第1章 第22話 夏季休暇の予定・新装備
皇城を後にし、皇室の家紋入りの黒塗り馬車でウェッジウルヴズ家の屋敷へと帰って来た。
「で、どうするんだ?」
リオンゲートとヨハネスが共に子供達に問う。
「どう、とは?いきなりすぎて、まだ何も考えられていませんが……」
ユイエも困った顔で答える。
「あぁ、そっちの話しじゃない方を先にしようか」
「??」
ユイエとアーデルフィアも質問の意図が分からず、きょとんとする。
「婚約するのかしないのか、ですね」
ヨハネスが判り易く何の話題なのかを明示した。
「「あぁ~……」」
二人とも困った顔でお互いの顔を見合ってしまう。
「アーデルフィア様。私と婚約していただけますか?」
「えぇ、よろこんで。貴方以外の候補なんていないもの」
二人の返事にウェッジウルヴズ大公とアズライール伯爵が頷いた。
「で、籍はどうする?ウェッジウルヴズに婿に入るのか、アズライールに嫁に行くのか」
「ウェッジウルヴズ家にずっとお世話になっているんだ。婿に行きなさい」
アズライール伯爵は即断即決で婿行きを指示した。
「はい、わかりました」
ユイエとしても、ずっとウェッジウルヴズ家にお世話になっている以上、この家の人間になる方が収まりが良いとさえ思えていた。
「では、婚約はこれで本決定とする。学園を卒業したら婚姻の流れだな。皇城にもそう報告するぞ」
ウェッジウルヴズ大公がそう宣言した。
「「はい、わかりました」」
「あー、それでな?婚約は決定したとはいえ婚姻は卒業後だ。学生の内はしっかり避妊しろよ」
「「 」」
この話し合いを聞いていたメイドがスクープとしてメイド仲間に話しをし、あっという間に屋敷全体が知る事になって、祝福ムードで盛り上がっていた。
◆◆◆◆
翌日、ウェッジウルヴズ大公リオンゲートとアズライール伯爵ヨハネスが登城し、アーデルフィアとユイエの婚約とウェッジウルヴズ家への婿入りの報が知らされた。
その知らせにエドワード・フォン・リカインド宰相が満足そうに頷くと、学園が夏季休暇に入る6月初旬からアーデルフィアとユイエに≪樹海の魔境≫の開拓の指令書を発行した。
「どうせ夏季休暇中も≪樹海の魔境≫に潜って狩りをするのだろう?ならばついでにベースキャンプ作りを兼ねて開拓もしてくると良い」
領土は切り拓き次第で、やるかやらないかは任せると言いつつ、ベースキャンプの開拓に人手と金を出す事が既に決められていた。
◆◆◆◆
6月初旬。
1学年の終業式が終わり、ウェッジウルヴズ家の屋敷に戻ると、リオンゲートとヨハネスが帰宅を待っていた。
「エドワード・フォン・リカインド宰相からの指令書だ」
手渡された指令書を広げてみると、夏季休暇から≪樹海の魔境≫に潜るのであれば、人手と資金を出すので、ベースキャンプ作りを進めるようにとの内容であった。
「宰相閣下の読み通り、≪樹海の魔境≫に行くつもりでした。ベースキャンプ作りに人材と資金を出して貰えるのであれば探索の拠点作りとして助かりますので、やってきましょう」
「でも選択は任せるとか言いながら、結局は宰相閣下の思うように動かされてる感じで癪ね」
指令書によると、6月上旬のうちに開拓団を皇都から出すので、その時にまた連絡と迎えを寄越すと記載されていた。
指令書を受け取った二人はそれを
「この度はご婚約おめでとうございます」
ゼッペルとライゼルリッヒが二人に祝いの言葉を贈った。
「ありがとうございます?情報早いですね?」
「商人は情報には敏感でございますれば」
「それで、夏季休暇に入りますのでそろそろ装備がどうなっているのかなと思い伺いました」
「はい。学園の夏季休暇にお出かけになるだろう事を踏まえまして、間に合わせました」
「職人や付与師達は今頃寝入っていると思いますので、代わりに我々がご案内いたします」
徹夜で仕上げを間に合わせた感じだろうか。死屍累々の有様が偲ばれる。今回は装備の試着なども行う予定のため、更衣室付きの応接室に通された。
しばらく待つと、店員達がモノを運び込んできた。
「おお……」
「早速≪鑑定≫しても?」
「はい、どうぞご確認ください」
ライゼルリッヒが自信満々という笑顔で応えた。
・
【強度強化】、【
・
【強度強化】、【
・
【強度強化】、【斬れ味強化】、【
・
【強度強化】、【斬れ味強化】、【
装備の総入れ替えである。竜素材装備をすっ飛ばして
全身甲冑は、
また、大楯や全身甲冑などもそうだが、黄金を溶かして細工したような意匠も映えており、≪
これらをユイエは見た目で興奮してあれこれ見て回り、アーデルフィアは≪鑑定≫で仕上がりの結果をみていた。
「うん、文句ない素晴らしい出来ね。マインモールド工房の本気の仕事、お見事です」
「お褒めに預かりありがとうございます。職人と付与師にそのお言葉、伝えさせて頂きます」
ライゼルリッヒが嬉しそうに立礼を返した。
「もう1つ、我々からご婚約されたお二人に贈り物を用意させていただきました」
ゼッペルがそう言って持って来たのは2つの背嚢型
「こちらも特注製品でして、お使いの
「ありがとうございます。夏季休暇中に【樹海の魔境】に行きますので、また良い素材を持って帰れるように頑張りますね」
「お、お手柔らかによろしくお願いいたします」
これらの装備で二度に渡り買取してもらった
サイラスとメイヴィルは
ユイエとアーデルフィアは
「こんなに良い装備を頂いてしまうとは何だか申し訳ないです」
「えぇ、そうね。この装備達はウェッジウルヴズ家からの貸与にして下さい。お二人が独立した時に、信用できる配下にお渡しできるようにお願いします」
サイラスとメイヴィルは恐縮しながら、そう提案してきた。
「そうね……。サイラスとメイヴィルをこんなに気軽に貸し出してもらえるのも学生の内だけだと考えると、そうさせてもらった方が良いかもしれないわね」
アーデルフィアが少し寂しそうにそう答えた。
アーデルフィアとユイエは腰に佩いた小剣をすっと抜いてまた鞘に納めると、今度は長剣を抜こうとして切先がまだ引っ掛かるのを確認した。長剣の腹を指で摘まみながら慎重に抜くと小剣より重心が剣先にある感触がするが、素振りをしてみるとしっくりと手に収まるのを確認できた。柄は標準より長めに作られており、片手持ちと両手持ち、どちらにも対応する作りであった。
「長剣も引っ掛からずに抜けるようになるまでもう少しね」
若干悔しそうにしつつ、近い将来に抜けるようになることを祈った。
(お願い事)
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