女子のクラスメートにやられる、動じない男になるための性教育

あかせ

第1話 痴漢騒動

 初夏になり、制服は過ごしやすい夏服に変わる。高校生になって初の夏服だが、中学の時と大してデザインは変わらない。気楽なのはありがたいが…。


時々、女子の透けブラが目に入ってしまう。女子と縁がないと、その程度でも興奮のネタになる。あれはわざとなのか? 俺のような陰キャをからかってるのか?


なんて事を考えながら、さりげなく見る俺だった…。



 そんなある日の帰りのホームルーム。教壇にいる担任の風野かぜの先生が言う。


「この間、他校の生徒同士になるんだけど痴漢騒動があったのよ。女子のみんなは気を付けてちょうだい。夏服の今は特に警戒してね」


もしかして、俺がチラ見してる事も女子にバレてる? 考えただけで怖くなってきた。


「先生。その話詳しく教えて下さい!」


一番前の席に座っている、学級委員長の保坂ほさかさんが挙手してから話す。


彼女は真面目だし女子に関係する話だからな。気になるのも無理ない。


「う~ん、どうしようかしら?」

先生は何故か悩んでいる様子だ。


「言えないから構わないですよ」


「そうじゃないの。ただ、ちょっと下ネタが入るというか…」


「下ネタ…ですか?」


「男の子のが話に入るのよ…」


「えっ?」

ポカンとする保坂さん。


「内容が内容だし、聴きたい人はこのまま残ってちょうだい。興味ない人は帰って良いわよ」


それなら問題ないな。さすが先生、良いアイディアだ。


………誰も帰ろうとしない。男子はともかく、女子が帰ろうとしないのは意外だ。


男子が帰らないのは、多分だが先生の口から下ネタを聴きたいからだ。先生になっていきなり担任になったらしいから当然若い。


若い先生だからこそ、下ネタに価値が生まれるのだ。少なくとも俺はそう思う。


「じゃあ、今から話すわね…」

先生は重い口を開く。



 「その時は通学中だったらしくてね、2人は満員電車の中にいたの。位置は…、女の子の後ろに男の子が立ってたみたい」


その位置は普通に考えたらご法度だが、満員電車なら仕方ない。移動したくてもできないんだから。


「そんな時に、電車が急ブレーキをかけたらしいのよ。それが原因で、男の子が女の子にかなり接近したみたいで…」


なるほど、そういう事か。俺の予想が正しければ…。


「興奮して大きくなった男の子のが、女の子のお尻に当たったのよ。それに気付いた女の子がすぐ男の子の手を掴んで『痴漢!』って言ったみたい」


予想通りだが、これって不可抗力だよな? その男子が可哀想だぞ…。


「とはいえ、急ブレーキが原因だった事や学生である事を考慮して、この件は教師だけに広まったの。……大体こんな感じね」


先生が説明し終わっても、保坂さんは納得したように見えない。何を考えているんだろう?


「保坂さん、気になる事ある?」


「ありますけど、ここで言うのはちょっと…」


「それじゃ、みんなが帰った後に訊かせてちょうだい」


「わかりました」


保坂さんが気になる事は何だろう?


「今回の件、校長が対策を考えてるみたいなの。何とか丸く収まったけど、いつもそうなるとは限らないからね。その対策は、今日の職員会議で決まる予定よ」


対策なんてできるのかよ? 女子に急接近したら、おそらく俺もを大きくするだろう。それを抑えるなんてできる訳がない。


「ホームルームはこれで終わりよ。気を付けて帰ってね」


先生の言葉を聴き、少しずつクラスメートが席を立って教室を出て行く。学校に長居する理由がない俺は、早々に教室を出たのだった。

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