第25話 デタラメな会長

「なぁにを言ってるぅんだ?」


 僕は河野に向けてそんなふざけた口調で言った。

 その僕の言葉に河野はにやけた。


「何だ?その言い方?」

「その表情でそれ言う?」


 その後続くしばらくの沈黙。

 滅茶苦茶気まずい。


「こほん」


 沈黙を断ち切ったのは河野の咳払いであった。


「とにかく、私は君の事情を知っている。それだけは分かってくれたまえ」

「分かるわけがないだろ」


 最終的に全く理解は出来なかった。


*****


 しかし、のちによく考えてみた。彼があんなことを言ったということは悪魔、女神等の存在を認識しているということだ。その手段はただ二つ。それは皆も分かっているだろう。


 女神などと何か干渉関係を持つか。

 正しい悪魔等の情報を自ら得ること。


 そのどちらかを満たしたということだ。

 しかし、彼はその手段を教えような仕草は全く持って見せなかった。

 いや、教えたくなさそうと言ったほうが正しいか。


 その理由は知る由もない、僕は本能で感じた。知らないほうがいいと。


 そして、翌日。彼の言ったとおりに急遽、うちのクラスに新メンバーが入ってきた。

 と言っても、皆、その人の存在は知っていたのだ。なぜなら、姿こそはなくても、教室には一人分の席が余っているし、名簿にもその者の名前は記されている。クラスがその者の存在を皆に示していたのだ。


「はい、今日はいよいよ鈴川明日香すずがわあすかさんの初登校日です。皆さん仲良くしてあげてくださいね」


 と担任が教壇にて言った。

 しかし、それはなかなか厳しい話であろう。

 もう、入学から数ヶ月が経っており、気の合うメンバーは形成されきっている。そのため、そこから何やら分からない人が一人、この場に放り出されてしまっては、孤立せざる負えんだろう。無論、明日香なる者のやり方によって、その状況は勿論変わるのであろうが。


「皆さーん!ちょっと病気で入学早々に休んでた鈴川明日香です!仲良くしてくださいね!」


 いや、この性格、大丈夫なのかもしれない。

 会長曰く、結構病弱な大人しい子が来ると思うと知らされていたが、彼の勝手な偏見であったか。


 彼女は病弱大人しめキャラなのではなく、普通の陽陽なキャラなのだ。


 うん、近づけないな。これ。


 会長は僕の呪いに結構関係してくると言った。

 その呪いとは勿論「テンプレラブコメを踏む呪い」のことであろう。今、その呪いが本当に有効になっているかは定かではないのだが。

 とにかく、その会長の言葉はただの適当な発言なのだろう。無責任な。


 しかしながら、この展開は多少テンプレラブコメになるのであろう。


ラブコメのテンプレメモ⑮

突如、現れる新しいヒロイン。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る