9.俺氏、奴隷ちゃんとゴブリンを退治する
階段を降りるとそこは三階だ。
「グギャグギャ」
「いるいる」
「ゴブリンさんです」
「そうだな。作戦は一緒だ。いいね?」
「はい。ご主人様が攻撃したら隙を突いて私が攻撃を加えてと繰り返す、ですね」
「そうだ。よく分かってる」
「えへへ」
コボルトよりゴブリンのほうが若干頭がいい。
というか小賢しいというか、悪知恵が働く。臆病な性格なので逃げたりもする。
コボルトはただ何も考えてないで戦っているような感じであるので、戦闘の雰囲気はだいぶ違う。
「おりゃあああ」
俺が一撃を加える。
「にゃああ」
今度はリーヤが追加攻撃を加える。
どういうわけか、毎回心臓付近を狙っているのか、急所に当たってほぼ絶命する。
バタッ。
ゴブリンが倒れる。一体なら余裕だな。
問題は、二体三体と複数で襲ってくることだ。
「リーヤ。複数いるときは、それぞれ敵を攻撃することになる」
「はいっ」
「二人で一緒の目標を攻撃して、一匹ずつ倒すこともできるけど、どっちがいい?」
「えっと、私には分からないですぅ」
「そうか、んーー」
「ご主人様の戦略の通りにしますよ」
「両方やってみて、やりやすい方を採用しよう。まずは分散攻撃からね」
「了解しましたにゃ」
ということで、一匹が出てくるときは二人で連撃を決める。
そしてついにゴブリンが二体同時に出てきた。
「分散攻撃だ」
「はいにゃ」
「おりゃああ」
「にゃああんん」
一対一でそれぞれ戦闘になる。
敵のゴブリンは棍棒だ。それほどリーチがあるわけではないが、ナイフよりは長い。
そもそもナイフは短刀なので、懐に飛び込まないと攻撃できないのだ。
一対一くらいなら平気だった。
集中攻撃パターンもやってみるが、すぐに一匹目を倒してしまうと、残りは敵がソロの時と一緒だ。
こちらは余裕があるくらいだろうか。
「どっちでもいけるな」
「そうですね」
「どちらもできるように順番に練習しよっか」
「はいっ、ご主人様」
「うん」
こうして連戦していく。
一人ソロでゴブリンと戦っていたときは、こんなに余裕なんてなかった。
死に物狂いだったのだ。
それがまだ初心者だというのにリーヤを連れて二人で戦闘をすれば、こんなに楽だとは。
なんだかソロってマゾなんだな。
改めて実感する。奴隷ちゃんを買ってよかった。
「どうだ? 疲れたか?」
「いえ、どんどん頑張りますね」
「俺が疲れてきたから、休憩しよう」
「はいっ」
俺もまだ余裕がある。でも定期的に休憩を意識的に挟む。
ずっと集中していると、いきなり疲れがどっと押し寄せることがあるのだ。
疲労が溜まってしまう前に休憩してある程度回復させるのがよいだろう。
こうして休憩を挟みつつ、奴隷ちゃんと複数のゴブリンを倒していく。
あれほど苦労したのが嘘みたいだ。
「よし、今日は終わりにしよう」
「はいっ、ご主人様。お疲れさまでした」
「うん。でもまだ帰りがあるから、気を抜くのは早いよ」
「分かりました」
来た道をせっせと歩いて戻っていく。
ダンジョンを無事に脱出することができた。
「ふぅ、ここまでくれば安心だな」
「はい。お疲れさまでした」
「ううぅう、奴隷ちゃん。労ってくれる人がいるのがこんなにうれしいなんて」
「うふふ。ご主人様。疲れちゃいましたね。早いですけどご飯にしましょうか」
「先に冒険者ギルドで換金していこう」
「はいっ」
そうしてギルドへと向かう。
中に入ると、なんだか視線を感じる。
いつもソロだった俺が奴隷ちゃんなんて連れているからだろう。
それもかなりの美少女獣人ちゃんだ。
顔もなにもかも可愛らしいので、目立つのだ。
「換金よろしくお願いします」
「はい。どうぞ」
「今日は、魔石がたくさんです」
「奴隷に戦わせているんですか? 死んじゃうかもしれないのに可哀想」
「むむ。リーヤは自分の意志で戦ってますぅ。それにご主人様も一緒に戦ってくれます」
「あら、そうなの。じゃあ普通のパーティーみたいな感じなのかしら?」
「そうですぅ」
「そっか、それはちょっと想像と違うわね。それならいいのよ」
「リーヤはセンスがあるんだ」
「奴隷にだけ戦わせて自分は後ろで見てるだけっていう最低野郎がたまにいるんですよ」
「そうだよな、命令すれば、命を懸けて戦うんだから……」
「はい。でも、奴隷にだって生きる権利はありますから」
「うん、そうだな」
「はい査定終わりです。どうぞ」
今日戦闘した分の魔石はちょっとしたお金になっていた。
数が多かったのが大きいな。
いつも、やっとで戦っていたから、ここまで違うとは思わなかった。
効率が段違いというやつだ。
「んじゃ、リーヤにもショートソード買っていこう」
「わわわ、ご主人様っ、私に剣を買ってくれるんですか?」
「うん。ナイフだとちょっと怖いだろ」
「はい……正直、接近戦なので怖いですぅ」
「だもんな。やっぱり剣ぐらいは渡さないとと思ってさ」
「ご主人様。うれしいです。ありがとうございますぅ」
「そんなにうれしい?」
「はいです。にゃうううううん」
猫みたいに顔をくっつけて甘えてくる。かわいい。
リーヤは洗ったのもあって、いい匂いがするな。
最初見たときはだいぶ汚かったが、変われば変わるものだ。
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