第3話 はなしかけよ♪

 クラス内は段々と騒がしくなっていた。

 じきにそれぞれがそれぞれの居場所を見つけ、それによりグループが形成されていった。


 しかし、昨日自転車で僕を轢いた彼女は、クラス内で孤立していた。


 かくいう僕も陽グループとかに所属しているわけではないのだが。


「おい、おい、宗太」

「ん?なんだ?」


 連が僕に声をかけた。


「添付が言っていたお前のヒロインってあいつだろ?明らかに孤立しているじゃないか」

「そうだな」


 本来僕の発言はこの後、「で、どうした?」が続いていた。しかし、僕はそれを発しはしなかった。


 まぁ、彼がこの後、何と言うかは大体察しがつく。


 彼は恐らく、「おいちょっと言ってこいよ」と僕を茶化すことになるだろう。

 女神もそれを察して、席で「うんうん」と頷きながら、その様子を眺めていた。


ラブコメのテンプレメモ⑥

主人公を応援しながら茶化す親友。


「───よし!俺が彼女の友達になってあげよう!」

「「えっ!!」」


 女神と僕は衝撃を受けた。

 女神のテンプレは彼には通用しなかったようだ。


「んじゃ、行ってくる!」

「ちょ……。ちょっと?!」


 連の足を止めたのは僕でない。

 女神であった。


「添付、どした?」

「いや、一人だけで行ったら、もうそれこそナンパじゃない?ねぇ?宗太」

「う……。うん?まあ、どうだろう?」


 まあ、考えようによってはそうなのかもしれないが。

 しかし、この後、連からの言葉に僕たちは耳を疑った。


「いや、俺、ナンパしようとしてんだけど」


 やば、こいつ。


「そんなはっきり言うものか、そんなもの」

「んじゃ。言ってくる」


 すると連は意気揚々に彼女のもとへ向かったいった。


 とりあえず、僕たちはその様子を眺めることにした。


*****


「やぁ、君、可愛いねぇ。名前なんていうの?LINEやってる?」

「………………」


 連は完全スルーされた。


*****


「心がえぐられました」

「あんな単純なナンパフレーズで成功するわけないじゃん」


 僕の助言(?)はどうやら彼には聞こえていないようだ。

 この放心状態じゃあな。


…………。


「よし、僕、行くわ」


 僕は席から立ち上がった。


「あ、勃ってる」

「生理現象!!」


*****


 僕が彼女に話しかけるのには実言うと理由があるのだ。


 あの時、自転車ではねられたとき。僕は……。僕は……。


 彼女に謝ってもらってないのだ!!


 いや、確かにあの後、僕がダッシュでその場から去ってしまって、謝る暇がなかったかもしれない。そうだとしても!同じクラスなんだからいつでも声かけるくらいはできるでしょう?!


 というわけで、言ってやる!


 僕は胸を張って彼女のもとにやってきた。

 すると彼女はさっきの連の時とは違って反応した。


「あ、確か……。宗太さんでしたっけ?」

「あ……。ああ」


 あれ……?そういえば、彼女の名前、なんだっけ?


…………。


「やあ、清純淫乱鬼畜女!」


 僕は彼女に思いっきり足を踏まれた。

 めっちゃ痛い。


「足が真っ赤に腫れたんですけど」


 僕は一旦退却し、報告した。


「わー痛そー」

「棒読み女神が」


*****


 そんな感じだったのだが、何故かこの日の放課後、僕は彼女に話しかけられた。


「あの……。宗太くん、今日、ちょっと、時間くれない?」

「え?」


 確定イベントである。

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