第1章 第14話 春季休暇≪皇都帰還後≫(1)
春季休暇11日目。
皇都のウェッジウルヴズ家の屋敷に帰還して一夜明けた春季休暇11日目。
サイラスとメイヴィルに背嚢型の
「すみません、今日は買い取りをお願いしたい魔物素材が大量にありまして。
「魔物素材の買い取り、でございますか。それでは倉庫で確認させて頂きましょう」
工房の裏手にある空間拡張された倉庫に移動し、十分な広さがある事を確認した上で買い取りをしてもらいたい素材、緑種と赤種のドラゴンを6頭ずつ、計12頭分をそこに並べた。
「…………。失礼、言葉が出ませんでした。この間お買い上げいただいたあの
「えぇ、あの剣のおかげです。良い商品をありがとうございました」
若干引き気味の店員に、ユイエが笑顔を向けて礼を述べた。
「いやしかし、これだけの量の買い取りとなりますと私の一存では決められません。店長を呼んでまいりますので少々お待ち下さい」
「分かりました。こちらで待ちますので、よろしくお願いいたします」
「……いくらなんでもこれ全部はマインモールドの工房でも買い取りし切れないんじゃないですか?」
サイラスが呟く。
「ですね。
メイヴィルもサイラスに追従する。
「必要な所だけ買って貰えれば良いのです。そして代金は現金だけじゃなくて、既製品か特注品の商品との交換でも良いと思ってます」
ユイエが二人に説明をする。
「そういうこと。買ってもらえなかったとしても、
アーデルフィアもユイエの発言に補足して伝えた。
「なるほど。公女殿下とユイエ様が、マインモールドの工房と懇意にしたいという想いを売りつけるという事ですか」
メイヴィルが納得がいったのか頷いている。
しばらく待つと、店員が店長を連れてきた。
「はじめまして。アーデルフィア・ウェッジウルヴズです」
「はじめまして。ユイエ・アズライールです」
アーデルフィアとユイエが店長に立礼をしつつ名乗る。メイヴィルとサイラスは背後に控えて口を出さないつもりらしい。
「これはこれは、ご丁寧にありがとうございます。私、ゼッペルの上司となります皇都店店長のライゼルリッヒと申します」
馴染みの店員の名前はゼッペルさん。はじめて聞いた。
「しかし、口頭で数量を聞いて聞き間違いかと思いましたが、これだけ並んでいると壮観ですな」
ライゼルリッヒが顎髭をしごきながら竜を視ていく。
「なるほど。無駄な傷も少なく極めて良品質の良い仕事でございますね」
満足そうに頷いている。
「これだけの竜素材、全て買い求めたい程でございますが、本工房はあくまで武具取り扱い店でございます。素材として買い求められるのは状態の良い甲殻や鱗、翼膜や皮革、そして骨のみとなりましょう」
「えぇ、肉や心臓は
ユイエの説明にライゼルリッヒが頷いている。
「つまり、我が工房で買い求めたい素材だけ、
「そういうつもりで持ち込ませていただきました。マインモールド工房で必要な部位だけ抜いて買い取ってもらい、余った部位を
「横から失礼します。買い取り方法についてですが、現金か銀行振込の他にマインモールド工房の
アーデルフィアが横からフォローを入れた。
「成る程、素材持ち込みのオーダーメイドの制作に代わり、既製品の竜素材製品でのお支払いですか」
「はい。取引は適性価格でお願いします。高く売ろうとも安く買い叩こうとも思っておりません。忖度なしで、マインモールド工房が適切と考える価値同士での取引をさせて頂ければと思っております。また、お買い上げいただいた素材で新たに作成された武具でのお支払いでも構いません」
アーデルフィアがライゼルリッヒにあくまで公平な取引を望んでいる事をアピールした。
「いやはや、そこまでご配慮いただけるのであればという思いが出ますな」
ライゼルリッヒが黙考する。
仮にマインモールド工房で買い取りが無かったとしても、アーデルフィアとしては
「……本店舗での素材の解体はお時間が掛かってしまいます。そうなると折角の肉など鮮度が落ちてしまう分、お客様に不利益が発生すると考えられます」
「確かに、そうなるでしょう」
予想される事ではあった。
「そこでご相談なのですが、解体を
「なるほど。その案で対応する方が工房側の負担も減りますね」
「えぇ、正直これだけの量の解体を店舗で行うとなると、人も時間も足りませんので」
「では、その案でいきましょう」
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