好感度と心の声聞こえるようになったんだが、俺を狙ってる人多くないか？

第1話

「お兄ちゃん、ご飯だよ。早く起きて」

毎朝俺を起こしてくれる妹の声がした。

「まだ寝るぅぅ....zzz」

「いい加減起きろー！」

とまだまだ寝たい心を抑えて声のほうを見てみると「91」???という数字が見えた。

　数字がなんなのかはわからないが、今日は平日で、学校に行かなければならない。とにかく起きよう。

「たまには自分で起きてきなよ」

「別に俺が悪いわけじゃないと思うんだがなぁ」

　時刻は六時十五分。学校には六時半に起きれば十分間に合うのだが、妹の紗季は俺に早起きを強要してくる。なんでも余裕を持っておきたい妹に無理矢理つき合わされている形だ。

　それに、朝ご飯だって必要なら自分で勝手に作るのに、紗季がわざわざ作りたがる。そりゃ、作ってもらえるならありがたくいただくので文句は口にしないが、とにかく、俺が特別だらしないとかではないのだ。

「ほら、起きたなら一緒に行こ」

「……紗季、何度も言うが、男の子は寝起きすぐには動けないものなんだ。先に行ってくれ」

「いつもそう言うけど、何で？　病気なの？」

「至って健康だよ」

　健康だからこそ動けないのである。布団で隠さなければ紗季の前では動けない。

「低血圧とかじゃないんでしょ？」

「違う」

「だったらなんで？」

「なんでって……」

　もう高校生なんだから自分で調べてくれないものかね？　兄から妹にする教育ではないと思うのだが。

　俺が答えあぐねていると、急に紗季の声が聞こえ始める。紗季は口を開いていないはずなのに……？

『はぁ……お兄ちゃんの寝起き、可愛いなぁ。それに、男の子の事情で動けなくなってるのを、あたしに言えなくて困ってるのも可愛いなぁ。あたしだってもう高校生なんだから、それくらいわかるのにね。あえて困らせてその様子を楽しみたいだけだよ？　っていうか、あの布団の下にはお兄ちゃんの……あ、やば、想像したら濡れてきちゃった。』

「……え？」

「え？　って何？　あたしの顔じっと見つめて、何か言いたいことあるの？」

『鎮めるの手伝って、とか言わないかな？　手伝ってあげたいなぁ。そういうことになってもいいように早めに起こしに来てあげてるのになぁ』

『な、何を言ってるのさ、紗季？』

紗季の口からは何も聞こえていない。それなのに、俺の頭の中には彼女の声が響き渡っている。まるで彼女が心の中に潜んでいるかのように。

「ま、まさか、心の声が……」

「お兄ちゃん、何か変な顔してるよ。どうしたの？」

「いや、別に……」

俺は紗季に対しての戸惑いを隠そうとするが、彼女の声は止まらない。それは彼女の内面の本音が露わになっていくのと同時に、俺の恥ずかしい事情をさらけ出していく。

『お兄ちゃんの照れ顔、かわいいなぁ。でも、本当のことは言わないんだから、わからないよ？　もっと素直になればいいのに』

「な、なんでそんなことが……」

俺は慌てて頭の中で彼女に反論するが、彼女は俺の言葉を聞き流しているかのように、自分の言葉を続ける。

『そういえば、お兄ちゃん、最近、周りからもっと好かれるようになったでしょ？　あたしもそのせいで、ちょっと焦ってるかも』

「え、そ、それは……」

周りからの好意を得ることが増えたのは確かだ。でも、それがなぜ彼女を焦らせるのだろうか。

『だって、お兄ちゃんっていつもあたしのそばにいるから、他の人に取られちゃうんじゃないかって思っちゃうんだよね。だから、もっと頑張ってお兄ちゃんを守りたいって思ってるんだ』

「守る？　俺を？」

『うん、だってお兄ちゃんは大切な存在だもん。だから、私がいなきゃだめだって』

俺は紗季の言葉に戸惑いながらも、彼女の純粋な気持ちに心打たれる。彼女は確かに俺の妹だが、その愛情は血の繋がりを超えているように感じられる。

「ありがとう、紗季。俺も、お前のことを大事に思ってるよ」

彼女の声が心地よく、安心感に包まれる。彼女の存在が、俺にとってどれだけ大きな支えであるか、再確認させられる瞬間だった。

紗季の声が、俺の心の中で穏やかに響き渡る。彼女の存在が、俺の日常に幸せをもたらしてくれる。そして、心の中で交わる二人の会話は、今後も続いていくだろう。