第22話 辻が落ちた?
暇だ。
まだ抗体を仕込む体の準備ができていないそうで、この状態なんだそうだ。
僕の腕についている点滴にその抗体を仕込む為の薬品が入っているようだ。その薬品が十分に体内に含まれるまでこうして暇な時間が続くということだ。
初めて思った。学校に行きたいと。
しかし、今は動くこともままならない。(点滴つけてるから)
それが為、何かやることもできない。できることは何か考えることくらい。
しかし、何を考えるかもねーや。
つまりは暇である。
「誰か来ねーかな」
ふと、そう呟いた。
この際、あの目障りな女神でもいい。うざったらしい連でもいい……。
誰か来ないものか……。
その思いはしっかり誰かには届いたようで……。
「失礼します……」
三回のノックの後、その声とともに病室の扉が開いた。
しかし、その人物は僕がこの状況で最も来てほしくない人物であった。
「辻……さん………………」
思わず「さん」付けである。
彼女の姿を見た瞬間、僕の五感が危険信号を出していた。
『ニゲロ!ニゲロ!』
しかし、無理だ。
僕の腕には点滴という針がしっかり刺さっていたのだ。そのせいでこのまま逃げたら激痛で死にそうというまた違う死因でなりそうでまた怖い。逃げられない。
どう転んでも死ぬって……。ここまで地獄ってあるんですか?!
「そこまで、怯えなくていいわよ」
「へ?」
確かに、見た感じ武具を持っているようには見えない。本当に暴力をふるいにきたわけではないのか?
僕はとりあえず、警戒を解くことにした。
「調子はどうなの?」
「特に問題はないんだけど、先生がまだ帰してくれないんですよ」
「体調はいいんだ」
「あ、うん」
静かな病室。その会話が終了を迎えると病室は沈黙に包まれた。
その時間はすごく気まずいのは確かなのだが、何か、この空間に安心感を覚えた自分がいた。
理由は全く持って分からない。こんな狂犬のような人物が至近距離にいるのに、何故こんな安心感を覚えるのであろうか。
『彼女は本当にあなたのことを嫌っているのでしょうか?』
女神の話を思い出した。
彼女の話が本当なのであれば、そこにいる女性は僕にとって命の恩人なのだ。
一回、真剣に見てみよう。彼女の顔を。
僕は向き直った。
そして、辻の顔を見た。
「辻………………?」
僕は衝撃を受けた。
彼女の顔は真っ赤に染まっていた。
一体、その顔が何を表した顔なのか、僕にはわかりかねない。
しかし、妬み、恨み、嫌悪、憎悪等のマイナスな感情はないように見えた。
嬉、楽等の感情もその表情からは見当たらない。
「宗太さん……。しっかり、踏んでいますね?ラブコメのテンプレを」
そんな女神の声が聞こえた気がした……。
僕から言わせてみれば、全く踏んでいるようには見えないのであるが……。
ラブコメのテンプレメモ⑬
片方が恋に落ちる。しかし、その気持ちに当然もう片方は気づかない。
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