第10話 オーク討伐

 ギルドにいくとファル達からの手紙が届いてた。

 『すまん、5人目の英雄の活躍を誇張して、貴族らに話した。敵国の殺し屋や、貴族のちょっかいはみんなそっちに行くだろう。重ね重ねすまん』とある。

 まあ、それぐらいいいよ。

 5人目が俺だとばれなきゃ良いだけだし、なってみたら偽ヒモ生活も悪くない。

 今日の討伐は手出し無用なので、俺は魔法の誘導以外は不参加だけど、分け前は貰えることになっている。

 今日からヒモ生活の始まりだな。

 エリート冒険者のはずが、エリートヒモか。

 人生何があるか分からん。


 今日の討伐は、Cランク討伐依頼ということで、オークを選択した。

 オークの集落にいくために森を行く。


 用心のため、念話の聞き耳は絶やさない。


『くそっ、オークの領域に踏み込んだか』

『ぷぎぃ。食ってやる』


 人間とオークの念話が聞こえた。

 人間の方は駆け出しか。

 奥に踏み込み過ぎたんだな。


『死ね!!!!!!』

『はっ、オークが突然死んだ。病死? いやこれはきっと5人目の英雄の仕業に違いない』


 助かって良かったな。

 助けたのはただの気まぐれで、運が良かっただけだ。

 神に感謝するんだな。


「オークよ。集落が近いわ」


 知ってるよ。

 さっき殺したから。


「炎魔法、【ファイヤーボール】。師匠、今回は上手くいきましたよ。もしかして手を出したとか?」


 カンナの魔法で出て来たオークが火だるまになる。


「ああ、俺は手出ししなかった」


 カンナの魔法威力増幅は凄まじい。

 ノーコンさえ治ればSランクはかたいだろう。


 レベッタも後衛ができれば、自分の役割に専念できるはずだ。

 このパーティは俺を除いても、Aランク依頼を軽々こなせるに違いない。

 Sランクに必要な討伐ポイントは確実に溜まるだろう。


「オークの集落よ」

「制御がましになった私に任せて下さい。炎魔法、【ファイヤートルネード】。ちょっとこっちに来ないで」


 炎の竜巻がフラフラと進んでこっちに向かって来る。

 カンナはまだまだだな。

 念話起動。


『進路を右に! よし、そのまま真っ直ぐ!』


 炎の竜巻がオークの集落を進む。

 俺はコントロールに力を貸してやった。

 逃げたオークは何体かいるだろうが、集落全てが丸焼けになった。


 焦げたオークから魔石を掘り出し、俺達は、ギルドに戻ってきた。


 カウンターでジャラジャラと魔石を出す。


「これはまた大量ですね」

「カンナのファイヤートルネードで丸焼きにしてやった。爽快だったよ。見ているだけで金が貰えるヒモはなんて素晴らしいんだ」


 受付嬢の俺を見る目がきつくなった。


『俺、5人目の姿なき英雄に助けられた』

『ほう、どんな奴だった』

『姿が見えないんだ。おそらく隠身系のスキルと即死魔法だな』

『その組み合わせは反則だな。おそらく裏稼業の出身だろう。名乗り出ないのもそのためだ』


 噂が明後日の方向に進んでいく。

 これなら俺だってばれないだろう。


「全部で金貨7枚と大銀貨5枚になります」


「俺の取り分は、金貨2枚と、大銀貨5枚ね。ああ、働かないで食う飯は美味い。いいや俺の仕事は主に夜だ」


 受付嬢が真っ赤になった。


『ヒモ冒険者、羨ましい』

『何であんな奴が』

『顔だっておれのほうが良い』

『ヒモの素質は顔じゃないってことだな。俺だったら女をおだてて優しくしたり、容赦なく金をむしり取ったりできない』


『5人目はどこだ?』

『お前の後ろにいるよ』

『マジか。嘘言うなよ。振り返ったぞ』


『女の子に食わせてもらいたい』

『そうなったら最低の男だぞ』

『最低でもいい。男には分かっててもやりたい時がある』


『しかし、ラウドって案外強かったりしてな』

『ないな、子守だぞ。赤ん坊の扱いから、ヒモでやっていくノウハウを学んだに違いない』

『どんなノウハウだよ』

『知るか』


「ポイントの振り分けはどうなさいます」

「カンナに全て」

「意外ですね。ご自身は良いのですか」

「ヒモのランクを上げても仕方ないだろ」

「パーティ『ヒモと乙女達』はEランクとなります」

「ありがとよ」


「ダーリン♡ 換金は終わった?」

「ああ、夜のためにも美味い物食わないとな」

「師匠、このあと、むっちり個人授業よろしくお願いします♡」


『むっちりだって』

『なんの個人授業だ。大人の夜の運動かな』

『お前なんか、飯にあたって腹を壊してしまえ』


 ヒモ生活はなんか楽しいな。

 なんというか、愉悦感というかそういう物がある。


『俺が5人目なら、もてるのかな。こんど女の子に吹聴してみよう』


 いいぞ、偽物歓迎。

 せいぜい囮として役に立ってくれ。


『くそっ、なんでポーションはこんなに不味いんだ』

『あーあ、今日の稼ぎは大銅貨8枚か。なんであいつは金貨2枚と大銀貨5枚なんだ』

『姿なき英雄に出会ってみたい』


 さて、遅めの昼飯にするか。

 次はAランク依頼だな。

 となるとオーガ辺りか、ギガントボアか。

 オークキングもAだったな。

 そう言えば今日丸焼きした奴に混ざってた。


「考えごと?」

「次はAランク行ってみようかなと。今日オークキングいただろ。あれもAランクだよな」

「そうね」

「このパーティなら余裕だろ」


「へへん、私の魔法があれば楽勝です」

「いい気になるな」


 カンナの頭を小突いた。


「えへへ」


『くそっ、いちゃいちゃ、しやがって。見せつけちゃって』

『俺も彼女作ろうかな』

『上手いことやりやがって』

『いつか捨てられて痛い目を見るぜ』

『くぁwせdrftgyふじこlp』


 やっぱりヒモは楽しいな。

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