ボクと夏と未来戦
翠野とをの
MAINDATA 未来世界へ
プロローグ 動き出す夏
地球の、とあるところ、ふたつの家がある。それぞれ同じ歳の子供が居り、1つは普通の家だが仲睦まじい。一方は裕福だがほとんど家族が一緒にいることは無い。
そして、
そんな2つの家の子達はとても仲が良かった。
一瞬友達以上の関係かと錯覚するくらいには……。
夏空が掻き消されそうなくらいのゼミの声。クーラーがガンガン効いている部屋にも入ってくる。その部屋では2人が話し合っている途中だった。
「……で、お前はここに志望校変更するのか?」
「はい。これが夢なので!」
先生と話し合っている少年こと、
「そうか。じゃあここの大学に行くためには評定が……」
先生が説明を始めた。
「ーー今のままでも行けるだろう」
「ありがとうございます」
「……しかし大丈夫なのか」
「何が、ですか?」
何が大丈夫なのだろうか。翔は考える。
(何がだろう。……もしかして)
「お前、虹羽に言わなくていいのか?」
予想通り翔の親友、
実は翔はゆうじに前々からずっと同じ大学に進学しようと誘われており、翔もこの前まではその大学に一緒に行く気でゆうじに伝えていた。
しかし翔には夢が出来た。
親友と同じ大学では、学びたいことが学べないため他のところに行くことにしたのだ。
ちなみに今日の面談はこの事について相談していた。
「彼には……、後で言うつもりなので」
(もっと早く言おうとしてたけど僕の夢、現実的じゃないからあの現実主義の頑固者には辞めろと言われるに決まってるし。本当はなかなか言えなかっただけなんだけど……)
すると先生は苦虫を噛み潰したような顔をして
「困ったことがあったら何か言えよ」
と言った。
笑顔で応える。
「大丈夫です。ゆうじもきっと応援してくれます」
二者面談が終わり、帰路につこうと学校を出る。
コンクリートからの熱気がすごく暑い。さっきまで冷えた部屋にいたお陰で少しは耐えられたが、すぐに汗が出てきた。
暑さでぼーっと歩いていると曲がり角から人が出てきていることに気付かずぶつかってしまった。
見上げる。
ぶつかってしまったのは外国の人のようだった。
「わ、す、すみませんっ!」
咄嗟に謝ったが日本語だったため通じただろうか。
しかしその外国人は少しの間翔の顔を見つめた後軽く会釈し反対方向に去っていった。
その姿を見えなくなるまで翔は見ていた。
(今の人、目、綺麗だったな。その上イケメンだし)
───なんて考えている場合ではなかった。
翔は帰ってゆうじとゲームをする約束をしていた。早く帰らなければ沢山メッセージがゆうじから来るだろう。
ピコン。ピコン。ピコン。
思ったそばから
『今帰る』と返信し、夏空の向こうに駆け出した。
家はまだ遠い。
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