穏やかな猫系彼女(かもしれない)
姫はプライベートと仕事のオンオフがハッキリしている。普段はとても甘えんぼうで、私が黙ってどこかにいくと寂しがるお姫様だが、仕事のことになると人が変わる。
『姫』ではなく『小説家・田村
仕事に没頭する姫に無視されても怒ってはいけない、そういうものだから。小説のネタのために物事を探究する姫を邪魔してはいけない、機嫌が悪くなるから。
今日は仕事モードだったようで、読書をする姫をなでまわしたら、怒られた。趣味の読書ではなく、小説の参考資料本を読んでいたらしい。よく見ると本には大量の付箋が貼られている。
「なでてもいい時は事前に言いますから、気をつけてください」
「ごめんごめん」
私は暇なので、ブログを書くことにした。ベッドにごろんとうつ伏せになり、スマホを手に取る。
私は姫との同棲生活をつづったブログを公開している。小説家の姫と四六時中いっしょにいると感化されて、私も何か書いて誰かに届けたくなるのだ。もちろん、年齢や職業などにフェイクを入れ、身バレを防止しているし、事前に姫に「この内容を公開していいか?」と聞いて許可を得たものしか公開しない。
ブログのページを開いたら、先週の投稿にコメントがついていた。
『彼女さん、猫ちゃんみたいですね』
そうか?ピンとこない。私が猫を飼ったことがないからかな。
確かに、プライベートと仕事のオンオフがあるところは、気まぐれに見えるかもしれない。そこが猫っぽいのかなぁ?
なんて返信しようか悩んでいるうちに、後ろからこちらに向かう足跡が聞こえる。姫だ。そして、彼女は私の背中に覆い被さり、つぶやく。
「しあわせのおもみこうげき」
とても小柄な体なので、耐えられないほど重くはない。のしのしと手で私の肩を揉んだ後、体勢を変え、私の背中に頭部だけを預けている感触がする。どうやら私を枕にしているようだ。ページをめくる音が聞こえるので、多分本を読んでいる。
「今は休憩中?」
「ん。今なら、なでてもいいですよ」
甘えたお姫様モードだ。かわいい。
惚気もかねて、ブログのコメントに返信した。
『背中にのって甘えてくるんですが、これって猫っぽいですか?』
数分後、コメント主から返信がきた。
『めっちゃ猫ですよ!』
あ、猫なんだ。
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