7 変身

 変身


 そこはバルコニーのような場所だった。

 そこからは私の住んでいる町の風景を見渡すことができた。(遠くに私の住んでいる赤い屋根の家も見えた)

「すごくいい眺めだね」

「夜になるとこの場所から、星もすごく綺麗に見えるんだ」

 優しい風の中で王子様は言う。

 確かにここから満天の星空を見上げたら、どんなに感動するだろうと私は思った。

「相変わらず勉強ばっかりしているの?」

「うん。勉強ばかりしている」

 私たちは白いバルコニーの手すりのところに身体を預けていて、そこから永遠に広がっている空と町の風景を眺めている。

「大切なことだもんね」とあくびをしながら私は言う。

「そう。大切なことだよ。とってもね」

 と私を見て王子様は言う。

「でも勉強だけじゃない。体だってちゃんと鍛えているよ。朝早く起きて、勉強の前に走ったりもしている」

「そうなんだ。相変わらず君は真面目だね」と目をつぶって私は言う。

 ……気持ちがいい。なんだかとても眠くなってくる。(お腹がいっぱいになったからかもしれない。少し食べ過ぎたかも)

「少しだけお昼ねする?」

 眠そうな私の顔を見て王子様は言う。

 それは(お昼寝が大好きな私にとって)とても素敵な提案だった。

「うん。そうする」

 世界を横に倒したように手すりの上に顔を伏せて、楽しそうな王子様の顔を横目に見ながら(王子様も私とおんなじ格好をしていた)私はそう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る