祖母はなぜか青い牛乳を買わない

フミヨ。

それは私が幼い頃・・・

私が小さなとき、母は育児放棄していた。

父は当時、死んだと聞かされていたが、離婚していただけだった。


故に祖母が私の両親代わりになって育ててくれていたのだが・・・


そんなある日のこと、いつものように昼前になると毎日スーパーに買い出しに祖母と連れ立って行ったものだった。


私は教育テレビが子守代わりで中でも「できるかな」を好んで観ていた。

小さい子供でもできそうな工作をノッポさんとゴンタクンがつくっていくというもので、私の世代の人なら知っている人も多いだろう。


まあ、そんなわけで手近にある日用品の殻(ガラクタともいう)を使って工作するのが、一人っ子で放置されていた私にはまたとない娯楽であった。


そんなころ、ノッポさんが青い牛乳パックを使って何か工作していた。

単純な私は同じようにやってみたくなった。よくあることである。


さて、祖母とともにスーパーの牛乳コーナーについた。

「ばあちゃん、私、あの青いパックの牛乳欲しいん」

「なんで?いつも緑の飲んでるやろ?」

「どうしても飲んでみたいのん(工作に使うとは言いにくい苦笑)」

「あかん。あれは『オスの牛乳』やから、うちでは飲まへんの」

「( ^ω^)・・・ええ、あ、そうなんや」


買い物を終え、家に帰ってもどんなに子供でも私は妙な疑念にかられた。

たくさん考えに考えても、なぜ祖母があんなことを言ったのか・・・

どうしても自己解決できなかった!!!


その夜、意を決して、祖母に例の発言の真意を問うた。

「なあ、『オスの牛乳』ってホンマにあるん?」

「・・・えっ」

「わたし、オスってミルクでえへんと思うんよ」

「・・・うん」

「もしかして嘘なんか?」

「噓のつもりやないで、私が青いの好きやないからなんやで」

「それで緑ばっかり買ってたんか」

「ようわかってるやん、緑は濃厚で美味しいんや」

「・・・!!」

「青いのは[低脂肪乳]いうてな、味薄いんや」

(知らんかった・・・!)

「でも、ほかの人普通に青いの買わはるし、その場で味薄いとか、まずいからとか言われへんやん」


驚愕した。少なくとのその時は本当に。

要は、青いパックの牛乳は低脂肪乳で祖母は嫌いだったがゆえに、『オスの牛乳』という言い訳をとっさに編み出したのだった。


私はそれからというもの、事あるごとにこのことを思い出し、話のネタにした。

祖母は「死ぬまでネタにされるわぁ」と言っていたが、ご心配なく、死んでもネタにしたよ。


頭の回転が良いのか、天然なのか今でもわからないエピソードである。

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祖母はなぜか青い牛乳を買わない フミヨ。 @miyuyun

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