カノンの子守唄
虹乃ノラン
序
プロローグ
見渡す限り、荒廃した大地。その一画で一体のロボットが地質調査をしていた。
四角い頭に円筒形の体、顔には白く光るボタンのような目と鼻に、横一文字に開かれた口。ロボットは蛇腹の腕を伸ばして草や土を採取すると、胴体中央のお腹にある蓋を開き、中へ放り込んでサンプル解析をくり返していた。
足は三カ所の関節を持つ伸縮性アームに、高下駄のような四角い足。背中にはねじこみ式の蝶型ゼンマイ回しがあり、ゆっくりと右旋回を続けている。調査の記録は随時送信しているものの、残された時間が少ないことをロボットはわかっていた。
「大気中ニハ酸素アリ。窒素濃度問題ナシ。微生物確認。放射能汚染レベルクリア。以上、ノア出発後、延ベ二六五四時間二八分一五秒ノ調査ノ結果、コノ星ノ環境ハ、地球ノ環境ニ酷似シテイマス。型式CWDTT#12報告終了。送信……」
独り言のように呟いて、ロボットは空を見あげた。
「回収願イマス、システムキノ…ウ…テイ、シ……」
蒼穹の空が続いている。やがて彼の背中で旋回していた蝶ネジが動かなくなると、明滅していた目の光は消え、彼も動かなくなってしまった。
それから五〇〇年の月日が流れた……。
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