ある日突然魔物が家の中に現れたが、回し蹴りして倒したぞ?
猫崎ルナ
第1話 世界から12歳以下の子供が消えた日
いつものように朝起きて、いつものように妹を起こしにゆく。
ただそれだけの当たり前の日常が突如として壊れるなんてこの頃の私は考えてすらなかった。
だってそうだろ?
誰が思うんだ?突然妹がいなくなると。
誰が思うんだ?突然目の前に魔物が現れると。
☆
『はい、えー…。皆様初めまして、この世界を管理している R というものです。
えー…。この度は、皆様にお願いがありこのような方法で声かけをさせてもらっています。
えー…。えっとですね、皆様には魔物を倒していただきたいんですね。
えー…。…。あっ、それでですね、この世界にいました12歳以下の子供はですね、えー…、私達の方で保護させていただきましたので、えー…ご安心ください。
えー…。それでなんですが、あのー、皆様には闘うための力をですね、はい。
えー…授けましたので、えーランダムですが、えー…適正のあるものにはい、適切なように、はい。ですので…頑張ってください。
はい。
あ、『ステータスオープン』で見れますので、はい。では。』
私が妹と二人で朝食を食べている時、突然に目の前でご飯を食べていた妹がいなくなった。
妹が持っていたお茶碗と箸が音を立てて落ちていった音で、私はその異変に気づいたのだ。
何がどうなっているかわからないままに、先ほどの声が頭の中で聞こえてきたのである。
私の目の前が真っ赤に染まる。これは怒りだ。
「誰が…一体何で、この私から大切な妹を取り上げたんだ…。」
怒りで震える体を押さえつけて私は一先ず冷静になるために『ステータスオープン』と考える。
「実々崎 鏡花(ミミザキ キョウカ)
種族 人間
レベル1
HP 50
MP 50
スキル 狂い咲き
召喚
備蓄 ▷」
私の目の前には半透明のボードが現れ、そこには私の名前や種族、レベルやHP,MP、そしてスキルが三つあった。
スキル欄だけ他の場所と色が違うので、私は迷わず『狂い咲き』と書いてある場所を触る。
すると、画面が変わり説明が書いてあった。
『狂い咲き;武器を装備した状態でこのスキルを使うと、広範囲にHPとMPを吸収する花が咲く。
その花に触れたものは皆HPとMPを吸われる。
そのHPとMPは使用者へと吸収される。譲渡も可
使用MPは10 』
『召喚;このスキルを使うと所有しているモノを召喚することができる。
使用MPは召喚するモノに依存する 』
『備蓄;あなたが生きていく中で必要な食糧が入っている。
この備蓄は減らない。
この備蓄へないものを入れた場合、それも備蓄となる。
食べるものしか入れる事はできない。ただし、その食べ物に必要なカップなどの包みは入れることができる。 』
「…。なるほど。」
私は一先ず家の中にある食べ物を全て備蓄スキルへと入れることにした。
何かしていないと怒りで我を忘れそうになる為だ。
一通り備蓄へと入れた後、ステータスボードをもう一度見る。気になることがあったからだ。
それは、スキルの下。右側にあった色の違う三角マークだ。
そのマークを指で触るとページが移動した。
『 アイテムボックス 0
魔石 0
武器 1
衣類 0
食料 0
▷』
「ふむ、なるほどな。」
それを見た私は自分の部屋や妹の部屋を周り衣類や大切なものをそこへとしまってゆく。
あの声では魔物を倒せと言っていたのだ、この家に置いておいたらどうなるかわからないからだ。
一先ず武器や魔石や食糧以外の場所に家の中にあるものを一通り収納すると、次の三角を押す。
『・武器強化の儀
・召喚の儀
』
私は一先ず武器強化の儀を押す。
『武器 桜刀
魔石
魔石がたりません。』
次に召喚の儀を押す。
『 魔石 ×
魔石がたりません』
「なるほど。つまりは魔石が必要なんだな」
私はそう呟くと、武器に初めから何か入っていたことを思い出し取り出す。
「これが 桜刀 か。」
取り出したのは一振りの刀だった。
その刀は少しピンクに色付いていて、刀を見たことのない私でさえも魅了する美しさだった。
刀の持ち手部分(柄)には、桜の模様が入っている。
「ふむ…使えない私がこの刀を使えば、すぐにダメにしてしまうだろうな。」
そう思った私は、その刀を大切にしまってから武器になりそうなものを探し始めた。
…一先ずは先の長い包丁を持つことにした。
この家には私と妹しか住んでいなかったので、ものは少ない。
「待ってろよ、お姉ちゃんがすぐに助けてやるからな。」
どう言った状況に妹が置かれているのかわからない今、私の目標は魔物を倒し強くなり、声の主に興味を持ってもらうことだ。
興味を持ってもらい、何かしらの接触を持ってもらおうと思ったのだ。
「さて、私はこれからどうすべきなんだろうね」
そう言って私は先ほどから鳴り止まないスマホを手に取った。
たくさんのメッセージの中から私は一人の男からきたメッセージを開く。
『お前の家に今から行く』
私はそれに対して『勝手にしろ』とだけ返事をした。
他のメッセージには目を通す事もなくスマホを片付ける。
先ほど気づいたのだが、ものを持っている状態で片付けると考えるだけで勝手に適切な場所へと片づけられるのだ。
「…便利だな」
そう呟きながら窓へと近づき外を見る。誰もいない。
まぁそうだろう、ここは街から遠い山の中にある家だからな。
この近辺には人が住んでいる家は8つしかない。
寂れた集落だ。
キィ…。
そんな事を考えていると誰かが部屋に入ってきた。
「来るのがはやか…っ!」
私はそれが友人だと思って振り向いたのだが、それが間違いだったことにすぐ気づいた。
「キッシシ」
ニヤニヤした表情で私を見ているのは多分あれだ、ゴブリンってやつだ。妹の見ていたアニメで知っている。
まぁ、それ以上に醜悪な見た目だったが。
全身緑色のガリガリの体、口は耳元までありそこから絶えず涎が垂れている。
身に纏って居るのはボロボロの腰蓑一つだけで、右手には棒のようなものを持っており、今にも私に襲いかかってきそうだ。
「ほぉ、なるほどな?私に対して襲い掛かるつもりなんだな?いいだろう」
私は喜んでいる。
『あぁ、妹に会うための一歩が目の前にいるんだ…』と。
そして私の方へと走り、突っ込んできたソレに対し私は回し蹴りをした。
激しい音と共に壁にぶつかるソレに対して私は近づき包丁を突き立てる。
頭の中で『レベルが上がりました、魔石をひとつ入手しました』と、声が聞こえたが、気にせず突き立てる。
何度も何度も馬乗りになって突き立て続ける。
体の中へと内包している怒りを全て吐き出すかのように繰り返すそれを、不意に止める者がいた。
「なぁ、俺がきたんだけど?いつもみたいに可愛い声で『きたのか』って言ってくれないの?」
そう言いながら私の腕を掴んで立たせる男。
「うるさい。いつ私がお前に媚を売ったというんだ」
「えぇ?そんな真っ赤な顔をしながら言われてもなぁ〜?」
こいつは私の婚約者だ。
今は亡き両親が決めた相手ではあるが、お互いに気に入ったので愛は…多分だがある方だ。
私を毎回妹と一緒におちょくってくることだけが気に食わない。
「ンで?その哀れな亡骸は君に何かしたのかい?」
「いや。…試し打ちだ」
「いやいやいや、滅多刺しだよ!」
「…不法侵入したこいつのせいだ」
私はそう言って持っていた包丁を仕舞う。
「私に目標ができた。強くなることだ」
私が幹也を見てそう言うと、幹也はにこりと笑ってこう言った。
「俺は鏡花とずっと一緒だからね?」と。
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