もう1人の自分

赤木すみれ

why?

いつも学校でひとりだった。

友達といえる人はいない。

数ヶ月前まで仲が良かった同じ部活の高田は彼氏にどっぷりになってしまい、それ以降話す回数は大幅に減ってしまった。

さらに私は心因性失声症になった。

もう普通にコミュニケーションをとることは難しかった。


いつも通り教室の隅の自席で寝ていると、誰かに自分の名前を呼ばれた。

今更私の名前を読む人はいないはず。

なのに…なぜ?

顔をあげるとそこには知らない顔があった。

「だ、誰?」

今まで声の出なかった私が、久しぶりに声を出した時だった。

「なんでそんなに慌ててるの?俺はもう1人の自分だよ。」

もう1人の自分。そんな馬鹿な。

まず私の性別は女だ。そして目の前にいるのは男。

なんでもう1人の自分の性別が違うんだよ。

「ねえ、本当のことを言ってよ。」

「本当だよ。嘘つくわけないじゃん」

目の前にいるやつは信用できない。

窓の外を眺めてあいつにもう一回何か言ってやろうと思った時にはもう姿が消えていた。


家に帰って自分の部屋でゆっくりしていたとき、またも例の男子が現れた。

「ちょ、ちょっと、ここどこだと思ってる?」

「それがどうした?」

「いやいや‼︎おかしいから。ここ、私の部屋だよ?なんで入ってきたの?てかいつからいた?」

「なんでって、それ君がこの部屋に入ったからだし、ここには君がこの部屋に入ってからかな。」

「もーーー‼︎」

ついイライラして殴りそうになった。

しかし、瞬時に止められてしまった。

「感情的になるなよ。」

その時、携帯がなった。

「ちょっと待ってて」

私は携帯の画面を見た瞬間背筋が凍った。

そして、私はあいつを睨んだ。


「なんでそんなに睨むんだよ」

「このメールを見てよ。」

〝高田先輩が交通事故で亡くなったらしいですね。大丈夫でしょうか。〟

これは私のたった1人の部活の後輩から送られてきたメール。

「なんでこうなったと思う?」

「俺にはわからない。」


その夜、私はなかなか寝れなかった。

高田が死んでしまったこと。突如現れた謎の男。

目を瞑ってもすぐに開いてしまう。

そんな時だった。

少し布団が動いた気がした。横を見るとあいつがベッドにいた。

「ねえー一緒になるなんて嫌だよ。」

「何いってるんだ。1人で寝ているじゃないか」

「はあーもーわけわからんし」

でもなぜか、あいつが現れた数分後、私は眠りについていたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もう1人の自分 赤木すみれ @Batako-89

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

同じコレクションの次の小説