Fighter and Recorder

ROTTA

第1話 Fighter and Recorder

ここは、広く知られる宗教には全く関係なく、地球とは次元も異なる「天界」である。

住まう者たちが「天使」と呼ばれ、名前の最後に「エル」がつくことが多く、頭上には光る輪、背中には羽根を持つけれど、ミカエルとかガブリエルとか、九つの階級とか、そういうものは存在しない「天界」である。


この天界の天使たちは、色々な星と交流がある。

その中に地球も入っているが、地球は、天界にとっては交流というよりも「干渉の対象」となっていると言った方がいい。地球上の生き物ーーー主に人間ーーーと天使では波動の高さが違いすぎて、地球側の者にそれなりに力がないと、こちらのことを認識すらしてもらえない。そんなであるので、交流は厳しいということである。


天使たちが地球でやる仕事は色々ある。

その代表となるのが、記録と戦闘である。


まずは、記録から紹介しよう。

これを担当する天使たちを、「記録員(レコーダー)」という。

地球上全体としての動きから、小さなコミュニティに至るまで。記録した情報を定期的に天界へと送る役割を担っている。

その情報は、できる限りは正しくないとならないし、薄っぺらなものでもいけない。ではどうすれば「可能な限り正しく、突っ込んだ内容」の情報を得られるか。答えは簡単、当事者になることである。

たとえば、学生のことを一番よく分かっているのは学生。医療ならば医者や看護士など医療従事者、芸能界ならば芸能人やメディアの裏方。実際にそれを体験せねば、前述のような情報は得られない。


しかし先ほど、天使は人間に認識すらできない存在と書いた。ならば天使は地球の、人間のする仕事など体験できないはずである。

が、それを可能にする方法がある。

人間のそれと同じ成分でできた、肉体を持てばいい。


天使たちは自分の波動を下げたくないと思っている。しかし地球上で役割を全うするため、天使としての波動を下げ、下げ、さらに下げて、天界の「上の方」の天使たちがそれ用に創った肉体に「入る」。

肉体と同じに住む場所やステータスーーー職業は何でどこ住みで、どういう経歴か、などーーーも用意されているから、そこで各々、人として、体験せねば分からないことを吸収するのである。


次は、戦闘の紹介だ。これの担当者を、「戦闘員(ファイター)」という。

戦闘員も、地球上でやるからには記録係と同じように肉体や、人間社会に溶け込むための住まいやステータスなどを与えられるが、基本的に仕事は与えられない。体験云々よりも、戦いに重きを置いた係だからである。

なお武器は、与えられたり手に入れたりする必要はない。空間から、自分の得手とする武器をいつでも出現させることができるからである。


戦う係があるということは、戦わねばならない相手と理由があるということである。


まず相手。組織名を『黒き血』という。姿形は人間だが、地球上に存在する天使たちと同じく、中身は人間ではない。地球とは違う惑星を故郷とする存在である。各々の内側の、思いやり、つまり愛が在るところに、そのぶん代わりに頭脳や支配欲が入っているような連中で、地球はそいつらがはびこってもう、何千年という年月が経っている。戦闘員になった天使たちは幾星霜、永い時、「上の方」の指示を受けて然るべき場所へ行き『黒き血』と戦っている。


では『黒き血』とは、どんな組織か。

具体的に挙げるとあまりにも内容が多すぎるので、抽象的に書く。

人間を、「眠らせる」。

「繋がりを断つ」。

支配的。破壊的。自己中心的。

ーーーそんなところか。

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