第11話 せいとかいちょーしつ

 あれから、辻と連の間に『知り合い』という関係性が生まれたようだ。


「いや、その割には話しすぎじゃあないか?」

「説明に語弊があるわね」


 もしかしたら、『友達』までは来てるかもしれない。

 正直、見てて、いい感じである。


「もう、テンプレラブコメは彼に任せたほうがいいのでは?」

「いや!駄目です!ちゃんとあなたがやらないと!」

「もう、立て直し不可能だろ」


*****


 ある日、僕は何故か生徒会室に呼び出された。


 ラブコメのテンプレメモ⑩

 主人公は生徒会と関係ができる。


───これも、あのおっぱい女神の仕業であろうか。


 彼女は都合が悪くなったらすぐに運命を変える。もう既に、僕の家族構成とかも改変されている。人間関係とかも。結構僕は被害にあっているのだ。


 そして、貴重な放課後を返上して、僕は生徒会室に向かった。でないと、もっと面倒くさいことになりそうだったから。


「失礼しますぅ……」

「おお、来たか」


 そう言ったのは紛れもない生徒会長だった。


「どうも、生徒会長の河野長こうのおさだ」

「どうも、一年六組、西村宗太です……。あの他の役員さんはいないんですか?」


 そう、この生徒会室には生徒会長である河野以外の姿がなかったのだ。


「いっつも来てないよ……。どうも、みんな、春期休暇からサボり癖がついたみたいでな……」

「やる気ないんですね……」


 確か、この学校の生徒会は全役職、選挙制だったはずなのだが。


 でも、やる気ないんですね。


 まぁ、そう考えたら、入部届出したのにも関わらず、部活に来ない幽霊部員も同じようなものか。


「まぁ、そんなことは置いておいてだ」


 そう言いながら、とりあえず、話を仕切った。


「今日は君に頼み事があってここに来てもらったのだ」

「てか、思ったんですけど、用件があるのだったら、あなた様が一年六組に出向くべきだったのではないのですか?」


 瞬間、沈黙が生徒会室を襲った。


「生徒会長相手に大きく出たな」

「だって面倒くさかったんですもん。生徒会室、教室棟から全然別棟だし。一年六組、最上階だし、そのくせ、生徒会室ここも最上階だし」

「いや……。でも普通、生徒会関係の話はココで話したいのだよ」

「そんなのあなたの都合じゃないですか。とりあえず、ここまで来るのに多量の水分失ったので、ジュース奢ってもらっていいですか?」

「とりあえず、君が面倒な奴だということが分かったよ……。はいこれ、オレンジジュースだ」


 河野はそう呆れた顔で言って、僕に高そうなコップに入ったオレンジジュースを手渡した。


「うん、美味い。高級なやつだ、この成金め」

「もう、話に入っていいか?」


*****


「君には、一人の女性を生徒会に勧誘してほしいのだ」


 ほう、なるほど。

 この流れ、僕はもう既に、彼が僕に誰を生徒会に誘ってほしいのか分かった。


「多分、女神だな……」

「うん?女神?君は何を言っているのだ」


 あ、そっか。


「つまり、アレです。えっと……」


 僕は彼女の現実ここの名前を全然覚えていなかった。

 だって、普段、名前で呼んでいないんだもん。


「まぁ、僕が君に頼みたいのは神目川。神目川添付さんの勧誘だ」


 ああ、そうだった。神目川か。


「では、頼まれてくれるか?」

「いや、まぁ、いいんだが、何故、本人あなたがやらない?」

「いや……。それは……」


 すると、河野は頬を赤らめながら……。


「いや、あんな美人と話すことなんか……。僕にできるはずがないだろ……」

「は?」

「だって、今、君と話しているだけでも、結構緊張しているのに、全く知らない異性と話すなんか……」


「は?」


 僕はまた、繰り返し、「は?」と言った。


 そして、分かった。

 こいつ、生徒会長にして、『コミュ障』だ。

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