序章 第5話 実戦準備
≪若木の儀≫の宴が閉宴すると、ユイエとアーデルフィアはリオンゲートとヨハネスの元に戻り、早速領地の魔物狩りに参加したいと用件を切り出した。
これにはヨハネスも渋い顔をして諦めるように諭そうとしたが、意外にもリオンゲートが後押ししてくれた。
「アズライール伯爵、私は良いと思うよ。二人の実力はもうかなりのモノだし、ちゃんと騎士達の指示に従っての魔物狩りなら、きっと良い経験になると思うよ。それにエーギス領の森なら脅威度の高い魔物もいないだろう?」
「……ウェッジウルヴズ大公閣下から見て、そう思われるのでしたら。エーギス領の森での狩りで検討してみましょうか」
リオンゲートの後押しであっさり折れたヨハネスは、間引きの引率を誰に任せるかでしばし頭を悩ませるのだった。
◆◆◆◆
翌朝、朝の基礎訓練の走り込みをしながら装備について話し合う。
「ウチの騎士団の鎧と剣を借りれば良いわよね?」
「ウェッジウルヴズ家の騎士団の鎧は≪自動サイズ調整≫が付与されているのですか?」
「うん、個人個人に合わせてバラバラなサイズを作るより、≪自動サイズ調整≫を付与した物を数揃えた方が結局は安く済んで管理も楽って聞いたわ」
「なるほど。それなら防具は貸してもらった物を使うとして、武器はどうしましょう。体格的に小剣で予備の副武器に短剣くらいでしょうか」
「槍なんてどうかしら?間合いをとって戦えると安心感が違いそうじゃない?」
「では、主武器に短槍、副武器に小剣ですね」
二人の話し合いをしながらの走り込みは軽く流すような走り方ではなく、ほとんど全力疾走の様な速度で走り続けている。
二人がいつも通り走っていると、鎧を身に着けた騎士達もやってきて武装した状態で走り込みに参加しはじめる。全身鎧を着て走るのはいつ見ても大変そうだった。自分達もそろそろ身に着ける事を考えて見ると、関節などの可動域の制限なども意識して見てしまう。確実に柔軟性が損なわれ、重しを着込んで動く事になる。防御力とのトレードだと考えても、マイナスの方が大きい気がした。それとも、慣れれば問題なく動けるようになるものなのだろうか。
「明日から私達も全身甲冑を着込んで、武装した状態で走りませんか?」
「奇遇ね?私も丁度同じことを考えていたわ」
翌朝、騎士団の詰め所で借りてきた全身甲冑に小剣を佩き、大身槍の短槍を手に持って二人は走りはじめた。
まず分かっていた事だが動きにくい。特に胴回りが致命的である。硬い鉄板が全周囲を囲っているため、腹筋するのも難しい。上半身を反らしたり屈めたり捩じったりといった動作にも制限が掛かるため、甲冑を着ている時の動作として基本的な動きから見直しが必要になった。
騎士達が態々全身甲冑を着て訓練するのも頷けた。これは普段から着慣れていないとまともに動けそうにないと思い知った。
◆◆◆◆
騎士達と同様に全身甲冑に武具を携えての早朝訓練をはじめて1ヶ月が経った頃、エーギス領で魔物狩りを行う連絡が届いた。
魔物狩りに同行するのはエーギス領の騎士と兵士になる予定だが、念のためウェッジウルヴズ家の騎士が2名、護衛に付くことになる。男性騎士がサイラス、女性騎士がメイヴィルという名前だ。どちらも
「メイヴィルとサイラスね。今回の遠征もよろしくお願いするわ」
アーデルフィアが二人に声を掛けた。
「ハッ!今回の遠征はアーデルフィア公女殿下とユイエ様の実戦経験を積むのが目的と伺っております。基本的に我々はお二人の護衛に徹しますが、危険と判断すれば介入しますので、ご承知おき下さい」
サイラスが自分達の任務と役割について説明し、アーデルフィアがそれに首肯する。
「私がアーデルフィア公女殿下の担当で、サイラスがユイエ様の担当の予定です。エーギス領の森に近い宿場町がエーギス領の兵士との合流ポイントのため、そこまでは各自で馬に騎乗して移動します。全身甲冑は装備して武器も携行して移動しますが、携帯食料や天幕などの野営道具は、各自の≪魔法の
「分かったわ」
一通りの確認と連絡事項が終わると各自で馬に乗り、宿場町へと移動を開始した。
早朝に皇都を出て夕刻に合流予定の宿場町へと辿り着いた。予定通りの宿屋にエーギス領の騎士と兵士達が先入りしていたので合流し、顔合わせをしながら夕食を取る。今回の狩りはユイエとアーデルフィアに実戦経験を積ませる目的がある事もエーギス領の騎士や兵士にも伝達されており、簡単な打ち合わせだけで済んで早めに就寝した。
(お願い事)
★評価、ブックマーク登録、♥応援 などのリアクションをお願いします。
コメントなしで★や♥だけで十分です。モチベーションや継続力に直結しますので、何卒よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます