ep.13 盗賊殲滅1



総参謀長 武氏義之(主人公?)



「遂に、星型エンジンを完成させたぞ!」



魔力充填瓶で爆裂魔法を発生させ、それでピストンを動かして稼働するレシプロエンジンを開発することに成功した。実用化したばかりであるため信頼性は低いが、シンプルな構造なためなんとかなっている。



また航空機の素材として魔法を注入して強化したベニヤ板も制作されており、それはレベル1~3まであり、



1はただ単に力が加わった際に折れたり曲がったりしにくく、魔力を一定の量流し込むだけでいいため低コスト。



2は1の性能に加え、水魔法をかけているため燃えにくく火に強い。が、所々に水魔法をかけた魔石を埋め込まなければならないため高コスト。



3は1,2の性能に加え魔力を自動で魔力充填瓶から取り込めるため、破損箇所を塞いだりと臨機応変に対応できる。しかし魔力を通す回路をベニヤとベニヤの間に通しているため、超高コストだ。



同じ要領で熱に強い金属も作ってみたのだが金属は魔力が逃げやすいらしく、大量の魔力充填瓶を内蔵しなければならない。


それではとてもジェットエンジンには使えないということで、ひとまずは星型エンジンの開発となったのだ。


そしてエンジンが完成した今、国民の間で大論争になっているのが高性能な零戦のような機体を作るのか、はたまた九五式戦のような複葉機にするのか、だ。



後者の理屈としては、



「一式陸攻のような機動性のワイバーンなら複葉機で十分対応可能であり、また鹵獲され複製された場合でも今度こそ零戦で対応すればよい!」



一方前者の理屈は、



「複葉機が万が一でも撃墜されれば死者が出るし、本国に零戦を配備すれば複葉機を他国に輸出できるじゃないか! しかも複葉機が鹵獲され複製されるまでに零戦が作れる保証もない!」



という具合で中々結論が出ずにいる。


そのためエンジンのみが完成し、機体がないというわけである。


それは困ったということでまずは爆撃機兼輸送機を作ろうとなった。



...その結果できたのが九九式双発軽爆撃機である。


友達のミリオタが持ち込んでいた本に簡易的な設計図が載っていたため、多少の変更を加えつつもある程度そのまま作られた。零戦・複葉機論争に巻き込まれないよう、すぐに試験飛行を行うことになっている。



ーーーーーー


神聖ザユルティ法皇国 魔法研究所



「これが新型速射魔導砲、ボフォースの設計図です」



水軍司令官である山本 亮太は神聖ザユルティ法皇国に交渉に来ていた。



「おぉ...これはすごい...」



神聖ザユルティ法皇国の魔法研究所は、その優秀な技術者と魔術師で神聖ザユルティ法皇国を関東No.1の大国にしてきた。しかし魔導砲として少しばかり変更されているとはいえ、前世界で80年以上活躍している洗練されたボフォースの設計図を見て驚きを隠せないようだ。



「この薬莢というのに魔力充填瓶を内蔵し、一発ごとに交換するのか! 素晴らしい!」



そこからかよ!


まぁ確かに以前の魔術師が常に魔力を入れないといけない魔導砲からの進化といえばそこが大きいかもしれんが...



「...ここは一つ、条約を結びませんか?」



設計図に見惚れている変人魔道士を現実に引き戻す。



「あ...そうだ、設計図に見入っていましたが本題はそれでしたな」



「我々はこのような優れた設計図を提供する、一方あなた方はこの研究所の利用も含め我々にできる限りの支援を行う、というものです。勿論、研究成果は両国で共有します。また、これを結ぶ場合不可侵条約も一緒に結びたいところです」



「条約ともなれば皇帝陛下の認可が必要ですので、後日改めて返答いたします。また、もしだめだった場合この速射魔導砲についてはしっかりと設計図の代金を支払いますのでご安心を」



「えぇ、良いお返事を期待しております」



ーーーーーー


総参謀長 武氏義之(主人公?)



ブヴォン、ブヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォ


星型エンジンの重低音が響く。


私が乗った九九式双発軽爆撃機は、順調に加速。


大体こんなところだろうという速度で操縦桿を引いた。



フワァ〜



初めてゲーム以外で離陸した。


その後ランディングギアを格納した後、ある程度の高度に到達。


順番にテスト項目を実施していく。


まずは旋回性能だ。


翼を30度ほど傾けてみたが問題なさそうなのでそのまま操縦桿を引き、旋回する。



すると、ギシギシギシギシと何かがきしむような音がした。



怖い...翼がかなり負荷を受けているようだ。


一応法皇国から購入したワイバーンから脱出するためのジェットパックは装備しているが...


このままテストは厳しいだろう。


すぐにでも帰投しようと、控えめな出力で引き返す。



何とかゲームで鍛えた操縦技術を駆使し、滑走路に向け降下。


滑走路とは言ってもただ整地しただけの草原であり、かなり長い。


余裕を持って機首を上げ、緩やかに着地...


と思った瞬間、主翼が地面に接触。


どうやら片輪が出ていなかったようだ。


土埃をたて回転しながらようやく停止。


国境警備軍が駆け寄ってくる。



「参謀長! 大丈夫ですか?」



この前も聞いたな...



「あぁ、ちょっと肘を打ったが、大丈夫だ!」



その後、ドアをこじ開け脱出。


このときは肘が痛くて気づかなったが、なんと主翼が折れていなかった。


曲がってもいない。


実はギシギシと音がしたのは、部品同士が硬すぎてちょっと負荷がかかるだけでギシギシ言ってしまうらしい。


ちなみにギアのほうは、手動でワイヤーを巻き上げて格納する方式だったのだが、運悪くワイヤーが絡まり、片方が出なかったのだ。


これらの欠点を改良するため試作二号機では、主翼の連結部分には通常のベニヤ板を挟み、なおかつギアは油圧式となった。


しかし、試作二号機も着陸でギアが破損するという欠点が出たため量産型は固定脚へと変更された。



そして試作参三号機の結果は良好、いや最高だ!


主翼強度が極めて高いためパイロットがGに耐えさせすれば急降下でも急旋回でも余裕である。


これで銃座も積めば時速250km程度のワイバーンなど怖くはない。


ちなみに試作一,二号機は整備士の練習用となった。



この結果を受け、戦闘機型の二式複座戦闘機、


さらに主翼の強度を上げ爆弾搭載量を増やした二式複座襲撃機も設計を開始した。

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