少年は。死神である。
あの世からやってきた。
現世で死に瀕した者の前に現れ、その命が尽きる時に体から抜け出る『魂』を保存し、あるべき輪廻の流れに還すもの。
最近は組織化と情報化が進んでおり、手続きはシステマチックに進むようになった。死神とていつまでも黒いフードをかぶり、大げさな鎌を担いでいるわけではない。
そしてその分。イレギュラーが起こるととても面倒なことになる。
物語の主人公たる死神の少年は。先輩のミスにより余命より二カ月も早く死を迎えることになった少女の担当となった。
その上。少女は少年を。まともな人間には見えるはずもない死神の少年を、見つけてしまった。視ることができてしまった。
以上二つのイレギュラーから、死神の少年と死ぬ寸前の少女との交流が始まり。少女の「より良い死」のために少年は奔走することになる……というお話。
まず。夏の空気感を伝える文章や表現が美しく、手触りとして感じることができます。それが『やがて喪われ、消え去ってしまうもの』という点も含めて。
死という文字通りの『デッドエンド』を前にしながらも、ただただ『今』に向き合い、生きようとする少年少女がそこに在ります。
さらに。男の子女の子のかわいい恋愛のお話と言うだけでもかき氷のように素晴らしいものですが、死神の少年の先輩や、あの世とこの世の関りの謎などいくつもの仕掛けが絡み、物語をぐるんぐるんと回していきます。
もはやサンデー。あるいはパフェのように!
10万字という読み切りサイズ(というには長い印象を受けますが二人の過ごした夏がぎゅっと圧縮されているのです)なので気軽に読める点でもオススメです。
当然! 水着もあるよ!
王道のボーイ・ミーツ・ガール!
天真爛漫な少女と、振り回される少年。
とことん王道を突き詰めたからこそ光る文章、躍る言葉たち。
ヒロインの栞ちゃんのとことん魅力的な振る舞いに主人公と一緒に惹かれていました。
そして脇を固める個性豊かなキャラクターたち。
前作から読ませていただいている身としては、物語を何倍にも膨らませる彼らの行動こそ作者さんのもつ非常に強力な武器だと感じています。
笑いあり、涙あり。
スラッスラ読めるテンポの良さ、
散りばめられるユーモア。
贅沢全部盛りなのに
洗練されていて胃もたれしない。
登場人物も絞られていてわかりやすく、
十万字程度と、とっても手に取りやすい作品です。
ここを入り口に更科ワールドを堪能してほしい、
ギュギュっと魅力の詰まった作品です!!
短編のような恋の先にある結末を、
是非その目で体験してください!!