29.俺って人間だっけ?
黒龍は黒焔斬刀による呪いに蝕まれていた。
「あれ、俺って何をしに此処に来たんだ?」
目的を忘れ始めている黒龍。それを狙うかのように大量の化け物達が黒龍の行く手を阻む。
「あ、そうだった。誰かと何かをする為に来たんだ。取り敢えずこの化け物を。」
戦闘する為に刀を抜き出そうとしていた黒龍だったが、刀から出る黒い炎によって化け物は焼け消滅した。今の黒龍は性格や人格といった人間に不可欠な要素が欠けている。ただ、扉に行くという本能だけで動いている状態だった。
「あれ、幻覚が・・・見えて・・・きた。」
黒龍の前に現れた者。それは阿修羅だった。しかし黒龍は幻覚だと思い込んでいる。
「刀の男・・・いや黒龍よ。我の手先にならないか?」
「・・・どういう・・・こと・・・?」
「まぁいい。この獄天隠滅書によって手先にしてやる。」
すると黒龍の動きが止まった。どんな考え事をしているのか分からないが、キョロキョロと周りを見渡す。
「おかしいな。今日はニンジンの収穫日だというのに、なんで皆いないんだ?あれ?皆って誰の事だっけ。そういえば二人仲間がいた気がする?名前は・・・?なんかあって別れた気がする・・・?」
「おいおいこれは傑作だな!弓の女が泣くぞ!」
記憶すら朧げになってきた黒龍。もう駄目かもしれない。
「弓の女・・・ひ、なんだっけ?なんかとても美しかった気がする。いつも俺の事を尊敬していたような・・・?」
「これは本当に処置が必要だな・・・。獄天隠滅書よ。黒龍を完全に化け物へと変え、標的を化け物から人間に切り替えるのだ!!」
獄天隠滅書が光りだし、黒龍の周りを光が覆う。しかし、黒龍の纏っている黒い炎が絶対的支配をかき消した。
「なんと・・・!これはまずい。また失敗してしまった。我自ら手を下すか。」
阿修羅は右手を化け物の手に変え、黒龍の頭を吹っ飛ばそうとする。しかし、黒龍は刀を抜き、いともたやすく受け止めた。阿修羅の驚異的な筋肉でさえ止めたのだ。すると突然刀が光りだす。
「まずい!いったん離れ・・・」
ドン!!
とんでもない爆発が辺りを覆い、黒い炎が旋回する龍の如く大地をえぐる。
・・・
一方その頃黒龍の後を追っていた瞳は突然の爆発音とその風圧に驚いた。
「なに今の!?」
上を見上げると黒焔が空高く舞い上がっていた。まるで核爆弾のように。
「もしかして、黒龍が刀に抗っている・・・?まずい、早く急がないと!!」
瞳は小刀を使って襲ってくる化け物を次々に斬り倒していった。しかし、予想以上に敵の数が多く、前に進めない。
「くそっ、急いで黒龍の元に行かないといけないのに・・・!」
・・・
黒龍を原点に半径二キロメートルが吹き飛び、辺りが焼け野原となった。阿修羅は上空に飛ぶ事で間一髪抜け出す事が出来、安心していたがその破壊兵器に愕然していた。
「あれは人間兵器だ。自我が殆ど失われているのが一番恐ろしい所。獄天隠滅書も通用しない。いったいどうすればいいのだ。」
阿修羅は考え込む。すると、湿地を抜けた先にいる畜生の事を思い出した。
「そうか!畜生なら何とかなるかもしれない!!」
阿修羅は畜生のいる場所へと飛んで行った。
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