カーペット下の宇宙

ほがり 仰夜

ゆめを埋める

 宝石を土に埋める。移植ベラで庭を掘る。荒れた庭を。低木は全て切られて今年花を咲かせるものはない。みな年老いたからと。木も人も土地も建物も。どこにも肥料がなかった。痩せた雨が土を濡らす。煩わしかった。軍手が重くなっていく。私は土を掘る。よく研いだ移植ベラで黙々と。石に当たっては迂回して、どこを掘るでもなく日が当たるかどうかも知らず土を掘る。

 昔ここには宝石が埋まっていた。集めて大切にしていたけれど知らぬ間に消え失せた。枯れた庭を掘る。昔ここにはいろんなものを埋めた。どこに何を埋めたのかもう覚えていない。芽が出るものは植えていない。みんな土の中で眠っている。どこにいったんだろう。失くしたものが庭の土の中から出てくればいいのに。私は土を掘る。

 宝石を埋める。気がすむまで掘った穴に放り込む。誰の目にも触れないように。土にも還らないであろう、キラキラとした色を湛えツルツルに磨かれた宝石を。かつての庭はこの宝石よりもみずみずしかった。

 なにもいらないよ。もうだめになってしまったよ。もどってきてよ。私は死んだ私を呼んでいる。戻るはずはない。種を蒔けないのだから。

 せめて眠れ、石よ私の代わりに。土の中で巡る四季の夢を見てくれ。その身に時を閉じ込めて。いつか掘り起こすから。忘れちゃうけれど。

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