああ、彼女はどのような気持ちで私に飛び込んできてくれたのだろう。この世に絶望したのか。一瞬の気の迷いだろうか。まあどちらでも良い。どんな感情でも、最期には死に直面した人の絶望と狂気に満ちた感情を見せてくれたのだから。

 ああ、あの感情を、もっと、もっと知りたい。

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