第17話 人命救助
脈がない……。
宗太の脈が止まってしまった。
何故だ?いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
「宗太!宗太!」
息もしていない。心肺停止しているようだ。
まだ、間に合う……。心肺蘇生しなければならない。
「添付さん!119!それ終わったら、AED持ってきて!」
「あ、はい……!」
私は自分を落ち着かせながら、とりあえず、彼の体を端に寄せ、心肺蘇生を開始した。
まず、胸骨圧迫20回。だったっけ?
私は必死に彼の胸を圧迫した。
次は……。人工呼吸だ。
「辻さん!持ってきたよ!」
すごく早い。助かる。学校から持ってきたのであろうか。
私はとりあえず、彼に人工呼吸を行った。
「わぁ!辻さん、大胆!」
「言うとる場合か」
私はもう一度、彼の唇に自分の唇を合わせ、息を吹きかけた。
「添付さん、AEDもってきた?!」
「はい!この通り!」
「どうも!」
私はバックを開け、除細動器を取り出した。
彼の体の二か所に除細動パッドを貼り付け、起動をさせる。
そして、彼の体に電流が走った後、また、胸骨圧迫を再開した。
その作業を幾度か続けているうちに、救急車が来た。
「あとは私たちがやります」
「お願いします……」
そうして、彼を運んでいく救急車に深々とお辞儀をした。
*****
「でも、なんでいきなり彼の心臓が止まったの?」
私はその帰り際、添付にそう訊ねた。
「多分、あんな大型の悪魔に憑依されたのが原因だと思うのですが……」
「まぁ、そうでしょうけど……」
というか、私はこの一連の騒動を通して、すっかり悪魔とかいう概念に肯定的になってしまった。やっぱり物事を理解、信用する点において、実際に経験してみるというのは結構大事なことなのかもしれない。
「多分、憑依されたことによる体の負担の問題でしょう……」
「そうですか……」
※ここで解説(最近多くてすまそ)
人間の体は悪魔に憑依されることによって、その悪魔の魔力をその体で受け止めることになり、負荷がかかるのだ。無論、その負荷は憑いた悪魔の魔力が大きいほど、大きくなる。実体化するほどの魔力を有しているくらいの悪魔に憑依されてしまうと、死さえも見えてくるレベルになる。
一応、憑依している間はその魔力による負荷を多少悪魔の魂が受け止めることになるのだが、その魂が抜けると、まだ多少残っている魔力の負荷が体を蝕み、今回のようになるのだ。
つまり要約すると、魔力を背負った体は当然疲れるよね。(ここだけ読めばいい)
「しかし、本当な大丈夫なのかな……」
「何が?」
「いや、だって心臓止まっていたんだよ?死んでる可能性、大だよ?」
「あ、その点は大丈夫ですよ」
「なんで、そう言いきれる?」
「彼には、女神である私の呪いと同時に加護がついているのですから!」
彼女はそんな根拠のないことを言い出した。
加護なんて、そんなのが本当に効くかなんて信憑性、どこにもないじゃないか。
私はこれまで神なんて微塵を信じていなかった、無宗教人なのであるのだから。
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