美少女のことなんて無視して、俺は〇にます。
ぺんぺでの花
第一章
プロローグ 俺ってなんだ
「あんたなんて、私の子供じゃないっっ!!!」
俺が渡した高校の不合格用紙を破り捨て、俺に対して吐いた言葉。
俺を一人で育ててくれた母さん。朝の七時から夜の一時くらいまで外で仕事をし、学校の金を払い、高校を受験させてくれた。
結果は全落ち。当たり前だ。中学なんて最後いつ行っただろう。母さんが払ってくれた金をどぶに捨て、さらには家でも勉強なし。
中学に行かなかったことで当たり前だが、高校の二次選考を考えてくれるわけもなく、俺は行く高校が全くない状態だった。
「なんなの!!!あんた!!!こんなに命を削って働いて!!!なんなの.....ねぇ、教えてよ!!!あんたは何なの!!私を返してよ!!!」
涙を流しながら膝をおり、地面を叩きつける。どんどんと鈍い音が響き、母さんのこぶしから血が滲み出て来る。
俺は何も言えずにだんまり。俺は髪の毛はぼさぼさな状態で、母さんが俺を見つめる眼と目を合わせるしかできなかった。
「もう。ほっておいて.....あなたと話したくない」
「え、いや.....」
「うるさいっっ!!!」
やっと気づいたのか、俺は焦りにより冷や汗をドバドバ出しながら母さんの言うままに自分の部屋に戻っていく。
自分の部屋にあるのは推しのアイドルのポスターと、自分の唯一の支えであった彼女からもらったぬいぐるみの数々。いや、それは別れたからもう捨てたんだった。
彼女は浮気をして、体育会系のイケメンと付き合ったと聞いた。
こんな俺よりも体育会系を選ぶのは当たり前だろう。懸命な判断だ。それに気づいた日は悔しがって、ムキになって、猛勉強をした。三日坊主で終わったが。
ガチャと玄関の扉を開ける。
深呼吸をしながら一歩一歩と上への階へと続く、階段にむけて足を進めていく。
一歩.....一歩.....また一歩。一つ一つをゆっくりと踏んでいった。
運がいいのか悪いのか、階段を上っているときは誰にも会わなかった。
「ついた」
四階から十二階まで何時間かけたかわからないほど、時間をかけて登りきる。涼しい風が全身を包み込み、雲にしか覆われない空を見上げる。
下をみる。高い。死ぬ。
もうどうでもいいんだ。中学一年生の頃のこの世を希望に満ちたものだと思っていた俺はどこへ行ったのだろうか。
「終わってみれば早かったな」
そんな遺言を残して、最後の一歩を踏みこん――――――
見た。この世の美しさをすべて集めたような美少女が。
いやそんなことはないのかもしれないが、俺にはそう見えた。
空が、その女の子がいるところだけ晴れていく。
そんな女の子と目が合った気がして、俺は最後の一歩を踏み出した。
引きもどすように動く空気抵抗が今の俺には心地よかった。
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