生き残りの地球人、別の星で伝説になる

月咩るうこ🐑🌙

第1話 地球滅亡?!

十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。


かつて、ある人間が残した言葉だ。




時は、3024年。


地球は突如とした氷河期を迎え、地球全体が人類と共に氷に包まれた。


そんな中、生き残った人間はたった一人。

宇宙観測に出ていた若者、木葉浪曼このはろまんである。

彼は俗に言う科学オタクであり、頻繁に宇宙に出ては様々な研究をすることが生き甲斐の男だった。


そんな彼が約3ヶ月間の宇宙観測を終え、地球に帰ろうとしたときだ。


「ん……?あれっ……?迷ったかな?いやそんなはずは……」


なんと、地球が見当たらないのだ。

厳密に言うと、青い星ではなく、氷の星へ様変わりしていた。


「そ……そんな……嘘だろ?

まさか……あれが地球?!

僕の見解では……氷河期はまだ先の先なはず……

一体どうしてっ……」


いや、考えている暇はない。

とにかくどこかに不時着せねば……

ちょうど3ヶ月分の燃料満タンでギリギリまでいたから、このままじゃあと2日持つか持たないかだ。


しかし……


宇宙において、人間が住める星は、地球以外にない。


人類が移住可能な惑星には「適切な温度」「気体の酸素」「液体の水」の3つの要素が必須だ。

こういった要素が全て揃う領域を「ハビタブルゾーン」と言う。

太陽系でこのハビタブルゾーンに存在する惑星は地球だけであると言われている。


とりあえず、唯一安全な着陸地である、月を目ざした。



「……?あんなのあったっけ……」


浪曼は月の近くにある、小さな惑星を見つけた。

目視では、かつての地球と似たようなコバルトブルーの小さな惑星が浮いていた。



浪曼は考えるより先に好奇心が勝り、すぐさま飛びつくようにそこへ向かって特製ロケットを操縦した。


勢い余って何も考えずに不時着してしまったものの、そこの光景を見て驚愕した。


「む…村だ……」


そこはどう見ても1つの村だった。

もちろん故郷とは形も雰囲気も異なるが、生物が生活している様子を安易に想像させる光景である。


小さな家々が並び、畑や川がある。


「まさかっ……ここにも人類が住んでいたなんてっ……どうして今まで気が付かなかったんだ僕は!何度も宇宙に出ていたくせに!」


浪曼は目を輝かせ、歓喜に満ちた声を上げた。


これは世紀の大発見だぞ!!!

ここに住んでいる者たちとたくさんの情報交換ができる上に、地球人移住計画も進む!

地球人類の大進歩!

いや、革命が起きるかもしれない!!


「って……何言ってるんだろう僕は。

人類皆、間違いなく死んだじゃないか……

残されたのは僕だけだ。」


急に虚無感と喪失感に苛まれ、なんともいえない心細さに支配された。


でも……もしもここに人類がいるならば、僕は一人ぼっちじゃない。

もしかしたら僕の知らないところで、地球人の一部がここに既に移住していたのかもしれないし。


とにかくこうしちゃいられない!

早くここに暮らす人類を見つけなくてはっ!



「あっ、あの〜っ!

どなたかいらっしゃいませんかー?!

すいませーーーーん!!おーーーい!誰かー!」


何度も何度も大声を出していると、トンと肩に手を置かれた。

驚いて振り返ると、そこにいたのはなんと、人間とは違う姿形に異様な雰囲気を醸し出している男性だった。


「まっ、まっ!まさかっ……!!」


白い肌に尖った耳、ライトグリーンの瞳に長い白髪。

目が眩むくらいに神々しく美しいその姿。


「ええええええエルフぅぅうーー?!?!」


「はぁ?うるさいんだよお前さっきから」


あれっ?

思ってたよりかなり口悪いな……

見た目の美しさとは似ても似つかない……


「こんな時間に騒ぎやがって、近所迷惑なんだよふざけんな。お前どこの種族だ?」


エルフは上から下まで隅々と浪曼を見回した。

しかし、全く検討がつかないのか、顎に手を当てて明らかに怪しみ出している。



「お前まさか……この星の生物じゃねぇってことはねぇよな?」


「っ!あー、実はうん、そうなんだよ。僕の星がなんていうか……かなり大変なことになっちゃってね……戻れなくなっちゃったんだ。だからたまたまこの星を見つけて……ロケットを不時着させて…」


「あ?……ロケット、だと?」


悲しげに眉を下げる浪曼を見て、エルフは、目の前にいるのがこの星の生命体ではないことよりもなぜかそちらに飛びついた。


「そのロケットってやつ、見せろよ。」


「え?あ、うん。いいけど。」


浪曼は着陸させたロケットの場所まで案内した。

それを見つめるエルフの後ろ姿を、浪曼は不安げに見つめる。


しばらくして、エルフはバッと突然振り返ったため、ビクッと体が跳ねた。

その鋭い目付きと目が合った瞬間ドギマギと緊張してしまう。


「お前………」


「………はい」


「す……すすすすすすすっっげええええなぁあああオイ!!」


「……っえ?」


なんとエルフは、先程とは別人のように目を輝かせ、明らかに興奮していた。


「このロケット、お前が作ったんだろ?!

ヤバすぎだよ!!これで宇宙飛んだんだろ?!

うわぁあ〜いいなぁ〜!!」


「そ、そんなに煽てないでよ、へへ……

何かを作ったり研究したりってのはただの趣味みたいなもんでさ…」


「それがすげぇんだよお前っ!

なぁ俺にも教えてくれ!自分で作った宇宙船で宇宙に行ってみたいんだ!」


「宇宙船…かぁ……船は昔トライしたことあったんだけど、ちょっと不安で使うのやめたんだ。僕はパーフェクトにできたものしか使わない主義なんだよ」


それは自分の家の倉庫にあるが、もしかしたら氷と化してバキバキになってしまったかもしれない。いや、そうに違いない。

自分の今の技術で完璧にできるものは、カプセルロケットくらいだ。



「故郷に帰れるようになるまで俺ん家に住んでいいからさ!な?!頼むよ!宇宙船で宇宙の旅ってのは、ガキの頃から俺の夢だったんだ!!」


「えっ?君の家に住んでもいいのっ?」


「おう!その代わり、宇宙船作るの手伝えよ!」


「わ、わかった!ありがとう!」


歴史に残るほどの大きな出来事が起きた。

地球が氷化し、きっと人類は滅んだ。

そしてたった一人生き残った科学オタクの天才青年・木葉浪曼が別の惑星に住処を見つけたのだ。




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