幕間の章『後悔』
幕間の章『後悔』
膨らみのある暗き
一枚一枚の際立つ角質は
「……」
削り上げた細部に見えれば、『
「……」
此処で『想像し得る仮想の敵に
「……こんなものか?」
一足も作り終えた息抜きには、手を止めても。
大戦後には長らく闇を漂い、休眠としていた女神で『約束としていた相手との会談予定』も白紙となっては、浮いた時を持て余すように日々の進みも緩慢。
「……」
単身、暗黒の広間で沈む。
本来なら君へ見せてやる筈だった『暗黒由来の博物館』も、客の居なければ、照明を灯す理由もなく。
敬意を表すべき相手もなくは、
老いを恥じらう相手も居なくなって久しいなら、老眼に掛ける眼鏡の先で、見据えるは只管に
いつか『彼の女神に対する返礼や貢献への対価』としても仕立て上げた『深海』を想起させるは上層から下層へと徐々に配色の暗くなる
(……"行き詰まる時には外よりの意見を求めたい"が……)
"その身に着ける筈であった彼女"を思い、幾年が過ぎたであろうか。
(……"過ぎたこと"を。相も変わらず、愚かなものよ)
何度目かの物思いに晴れぬ心は幾度にせよ、心理の道筋で似たような順に続いて久しく。
アデスで"好奇に従う心"が『危ういもの』だとも初めから分かっていたのに——"だのに"、"口煩い老婆の私は決定的な部分で
言い換えても『他者という面倒』を嫌えば、『彼女ためにと手を尽くさずに』——その結果が、"
(……予測は簡単だった。『いずれに好奇心、【敵を敵たらしめる因果に迫らん】』と)
悔いの続けば『もっと多く、より良く出来たことはあったのだろう』と、『当初から念入りに見守っていれば、彼女を危地に追いやらせることもなく、より早い段階で協調の道も開けたのでないか』と。
何度も己に非を見出すような目障りの聡明に、己で逃げるようにしても、今や各地に配した
その一つ、何処に在っても光に見えない『未知なる特異点』の内側で、長くは意識で微睡み、起きる度には『どれほど寝ていたのか』と自己で行う各種の計測作業すら、少女に"くだくだしい"有り様で。
(……いや。"我ら存続を願う者にとっての大敵"の、『怨敵の無にすら親しみ』を以て『善良の神は完成した』のだ)
その
何よりは、『自身の消極性が齎した悲劇を覆い隠す』ように『彼女の積極性が自身で望む成果を得られたのだ』と、誤魔化す性根が浅ましく。
しては、やはりも、"
(及び、『見事にも完遂した』のだ。"彼女自身でついぞ私の期待を裏切ることもなかった"——)
(——……"それだけ"のことを)
危うさを見ても、深入りせず。
時に聞かれたとて『己ですら未だ理解し得ぬ
たとえ、どれだけ己の行いを"正当的かつ好意的に捉えよう"とも『邪悪の本性を持つ己で無用な衝突を避けるため』?
そのために『相手へ寄らぬことにした』のだとして、表層的な態度に『無関心』を選んだ事実に変わりなく。
(仮に私が『真に偉大の完璧』であれば、『間違うことなどない完全性』を備えていれば……貴方に、"あのような顔"をさせることもなかったのだろうか?)
生来より疲弊しきった心根に『他者がなんだ』、『もはや面倒事に関せず』との、"諦めにも選んだ結果"なのに。
だのに、未だ受け容れず。
甚だ未練がましくも、『されど』、『より細かに見張ってもいれば防げただろう』と精度の極まる神の演算で、長き黙考の続く最中には『未だ女神と語らう己』の可能性が何度だって眼に見えても、
(いいや、"それ以前の問題"なのだ。またも"己は自らで選択を拒み"……そうして、『ただ流されるまま』に、"全てを諦めた自身"には『望む未来に何も関係がないのだ』と暗く、視座を閉ざして)
瞼を閉じては都度、日を改め。
(……それも"自らの
数千年を置き、目覚めても、未だ変わらぬ女神の
(だからこそ、凡ゆる場に臨むを避け……だがして、『関わるなら徹底的に守るべき』であったのだろう)
疲れては眠り、また起こる、認知に忘れさせてはくれない神の玉体で、"何時迄も過去に留まる苦しみ"の胸中。
(……太古より分かっていた筈だ。"自らの決定を避け続けた先"に待つのは、"ただ理不尽な世への恭順"なのだと——だのに、何度となっても私は、疲弊において怠惰へと沈むだけ)
さりとて無限を生きるに、
(……だが、それでも、
未だ続く悪に、"逃げるのも得意"なら。
終われぬ生に安住を求める精神、『己を鎮める理論』及びの『活路』を探す。
(未だ世界に、彷徨える魂の少なからず。得てして"行き場のない衝動"で何れに『無謀な賭け』と出るのなら……今以上の悲惨が待つのみ)
しかして、思い起こす世では既に『子を設けるとした神』のいて。
つまりも、波立たぬ世を望む暗黒の化身にとっては"後手"に回った状況。
(それ、"皆が不完全に悩む今"、これ以上の悲劇は防がねば——率先して道を示さねば。『健やかなる夢の見方』とは如何にあるものかと、『永遠の議論』に縫い止めてでも)
悪辣な神の思考は"己の悲痛から目を逸らすため"でも、次なる時代に目を向け——現在にその"想起させ得る災いの目"を探しては、『摘み取る』にも、"どうする"か。
"目下最大の仮想敵"で、『教唆に襲った刃』及び先の決戦にも見た『膨張する宇宙』と相対しては、届かぬことも多々あり。
(そのためには、"今日までよりも積極的な意見の
たとえ、"戦闘の幾度に遅れをとろう"とも。
"もはや誰がいつ何処にどのように生まれてきたとして問題となり得ぬ世界"の構築に——"前提"からの、『変革』を思い。
(再び、この身で『
されど、"難多き展望"に、"果てしなき道"も思えては、
(……いえ、それでも"今の
麗しき
(……だとして、皆は議会の招集に応じてくれるのか、不安です。話し合う頭脳を持ち得ても、
そうして、別なる触手も加勢。
外した器具を一度に拭えば、少女の顔貌へと戻し。
("穏便"でないと、私で『
再び開いた紅の眼。
(しからば、『議会に参加する見返り』として、先ずは"
そうしても、『忌むべき相手』に感情ばかりが先立てば、『求めるべき真理など二の次に追いやられてしまう』とも過去に知り——
故にも、『
(……"約束"。仮に言い換えて『最低限の保証』それこそは、『女神テアの先例』を踏まえても、"あのような喪失が二度と起こらぬよう"に『
斯くして、一定に現実的な指標を見定め。
なれどの、『喪に服す対象すら政治的に利用せん』とする自己へ、"嫌気も差し出す頃合い"なら。
(つまりも『世界の警察』が私に務まるか? 『他者を害せぬ限りは、皆の安全を私で常に保証(保障)するのだ』と)
困難を思ってばかりにも、気は塞ぐ。
(傲慢にも、真に偉大な強権にも。"凡ゆる悪を知り尽くした私"だからこそ、その補導する役目が務まる。最も多くの判例を知るが故に『悪辣なんたるか』を説いて……"逆説的に模範へ至らん"とする姿は、"反面なりても教導"に)
しても、作業の中に気分転換。
時には"単なる興味"と関連して『楽しげなこと』から進めよう。
(それやはりも武威に圧するのではなく、"
見目に装うなら、"私は暗い色の
"気怠げな眼差しに軍事的な色調も
(『
しても、一通りに楽しんでは
"既に厳粛"とある装いで、今暫しに案の出し尽くすまでを保留。
(さりとて、常に
また、唐突にも『頑張った日には甘味が良いと聞きます』で、先に"見通しの
更なる気分転換には『ガラリ』と。
一時的に惰眠や靴作りや装飾の作図もやめ、新たな趣向を凝らさんとしては被服で左右に広めの
(今で興味は『ぱてしえ』、『ぱてしえーる』? ……恐らく"男女に分ける性で品詞は変化する"のだったか、どうか)
傍目には『
(……兎角、私も"生まれたからには表現しよう"との身で、『ただ
しかしの、歩み出す挑戦は——"己から異なる世界へ歩み寄る"ように。
暗澹たる身に
それこそ『暗黒の主催で貴賓を持て成す』ように、将来に想定する議論に際しても『歓談とする楽しみの一つや二つを加えん』と、和やかな雰囲気の予行練習。
("持て成す"、これも"政治"なら、必要な労なのです——然り。『神聖議会の主催者が菓子作りにも能う』などが神秘的に、幻想的)
よって、『女神のお菓子屋さん』が、いとをかしく——斯様にも、どうせ新しく始めるなら、"まだ誰も至らぬ領域"へ。
未だ新世の此処では誰にも
(因りても、新しき折角なのですから。"とびきり綺麗な"、"未だかつて誰も見たことのないような理想"を求めて——)
——『
その順で己を構成する主要な
(——目指すなら、先ず以て『至らぬ現実』を定義し、やはり、『何も約束されぬ世界』なぞ
此処に、"滅ぼす事にしか能がない己"。
今にも"胸奥に湧き立つ怨嗟"の数々で、『他者を呪うことしかできない
(何より、"一切は成就確約のないまま"、"その先行きに案ずる心持ちで
よって今暫し、"努め上げた彼女"を
(
そうして、『急いてもならず』では、『良かれ』と明日に回す気の重み、慎重こそが"必要な怠惰"なのだ。
(今日までに失われた者があり。存在せぬを打ち倒した所で完全なる勝利に程遠く……なれば、水の
さすれば、己を振り返る後悔が『冴えた閃きは休養の中にこそ』と理を付け、幾度となく沈み込む静寂の中に思考を冷やして、固め、纏めようと続く。
(——……"そんなもの"は見つかっていない。仮に"見つかっていた"のなら、此処で苦心などにも要はなく)
未練に、足掻き、永遠の
"どれだけ皆が完璧な充足を求めても手に入らなかったもの"を、未だ心残りに『探すだけ無駄』と思えども。
(現実的に、"先ずは己"より。『誰より約束へと真摯の様態』を以て『契約を結ぶことの意義』を示し……思うに
だとして。
(私にも嫌う物事は多く、それも数えることさえ煩雑に……ではして、"選り好みせず皆を対等に扱う"には……『そうをできるもの』とは……?)
執拗に。
(——……"理想たり得ぬ己"が限界を自認させられて
時に、数分の思考。
(——そうだ。いつにあっても変わらない。『皆』に『恩恵』を『齎す』こととは、先ず以て慎重な定義を要し……)
再び、眠り。
(……また結論へ向かうにも、それは『地に足を着けた上で尚且つ理想へと手を伸ばす』。"今に可能な最善"こそを、"暫定的に打ち出す方針"としてだな——)
斯くして、無限の神たる側面。
(……"誰もが己の充足を追い求められる"。同時に"誰においても問題となり得ぬ"のは……"切り分ける"?)
(……ふっ。
(……『
幾度の後悔は。
(……斯くして"無軌道の困難"を憂い、『過去にも今にも進む道に確たるものがないこと』、『積み重ねた労に成果の保証されていないこと』が皆を疲れさせ、"いつしか狂わせてしまう"なら……せめて)
愚鈍にして聡明の大神には、"悪しき予感の的中"すら早くある。
(私からは『皆を穏便に扱えるよう』と約束を、誠実に——そうして私は頑張りました。偉い。"新世界の創造"に向けて『約束』という主題を設定し、その創る大枠の候補も既に内なる複数の術式が完成に届く間近なら……そうです。少し休んで、万全を)
日々に眠りつつは、以前に学び得た『対光神戦闘』の記録も委細に分析をして、暫く。
(……『直ぐに行動を起こす』のは、"怖い"? ……いえ、いえ)
仮に、"
機会によっては『気取らせてならぬ』、『何もなしてはならぬ』として、即ち『如何な挙動に気力も見せてならぬ』とは、やはり、"この怠惰を使う"他になく。
("
更に抜け目なくは『目的を読まれた所で』の、『質と量を担保するもの』として『今の
なればの今一度——『世で最も永遠にして強大なる【無限の■■】を、単に【技量】として束ねても』——鍛え、直し、『かつての
("船が現在地から海を一周してきた頃合い"に、『事を起こす』としましょう)
有事に備えた『
既に『
その再現性を期して仕上がりを待つ間も——"徹底的に"、
(たとえ
いや、"
(——……それとして孤独は静かでいい。誰の気にも構わず無限に眠れてしまうから……残る細部は『
その"決起に至る日"には——詰まる所で『己が理想を突き通すためにも権威を示さん』と。
(だがして、『情報資源の温存』も出来よう事実。剰え、"私のように邪悪にして過激な思想を持つ者は怠惰にあればこそも意義のあり"——)
"それらしく義を持って振る舞う事前の準備"には、"再び政治の表舞台に立つ正当なる段階"として"礼節の順"を追い——『おずおず』と開く、
(……けれど、やはりも、そうです。しかして今は決起よりの、"
目前より開いた渦より、落とし。
今より、"再会の場に妙な揚げ足の取る余地もなかれ"と、『己に送られた文の目通し』だけはせんと思い立てば——。
(
——"
「……」
今日まで彼女が『この世界で既知とする
「……」
しかして、起きしなの暗黒。
女神が失われて以来、久しく眠りに閉じていた意識に走る——"
(…………"これ"は)
それも数多の
(——いや、"多くは
急ぎ眼鏡を通した分析にも——
(——"世界に響きし
流し見る、その内容すら『
「"——"」
大部分は悲鳴、磁場に
また比して少なくも時折に"音で拾える語に意味を持ったもの"では、意訳して多くが『救助を求む』に胸を冷やす。
(……"
それら『いたい』、『くるしい』、『
("共通とされた言語以外にも"、
闇の
事実、"諸事情に描写しきれぬ真実"として大神の知覚には『声にならぬ心の
("
なれば、突如として溢れ出した思いの
眠りに落ちる先刻までは、存在しなかった数多くの苦痛。
宇宙に広く拡張された"不快の周波"を以ても——
(……
手首から
「"……"」
"既に何者かで
「"————"」
"己が目を伏していたばかり"。
"眠れるばかりに起きた惨劇"で、強く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます